悪役令嬢になりましたので、自分好みのイケメン近衛騎士団を作ることにしました

嵐の来訪者

第211話-名前と信頼-

「大丈夫か？」
「あぁ、ちょっと眩暈がしただけだ」
「捕まってたせいかも知れない」
「一応身体は……動かしてたんだけどな」

　いつ外に出れるようになっても大丈夫なように身体は動かしていたけど、予想以上に身体は鈍っていたらしい。

「少し休んだ方がいい。少なくとも見張りの交代は半日は来ない」
「……そうだな。少し身体を慣らしてから休ませてみるさ」
「これからどうするかをその間に考えて……」
「いや、もう決まってる」

　考える必要はない。やる事は一つ、お嬢を助ける事だ。その方法も考えてる。ただ、それをするには一人だと時間も足も仕込みも足りない。

「助けてくれたついでにもう少し手を貸してくれないか？」

　だから目の前の男に協力を仰ぐ。

「俺はあんたの守ろうとしていた人に危害を加えようとしたんだ……」
「それはそれだ。ただ今はこうして結果助けてもらってんだ。頼む」

　自分に出来る事は懇願して、頭を下げる事だけだ。

「分かった。あんたに協力するよ先輩」
「助かる」
「考えがあるんだよな？　俺は何をすればいい？」
「あぁ、あいつの……俺をはめやがった奴にたっぷりお返ししてやろうじゃねぇか」

　お嬢を守るのは当然だ。だが、それよりお嬢に手を出そうとした事を後悔させてやる。

「そうだ、ちゃんと名前聞いてなかったな。俺はヤンだ」
「知ってる。学校でも有名人だったからな」
「アルならまだしも俺もかよ。で、どんな感じで有名なんだ？」
「素行の悪さ」

　嫌なところで名前が売れてる、嫌になるね。

「俺はオーランだ」
「おう、よろしくな。先輩だからってかしこまらないように頼むわ。そっちの方が楽だ」
「分かった。こっちもそっちの方が楽だ」

　前の出来事は許してるわけではない。だが、その分オーランの腕前は信頼出来る。その動きと情報収集、収集した情報からの推測の組み立て。間違いなく逸材だ。

「そしたらこっからどうするか言うからよ。指摘が有れば言ってくれ、修正すっからよ」

　今の状況をひっくり返すための作戦会議が始まる。