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嵐の来訪者
第233話-私を誰だと思ってるの?-
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「ち、父だ……。父が私に言った『ソボール家の娘の騎士になれ』と」
言葉を喉の奥から精一杯搾り出した声は風に吹かれて消えてしまいそうな気すらした。
なんで言おうとしなかったのか。それが分かった。父親からの言葉だからこそ言えなかったんだ。
「目的は?」
「も、目的は……」
またウェルズが言葉に詰まる。つまり、目的はちゃんと聞いているんだ。それがただ言えないか、言い出しにくいだけだろう。
「ソボール家の権力かしら。領内の民を圧政して、独裁させるつもりだった? 私に」
ウェルズが驚いたようにこっちを見た。目はさっきまでと違って見開いている。その反応こらおおよその答えが見えた。
「大体あってるんじゃない?」
頷いた。
「だけど分からない事があるわ。なんで私なの。ソボール家に近づくなら私の両親の方がいいはずよね。私が懐柔しやすそうだったから?」
「父が言ったから……私の考えじゃない」
「私は貴方のお父さんなんか知らない。そんな人が私を標的にしたのが理解できないのよ」
なんでソボール家なのか、それも私なのか。それだけは分からない。何故なら、それはゲームでは描かれていなかったから。
「ガルド城で君を見たと。ソボール領主と話した時に」
記憶を辿っても特に思い出せない。いや、ただ一人だけ心当たりがあった。ほんの一瞬だけだったけど記憶に残るブロンドヘアーの男。
「そのお父さんは貴方と同じ髪の色をしてる?」
「はい」
だとしたら恐らくあの男だ。そう思うしかなかった。
「まぁ、そこはいいわ。狙いも分かったし」
「なんで、父の言った事が分かったんでしょうか……?」
そりゃそうよね。ウェルズだけじゃない、ヤンもその理由は分からないだろう。
もちろん、真実を話す気はない。言っても意味はないから。ただ、私が頭のおかしい人間だとしか思われないはずだから。
「大体その辺でしょ。狙ってくる理由なんて。後は女の勘よ」
納得したかどうかは知らない。だけど、それで納得してもらうしかない。
「さて、まぁ理由も聞いたし、斬るのは勘弁してあげてもいいわ」
元より殺すつもりなんてない。ただ、私としてはいつもの平穏な生活が戻ってくるだけでいい。
「ただし、さっさとそのお父さんに言ってやりなさい。『失敗しました。もう計画はバレたのでこれ以上狙えません』って」
「そ、それは……」
ここに来てまでバツが悪そうな顔をする。前門の私、後門の父と言ったところだろう。まぁ、この世界に来て分かった事の一つだ。
『騎士の家は世間体を大事にする』前に同じようなことをヤンあたりが言っていたような気がする。
その言葉を思い出すと下層での出来事を思い出してしまう。
「関係ないわ。それにこれ以上なんかしてみなさい。ソボール家の力を持って貴方の家を潰すわ。私を誰だと思っているの、ソボール領主の身内よ。貴方の親ごと貴方を潰すなんて簡単な事よ」
間違っては居ないと思う。ただ、それを各地の領主がしないのは倫理的な問題でしかないからだ。
領主対一つの家なんかになると勝負は見えている。そこまで来ると数の勝負になるんだから。
「それが怖いからわざわざこんな回りくどい事したんでしょ。それとも戦う? それならまずは貴方の首を切ってあっちのお供に家に持ち帰らせて宣戦布告でもしてあげるわよ」
首を横に振るウェルズの顔は青ざめていた。
言葉を喉の奥から精一杯搾り出した声は風に吹かれて消えてしまいそうな気すらした。
なんで言おうとしなかったのか。それが分かった。父親からの言葉だからこそ言えなかったんだ。
「目的は?」
「も、目的は……」
またウェルズが言葉に詰まる。つまり、目的はちゃんと聞いているんだ。それがただ言えないか、言い出しにくいだけだろう。
「ソボール家の権力かしら。領内の民を圧政して、独裁させるつもりだった? 私に」
ウェルズが驚いたようにこっちを見た。目はさっきまでと違って見開いている。その反応こらおおよその答えが見えた。
「大体あってるんじゃない?」
頷いた。
「だけど分からない事があるわ。なんで私なの。ソボール家に近づくなら私の両親の方がいいはずよね。私が懐柔しやすそうだったから?」
「父が言ったから……私の考えじゃない」
「私は貴方のお父さんなんか知らない。そんな人が私を標的にしたのが理解できないのよ」
なんでソボール家なのか、それも私なのか。それだけは分からない。何故なら、それはゲームでは描かれていなかったから。
「ガルド城で君を見たと。ソボール領主と話した時に」
記憶を辿っても特に思い出せない。いや、ただ一人だけ心当たりがあった。ほんの一瞬だけだったけど記憶に残るブロンドヘアーの男。
「そのお父さんは貴方と同じ髪の色をしてる?」
「はい」
だとしたら恐らくあの男だ。そう思うしかなかった。
「まぁ、そこはいいわ。狙いも分かったし」
「なんで、父の言った事が分かったんでしょうか……?」
そりゃそうよね。ウェルズだけじゃない、ヤンもその理由は分からないだろう。
もちろん、真実を話す気はない。言っても意味はないから。ただ、私が頭のおかしい人間だとしか思われないはずだから。
「大体その辺でしょ。狙ってくる理由なんて。後は女の勘よ」
納得したかどうかは知らない。だけど、それで納得してもらうしかない。
「さて、まぁ理由も聞いたし、斬るのは勘弁してあげてもいいわ」
元より殺すつもりなんてない。ただ、私としてはいつもの平穏な生活が戻ってくるだけでいい。
「ただし、さっさとそのお父さんに言ってやりなさい。『失敗しました。もう計画はバレたのでこれ以上狙えません』って」
「そ、それは……」
ここに来てまでバツが悪そうな顔をする。前門の私、後門の父と言ったところだろう。まぁ、この世界に来て分かった事の一つだ。
『騎士の家は世間体を大事にする』前に同じようなことをヤンあたりが言っていたような気がする。
その言葉を思い出すと下層での出来事を思い出してしまう。
「関係ないわ。それにこれ以上なんかしてみなさい。ソボール家の力を持って貴方の家を潰すわ。私を誰だと思っているの、ソボール領主の身内よ。貴方の親ごと貴方を潰すなんて簡単な事よ」
間違っては居ないと思う。ただ、それを各地の領主がしないのは倫理的な問題でしかないからだ。
領主対一つの家なんかになると勝負は見えている。そこまで来ると数の勝負になるんだから。
「それが怖いからわざわざこんな回りくどい事したんでしょ。それとも戦う? それならまずは貴方の首を切ってあっちのお供に家に持ち帰らせて宣戦布告でもしてあげるわよ」
首を横に振るウェルズの顔は青ざめていた。
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