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嵐の来訪者

第218話-空の攻防-

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 制空権を得た戦いは有利になる。当然の事と分かっていても、阻止できなかった。こちらは足止めをする以上、この状況から先手で木に登ることは出来なかった。それこそ相手に逃亡の隙を与えるだけだ。こちらは相手の動きに合わせて戦いの場所を変えるしかない。
 先に登り切った標的から投擲物が襲ってくる。
 身近な木の枝に手をかけて無理やり身体を移動させて避ける。
 そしてこちらが登り切ると同時に次の攻撃が襲い掛かった。
 今度は投擲物じゃない。標的自身が襲ってくる。登り切った体勢とタイミングでは到底避ける事は出来ない。出来る事は最小限にダメージを抑える事。
 決して太くはない木の大きな枝が着地と同時に揺れる。それでも標的はこちらに攻撃を仕掛けてくる。短い刃物を握る手と膝蹴りが交互に襲ってきた。
 刃物だけは腕に掠る程度にするため襲ってくる腕を掴んだ。意識的に向けられた腕は簡単には動かないが無理やり攻撃を逸らした。
 だがその分膝蹴りだけは身体で受けた。脇腹に岩をぶつけられたかの様な鈍い痛みが走る。身体の中を通って喉から逆流してくる空気を吐き出しそうになるのを我慢しながらその場に踏ん張った。このまま一方的に落とされたら勝負がついた様なものになる。
 掴んだ腕を蹴られた勢いに任せて引っ張る。落ちるなら二人でだ。向こうも踏ん張るが、揺れる程の枝の前にはあまり意味はない。
 
「離せ!!!!」

 言葉に耳を貸す事なく狙い通り二人で木から落ちる。ただ落ちるだけじゃない、狙い通りお互いの繋がった腕の部分がさっきまで立っていた枝の上になる様にだ。
 当然落ちる拍子に二人の腕が枝にぶつかった。自分の策とは言え、ぶつかると同時に手を離してしまう。ただ掴んでいた腕には嫌な感触が残る。
 木の枝が折れた様な感触。それはさっきまで立っていた場所が折れたわけじゃない。枝にぶつかった腕が折れる感触。
 次に感じたのは硬い地面に背中を打ち付けた事で走る痛み。頭だけはぶつけない様にして背中から落ちた。咳き込みながら膝立ちですぐに体勢を立て直す。
 真っ直ぐ標的を見ているはずなのに少し視界が揺れる。恐らく落ちた事でのダメージだ。
 それでも視認出来た。目の前にいるのは同じ様な体勢でこちらを鋭く睨む標的。ただこちらと違うのは相手は左腕を押さえていると言う事だった。
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