悪役令嬢になりましたので、自分好みのイケメン近衛騎士団を作ることにしました

葉月キツネ

文字の大きさ
上 下
315 / 431
新たなる始まり

第284話-再会の騎士団-

しおりを挟む
 一旦部屋を出たフランソワがしばらくして戻ってきた。片手には何かが入った袋を持っている。
 それを目の前の机に置くと金属同士が擦れる音が聞こえた。

「これは優子に返すものよ」

 どうやら私の物らしいけど思い当たりがない。いや、むしろ私のものなどないはずなんだけど。
 袋を開けるとそこには硬貨が詰まっていた。一応私もフランソワとしてこの世界で短い間だけど過ごした。
 だからこの量のお金がどれほどのものかは見当はつく。

「なんでこれが私に?」
「覚えてないの? ガルド公からの贈り物よ」

 思い返してみる。確かガルド城の地下で見つけものをしたはずだ。その時にユリが騎士になった。
 そこまで記憶を掘り起こしてガルド公の言っていた事を捻り出した。

「あー。確かに貰ったかも。でもそれはフランソワが受け取った物だし」
「それをしたのは貴方じゃない。私このお金には手をつけるのはあんまりいい気はしなかったから一切手をつけてないの。それにこれは一部だから。追加が必要なら言って。まぁ貴方がこの世界に滞在する短い間なら贅沢しても無くならないわ。むしろこの領地内で使って経済を回してくれるのが嬉しいわね」
「さらっと領主っぽい事言うなぁ」
「小だけど領主なもので……。まぁそれは冗談としても、実際持っておくと経済回らないし使ってしまって欲しいわ。それは本音」

 確かに使われないまま置いておくなら勿体無いことこの上ない。箪笥貯金で経済が回らないのと一緒だ。

「そう言う事なら受け取る。助かるし」
「どこに行って、何をするにしてもお金はあって困るものじゃないわ」

 フランソワの言う通りだ。無くて困る事はあれど、あって困る事はそうそう無いはずだ。

「それじゃ有り難く。それともし使いきれない分があったらそれはフランソワの領地に寄付するわ。それでいい?」
「分かった。そのつもりでいるわ」

 お互いが納得する形でお金の行く先は決まった。
 確かにこの世界に来てずっとユリィにおんぶに抱っこでは情けない。このお金は今の私にはまさしく必要なものだったのかも知れない。

「後これもね」

 そう言って自分の首裏に手を回して、巻いてあるものを取って私の前に置いた。

「懐かしいなぁ」

 それは同じくガルド城で貰った指輪だ。
 確かに私はそれをネックレスの様にしていた。

「これも私に?」
「えぇ。これも貴方のもの。本当はもっと返すべきものがいっぱいあると思うんだけどね」

 どこか儚げさを漂わせながら言うフランソワは普段の二割増しで美人さにレベルが掛かっている。
 強気な女の子が時折見せる弱さはギャップ故に心を唆られてしまう。

「そろそろ来るかしらね」

 フランソワがそう言ったと同時に扉がノックされた。

「フランソワ様入ります」

 フランソワの「どうぞ」と言う返答と同時に扉が開いた。
 ただ、私は扉が開く前にその声の主には心当たりがあった。

「フランソワ様、失礼します。会わせたい人と言うのは?」
「お嬢の急な呼び出しは碌な話じゃないからな」
「ヤン先輩は相変わらず言いたいこと言いますね」
「それが先輩らしい様な気がするっすね」

 順に入ってくるその顔は忘れることのない面々。
 私の知っている顔つきよりも大人びたその姿に感極まってしまう。

「アル! ヤン! ユリィ! オーラン!」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。 これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。 それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

彼女がいなくなった6年後の話

こん
恋愛
今日は、彼女が死んでから6年目である。 彼女は、しがない男爵令嬢だった。薄い桃色でサラサラの髪、端正な顔にある2つのアーモンド色のキラキラと光る瞳には誰もが惹かれ、それは私も例外では無かった。 彼女の墓の前で、一通り遺書を読んで立ち上がる。 「今日で貴方が死んでから6年が経ったの。遺書に何を書いたか忘れたのかもしれないから、読み上げるわ。悪く思わないで」 何回も読んで覚えてしまった遺書の最後を一息で言う。 「「必ず、貴方に会いに帰るから。1人にしないって約束、私は破らない。」」 突然、私の声と共に知らない誰かの声がした。驚いて声の方を振り向く。そこには、見たことのない男性が立っていた。 ※ガールズラブの要素は殆どありませんが、念の為入れています。最終的には男女です! ※なろう様にも掲載

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました

宵闇 月
恋愛
異世界に転生したらスマホゲームの悪役令嬢でした。 しかも前世の推し且つ今世の婚約者は既にヒロインに攻略された後でした。 断罪まであと一年と少し。 だったら断罪回避より今から全力で奪い返してみせますわ。 と意気込んだはいいけど あれ? 婚約者様の様子がおかしいのだけど… ※ 4/26 内容とタイトルが合ってないない気がするのでタイトル変更しました。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

処理中です...