悪役令嬢になりましたので、自分好みのイケメン近衛騎士団を作ることにしました

新たなる始まり

第272.5話 幕間-世界の変わる日-

　岩に囲まれた暗い闇の中に一人の女性がいる。
本来なら誰も立ち寄らないであろう人里離れた所で女性を中心に人が囲んでいる。
　人の壁に守られた一人の女性。決して若い年齢ではないが、年老いたともいえない妙齢な顔立ち。
　囲んだ人の壁はじっと中心にいる人物を見ていた。表情はローブに隠れて隣にいる人物同士ですら確認は出来ない。

「さぁ！　私の願いを叶えて！　いや、この場の全員の望みを！」

　外から風が吹き込み、不気味な環境音が鳴り響いても女性は怯む事なく、言葉を続ける。

「私の全てを使いなさい。私の願いは」

　女性の他に言葉を発する者は誰もいない。
　女性の声が誰に向けて言われいるのかも分からない。女性の見据える先は壁でしかない。

「貴方に無理やり忘れさせられたものを人類に思い出させて」

　空間に反射して響く。女性特有の高音が風の音をかき消していく。

「さぁ、早く！　認知の精霊よ。私の友であるなら願いを！」

　言葉での返答はない。
　ただ変化はあった。叫んでいた女性は倒れ、人壁はそこで初めてどよめいた。
　そしてこの日を境に世界が一変した。