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嵐の来訪者
第221話-再戦、ユリとギウス-
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戦いの始まりに合図なんてない。
木剣を構えてギウスの元に駆け出す。
思い返せば試合の時は相手から攻撃を仕掛けられた。
手数で圧倒する。防御されるとすぐさまに場所を変えて打ち込んでいく。相手に反撃をさせない。
私は未熟だ。前も今も。
城の地下で魔術信者と本気で戦って、本物の近衛騎士の戦い方を見て、強くなった気でいた。だけど実際私は甘かった。
ただ、見た事を真似してもそれは強さには繋がらない。それを学んだ。
攻撃の仕方、防御の仕方、反撃の仕方。どれを取っても自分はあの地下で見た近衛騎士の戦い方には及ばない。経験が、知恵が、力が違う。そんな当然の事が私は理解できていなかった。
「前と違って急ぐじゃないか。焦っているのか?」
「いいえ、別に。ただ、色んな形を模索中なんですよ」
相手の質問は間違ってない。私は焦っていた。長引けば不利になる。理由は試合での怪我。正直まだ痛む。
そんな状態で力強い攻撃を受ける事は出来ない。
「少しペースが落ちたか」
そう言われて気付いた時には攻撃していた筈の私が防御に回らざる負えない状態になっていた。
私の剣は防御と共に弾かれた。その返し方に似た物を私は知っている。
「お前が見せてくれた技術だ。礼を言う」
まさしく私が試合で使った防御方法。攻撃に対して攻撃で受けてそのまま反撃をする。
ただ違うのは大振りの攻撃で返されていない。あくまで防御体勢からの返し方。悔しいけど上手い。
私は相手の攻撃に対して防御が間に合わなかった。空いた身体に近接からの柄での一撃が入った。
痛みを感じると同時に地に立つ感覚がなくなった。次に大地を感じたのは背中でだった、そして次に頭。
後ろからフランソワ様の声が聞こえる。応援の言葉と心配の言葉が入り混じっている。心の中で感謝を述べた。それと謝罪を。「弱くてすみません」「私の目的でここに来てしまってすみません」と。
近衛騎士として不甲斐なかった自分。そして、この話を聞いた時にフランソワ様の事よりも、負けた相手と再戦出来ると思ってしまった事に対する謝罪。
腹部に受けた一撃の痛みと共に足の痛みが響いてくる。「治りかけていたのに」と内心悪態をついた。身体を起こして立ち上がる。
「なんで追撃してこないんですか? 舐めてるんですか?」
溜息と共に出た私の言葉は相手への質問だった。
「舐めてなどいない。ただ、不気味だった」
「不気味? 失礼な事を言いますね」
私を何だと思っているのか。
「なら聞くが……何故笑った? あの場面で……防御出来ないと分かった瞬間で。攻撃を受けて何故笑った。罠か?」
「そう言う事でしたか。失礼、罠でも何でもないですよ」
言うなれば高揚感。戦えると言う事。そして、私は間違ってなかったという事。私よりも強い人が、今さっき私がしようとしていた事を実践した事で得た確証。
「随分と楽しそうだな」
口元に手を当てる。確かに笑っていた。無意識に戦いを楽しんでいた。いや、成長している自分に快感を得ていたのかもしれない。これではいけない。無理やり手の平で口を隠す。
「そんな事ないですよ。さぁ、続けましょう。私は勝ちますから」
木剣を構えてギウスの元に駆け出す。
思い返せば試合の時は相手から攻撃を仕掛けられた。
手数で圧倒する。防御されるとすぐさまに場所を変えて打ち込んでいく。相手に反撃をさせない。
私は未熟だ。前も今も。
城の地下で魔術信者と本気で戦って、本物の近衛騎士の戦い方を見て、強くなった気でいた。だけど実際私は甘かった。
ただ、見た事を真似してもそれは強さには繋がらない。それを学んだ。
攻撃の仕方、防御の仕方、反撃の仕方。どれを取っても自分はあの地下で見た近衛騎士の戦い方には及ばない。経験が、知恵が、力が違う。そんな当然の事が私は理解できていなかった。
「前と違って急ぐじゃないか。焦っているのか?」
「いいえ、別に。ただ、色んな形を模索中なんですよ」
相手の質問は間違ってない。私は焦っていた。長引けば不利になる。理由は試合での怪我。正直まだ痛む。
そんな状態で力強い攻撃を受ける事は出来ない。
「少しペースが落ちたか」
そう言われて気付いた時には攻撃していた筈の私が防御に回らざる負えない状態になっていた。
私の剣は防御と共に弾かれた。その返し方に似た物を私は知っている。
「お前が見せてくれた技術だ。礼を言う」
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ただ違うのは大振りの攻撃で返されていない。あくまで防御体勢からの返し方。悔しいけど上手い。
私は相手の攻撃に対して防御が間に合わなかった。空いた身体に近接からの柄での一撃が入った。
痛みを感じると同時に地に立つ感覚がなくなった。次に大地を感じたのは背中でだった、そして次に頭。
後ろからフランソワ様の声が聞こえる。応援の言葉と心配の言葉が入り混じっている。心の中で感謝を述べた。それと謝罪を。「弱くてすみません」「私の目的でここに来てしまってすみません」と。
近衛騎士として不甲斐なかった自分。そして、この話を聞いた時にフランソワ様の事よりも、負けた相手と再戦出来ると思ってしまった事に対する謝罪。
腹部に受けた一撃の痛みと共に足の痛みが響いてくる。「治りかけていたのに」と内心悪態をついた。身体を起こして立ち上がる。
「なんで追撃してこないんですか? 舐めてるんですか?」
溜息と共に出た私の言葉は相手への質問だった。
「舐めてなどいない。ただ、不気味だった」
「不気味? 失礼な事を言いますね」
私を何だと思っているのか。
「なら聞くが……何故笑った? あの場面で……防御出来ないと分かった瞬間で。攻撃を受けて何故笑った。罠か?」
「そう言う事でしたか。失礼、罠でも何でもないですよ」
言うなれば高揚感。戦えると言う事。そして、私は間違ってなかったという事。私よりも強い人が、今さっき私がしようとしていた事を実践した事で得た確証。
「随分と楽しそうだな」
口元に手を当てる。確かに笑っていた。無意識に戦いを楽しんでいた。いや、成長している自分に快感を得ていたのかもしれない。これではいけない。無理やり手の平で口を隠す。
「そんな事ないですよ。さぁ、続けましょう。私は勝ちますから」
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