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新たなる始まり

第291話-土地作り-

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 私たちを乗せた馬車はあっさりと目的の町へと辿り着いた。ただ、馬車で揺られていた道のりはこの世界の平和さを物語っているようだった。
 もちろん、危ない目にあいたい訳じゃないけど、どこか拍子抜けの旅の始まりだった事は認めざるおえない。

「すみません、お待たせしました」

 ユリィは商人の代表に交通費を払い終えて合流した。

「感想はどうでしたか?」
「良くも悪くも普通だったかな」
「何もない事はいい事ですよ」

 その通りだ。少し心のどこかでハプニングを期待していた自分が恥ずかしくなった。

「どうされたんですか?」

 自己嫌悪のあまり、行き場のない恥ずかしさを誤魔化すために自分の頭を叩いていたのをユリィがまるで珍獣を見るような目で見ていた。

「な、何でも。少し自分を戒めただけだから。本当に気にしないで」

 触らぬ神に祟りなしと思ったのかユリィは素直にその言葉を受け入れてくれた。

「さ、さぁ気を取り直して町の中見ましょうよ」

 『一番気を取り直さないといけないのは自分じゃないか』と心の中でツッコミを入れながらその場から離れようとした。

「そ、そうですね。この町はフランソワ様がいた所程大きくはありませんが農作が盛んな場所なんですよ」
「そうなんだ。作物が育てやすいから?」
「それもあります。ただ、もう一つはこの次の町は一つの流通拠点になっているからです」

 そう言って地図を取り出して説明してくれた。

「この先の町が拠点です。さらにその先は海辺が近いため漁業が盛んなんです」
「つまりこっちで農作物を育てるのは内地側だからって事で、役割分担してるのね」
「はい。そうなんです」

 理にかなった土地作りをしている。中心となる拠点を軸にそれぞれ役割が被らないようにするのは効率も良ければ、資金や物量のやりとりも補えるだろう。

「土地も限りあるものだしね。効率化出来るに越した事ないものね」

 ここで私のいた世界の知識でも使って無双出来るのが創作の醍醐味だとは思うけど、生憎私にはそんな専門知識はない。
 勉強嫌いがここに来て響くなんて思いもしなかった。

「残念」
「何か言いました?」
「独り言よ」

 思わず口に出していた願望に対する感想を誤魔化した。バレたら恥ずかしいで済むものでもない。

「ったく待ちくたびれたぜ」

 そうぼやきつつこっちに向かってくるのは私の良く知る人物だった。
 ただ、なんで彼がここに居るのかは分からない。

「ヤン!? なんでここに居るの?」
「お二人さんに用があってな」








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