悪役令嬢になりましたので、自分好みのイケメン近衛騎士団を作ることにしました

葉月キツネ

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新たなる始まり

第315話-勝手な期待の英雄譚-

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「ってのが大体の話だ」

 ヤンの語ってくれた戦いの話、私はそれを最初ワクワクしながら聞いていた。どうやってヤン達が英雄と呼ばれるようになったのか、童話のように聞き入っていた。
 それが途中で変わった。ヤンは飄々としているが、口調が途中で重くなった。それに合わせて私の気持ちも少しずつ変わっていったんだ。

「だから俺は英雄って呼ばれるのが気に入らねぇ」

 不満げにつぶやくヤンの様子はこれほどまでに見たことなんて無かった。

「それでも救われた人が居て、客観的に見れば救ってくれた英雄なんです。なら勝手に言ってくれるならいいんじゃないですか」
「元雇い主と同じ事言いやがる」

 ユリィの言葉にヤンは拗ねたように言った。

「あー。まぁそれは個人の気持ちがあるからね。まぁ置いときましょうよ。結局その町を占領してたのって何だったの?」
「そうだな。それを言ってなかったな。端的に言えば隣の領主の兵隊だ。んでもって、俺が戦ったのは隣の領内で暴れ回ってた盗賊だ」
「その二つが同時にタガマに来たって事?」
「んなことあるかよ。利害の一致で手を組んでただけだ。表向きの行動は盗賊らの勝手にして、後ろで土地を広げようとしてたんだよ」
「そゆことね。混乱に乗じてってのは分かるけど、そんなの後からなんとでも言われちゃうんじゃないの?」

 実際町を占領したとしても正当性がなければ戦いになるだけだと思うんだけど、実際この世界の価値観と私の価値観は違うことが多い。もしかしたら、そうでもないのかもしれない。

「人間って力を持つと考えが肥大すんだよ。魔法って力は兵力をひっくり返した。実際俺たちだって兵力が少なくても勝てたのはユリの魔法とかがあったわけだしな」

 話を聞いているとあまりそうは思わない。だけど実際の現場としてはユリの存在は大きかったのかもしれない。

「今となっては分かる事だけどよ、あの時期は珍しい事じゃなかったんだよ」
「えっ?」
「各地じゃ領内の争いもあれば、領地の奪い合いもあったらしいからな」

 魔法というのが世界を変えたとユリィは言っていた。実際話を聞くとそのスケールのでかさに驚く。魔法が生まれたから勃発した戦いも少なくはないんだろう。
 それを経験して今の世界が出来上がっている。

「聞きたいこと聞けたか。ならさっさと宿戻って出かける準備すんぞ」
「もう出るんですか?」
「あぁ、ここには有効な手がかりなんてないだろ。ならさっさと次当たろうぜ」

 ヤンの提案に反対はない。
 私たちは生活に必要なものを買い集めて宿へと戻って、出発のための準備に精を出した。
 
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