悪役令嬢になりましたので、自分好みのイケメン近衛騎士団を作ることにしました

葉月キツネ

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Time can only move forward

第251話-諦めないから-

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 アリス達とのお昼を早めに切り上げて私は学院と学校を隔てる壁の前にいた。
 ここには小さな穴がある。それは今でも変わりない。
 そこに頭から入って地面を進んでいく。

「やっぱりいた」

 私の感想を目の前に少し引いてるヤンがいた。

「あんた誰だ……?」

 どう見ても地面を這って来た私の姿に引いている。それは言葉尻からひしひしと感じた。

「私はフランソワ。よろしくね」
「そ、そうか。それで何してんだ?」
「ここに来たら貴方に会えるかなと思って」

 私の言葉を聞いてヤンは身構えた。
 戦闘態勢をとると言う身構えじゃない。得体の知れ無いものに対しての構えだ。

「怖がらなくても大丈夫だからさ。とりあえず言ってみるけど私の近衛騎士になって欲しいの」
「いやいや、意味分からねぇからな」
「そうなるわよね。ちなみに貴方の腕前の噂は聞いてるから誘ってるのよ。間違いとかじゃないから」
「ありがたい話ではあるが、断らせてもらう。まだそんな気もないし」
「そっか、分かったわ。それなら仕方ないわね。とりあえず今は諦めておく」
「まだ付け狙う気満々だろ……」

 前も最初は断られたと言う事を思い出す。でも紆余曲折あってヤンとアルは近衛騎士になってくれた。今回もその道を辿らないと行けない。

「一応聞いてみてもいい?」
「何を?」
「私の事何か、うっすらとでも覚えてない?」

 ヤンがじっとこっちを注視する。目を細めて、腕を組んで、必死に頭の中を探ってくれている。

「悪いが覚えはねぇな」

 予想通りの言葉で覚悟はしていたけど辛かった。もしかしたらと言う淡い希望は泡となって消えていった。

「俺と会った事あるのか?」

 「あるよ。街での大冒険もしたよ。貴方の命を救った一端は私がしたんだから。」そんな事を言い出しそうになる。だけど、喉まで出かかった言葉を止めて、飲み込んだ。これは言っちゃいけない。事態の混乱を招く事は火を見るより明らかだ。

「あるかも知れないわよ」

 それが私の言える精一杯の言葉。

「そうか。まぁ俺は少なくともねぇな」
「残念」

 ヤンなら覚えているかも、アルなら覚えているかも、ユリなら、オーランなら……勝手な希望を抱いて、勝手にそれが砕けて少し気持ちは重くなった。やっぱり期待はしない方がいいのかも知れない。

「シャバーニは元気?」
「突然だな……まぁ元気だよ。シャバーニも知ってるのか?」
「貴方と同じ、一方的にね」
「変なやつだな」

 ヤンがこの時間で初めて笑った。その屈託ない笑顔、ヤンも変わらない。時間が戻っても人の性格や根本はやっぱり変わる事はない。

「褒め言葉として受け取っておくわ。後、私貴方のこと諦めないから」
「近衛騎士の事だよな?」
「勿論。それじゃあそろそろ帰るから。またね」
「お、おう。また……なのか?」

 来た道を戻りながら心の中で自分に言い聞かす。

「(諦めないから……前の時間の事全部、それにもしかしたら前よりも……)」
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