悪役令嬢になりましたので、自分好みのイケメン近衛騎士団を作ることにしました

嵐の来訪者

第221話-ユリの型-

「あいつあんなやべー奴だったのかよ。お嬢流石だな」
「流石って何よ。でもあんなユリは…見た事ないかも」

　城の地下で戦った時はこんなんじゃなかった。少し熱くなってた時はあったけど、それは命のやりとりがあったからだと思ってた。

「アルみたいな奴かと思ってたけどよ」
「アルみたい？」
「大人しく行儀のいいって事だ」
「礼儀作法はしっかりしてるとは思うけど」
「でも目の前のあいつ見てたら多少は特色あっていいじゃねぇか。嫌いじゃねぇ」

　とは言っても少し様変わりしすぎな気はする。
　むしろあれが本来のユリなのか。私は表面しか見れてなかったのかも知れない。

「動きが変わった」
「えっ！？」

　ユリの戦いが再開されていた。
　確かにさっきまでと違って一方的な攻撃では無くなっていた。どちらもが打ち込み合う戦い。ただ、それだけ見ていても私にはどう変わったのかが分からない。

「変わったのはどっちが？」
「ユリだ」

　目を皿の様にして見ても正直分からない。

「剣の型ってのは基本はあってもそれだけが正しいってもんでも無い」
「えっと……つまり？」
「要するに個人個人にあった戦い方、剣の振り方しろって事だ。それぞれ体格も、動体視力も、体力も違う。基本から変化させて応用させて自分の技術にするんだ。アルみたいに基本の型が合ってる奴もいれば、俺みたいに我流がしっくり来る奴もいる。ユリにはユリにあった型がある」
「変わったって言うのは？」
「ようやくユリ本人の型になって来たって事だろうな。まだまだ変わっていくとは思うけどな。だけど、少なくとも前見た試合よりも、ついさっきよりも良い動きになってる」
「そうなんだ」

　ここまで言われてもあんまりはっきりと分かっていなかった。ユリらしい型って言うのが全く分からない。そこは素人だからこそだろう。

「ヤンも何だか楽しそう」
「そうか？　まぁ戦いってのは嫌いじゃないからな」
「いつもより口数が多いからびっくりしちゃった」
「いつも通りだろ」

　そんな事はない。ヤンを見て来たから分かる。
　でもそんな彼と目の前の彼女がいるから気持ちが楽になる。なんと言うか安心する。

「ユリは勝てるよね」
「勝ってくれなきゃ困るわな」

　今の彼女に私の言葉が届いているかは分からない。だけど、私は彼女に声援を送って信じる事しか今は出来ない。