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新たなる始まり
第307話-戦いの前線-
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俺たちがタガマの町の手前に位置するスムールの町に到着すると町中は避難して来たであろう人で溢れていた。
タガマの町も決して小さなとこではないと出発前に聞いていた。ただ実際聞いていたのと、見たのでは受ける印象は全く違った。
怪我人も居れば、心労のせいか気力のない顔の人間もいる。男も女も老人も大人も子どもも様々な人間達が目の前に広がっている。
「あんたらはなんだ? 助けてくれるのか?」
老人が一人俺たちに話しかけて来た。
身なりは綺麗だ。この町の人間なのかも知れない。
「ソボール領領主の娘、フランソワ=ソボールです。騒ぎを聞いて今率いて来れる人間を可能な限り連れて来ました。領主へは伝令を走らせています。主戦力が到着するまでの時間は稼がせてもらいます」
物怖じしないお嬢が名乗り出た。堂々としたその態度には貫禄がある。自分がしないといけないと言う責任感からなんだろうか。背負い過ぎとも思える。
お嬢の言葉が聞こえたのか老人の後ろでどよめきが起こった。
「これは失礼しました。私はこの町の代表をしております。この状況、疑り深いことにはお許し頂きたい」
「元より気にしてないわ。私はここで少しでも出来ることをします。後ろの者は前線にて賊を食い止めますので、今からすぐに出発させるわ」
「かしこまりました」
老人は納得した様子で住人達の所へと戻っていく。
俺たちはアルの合図を皮切りにお嬢にあいさつだけしてこの場を後にした。
前線とされている陣が見えて来た。馬を走らせて一時間、想像していたよりも前線は近い場所にあった。
「増援できました。計二十名、どう動きましょうか?」
俺たちを率いて来た兵が指示を仰いだ。
陣には三十人程度の男達がいる。ただ、無傷の人物は一人としていない。
中には兵ではない一般人も混じっている。
「ありがたい。ここも正直耐えられる気はしない。ずっとタガマの方向から賊が少人数で押し上げて来ている。どうしてもここは死守したい」
実際ここから陣を下げてはもう後がない。ここを死守しないといけないのは間違いじゃない。
「回り込んでは来ないのか?」
「あぁ、ずっと直線距離でこっちに来ている」
舐められている。決して一本道のみではない街までの道のりを正面から来ているのは正面からでも落とせる自信があるからだろう。
「念の為見回りはしているが今はここだけだ」
人をそちらに割かないといけないからこそ、ここの兵力を削られている。
「分かった。こちらは時間稼ぎが出来ればいい。このままここを維持しよう」
会話が終わったのかそれぞれが無言でタガマの町がある方向を向いて警戒を始める。
俺たちは元より居た男達に後ろに下がるように言って前に出た。
「来たぞ!」
交代途中で誰かが叫んだ。
前を見ると八人の馬に乗った賊らしき男がこちらに向かって来ていた。
タガマの町も決して小さなとこではないと出発前に聞いていた。ただ実際聞いていたのと、見たのでは受ける印象は全く違った。
怪我人も居れば、心労のせいか気力のない顔の人間もいる。男も女も老人も大人も子どもも様々な人間達が目の前に広がっている。
「あんたらはなんだ? 助けてくれるのか?」
老人が一人俺たちに話しかけて来た。
身なりは綺麗だ。この町の人間なのかも知れない。
「ソボール領領主の娘、フランソワ=ソボールです。騒ぎを聞いて今率いて来れる人間を可能な限り連れて来ました。領主へは伝令を走らせています。主戦力が到着するまでの時間は稼がせてもらいます」
物怖じしないお嬢が名乗り出た。堂々としたその態度には貫禄がある。自分がしないといけないと言う責任感からなんだろうか。背負い過ぎとも思える。
お嬢の言葉が聞こえたのか老人の後ろでどよめきが起こった。
「これは失礼しました。私はこの町の代表をしております。この状況、疑り深いことにはお許し頂きたい」
「元より気にしてないわ。私はここで少しでも出来ることをします。後ろの者は前線にて賊を食い止めますので、今からすぐに出発させるわ」
「かしこまりました」
老人は納得した様子で住人達の所へと戻っていく。
俺たちはアルの合図を皮切りにお嬢にあいさつだけしてこの場を後にした。
前線とされている陣が見えて来た。馬を走らせて一時間、想像していたよりも前線は近い場所にあった。
「増援できました。計二十名、どう動きましょうか?」
俺たちを率いて来た兵が指示を仰いだ。
陣には三十人程度の男達がいる。ただ、無傷の人物は一人としていない。
中には兵ではない一般人も混じっている。
「ありがたい。ここも正直耐えられる気はしない。ずっとタガマの方向から賊が少人数で押し上げて来ている。どうしてもここは死守したい」
実際ここから陣を下げてはもう後がない。ここを死守しないといけないのは間違いじゃない。
「回り込んでは来ないのか?」
「あぁ、ずっと直線距離でこっちに来ている」
舐められている。決して一本道のみではない街までの道のりを正面から来ているのは正面からでも落とせる自信があるからだろう。
「念の為見回りはしているが今はここだけだ」
人をそちらに割かないといけないからこそ、ここの兵力を削られている。
「分かった。こちらは時間稼ぎが出来ればいい。このままここを維持しよう」
会話が終わったのかそれぞれが無言でタガマの町がある方向を向いて警戒を始める。
俺たちは元より居た男達に後ろに下がるように言って前に出た。
「来たぞ!」
交代途中で誰かが叫んだ。
前を見ると八人の馬に乗った賊らしき男がこちらに向かって来ていた。
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