悪役令嬢になりましたので、自分好みのイケメン近衛騎士団を作ることにしました

葉月キツネ

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嵐の来訪者

第183話-それでも私は-

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 不気味さを覚えたものの私のやる事は変わらない。攻めないと勝てない。しかし、その思惑は裏切られた。先に相手が攻めて来た。
 槍の距離でリーチを活かした戦い方。相手が攻めて来ている分こちらから距離を詰められない、防戦一方だった。
 薙ぎ払いと突きを組み合わせた変幻自在の攻撃。ただ紙一重でそれを避けて、防いだ。
 幸い目で反応できた、後は感覚で武器を盾にして防ぐ。そして反撃のチャンスを探っていた。
 
「くっ……」

 一瞬の出来事だった。私の集中が途切れた。その瞬間にさっきよりも早い突きが襲って来た。
 しかも一撃だけじゃない、初撃は顔面に、二撃目は左肩、三撃目は左太もも、四撃目は右太もも、五撃目は右肩に。初撃をギリギリで避け、二撃目は軌道を逸らして防いだ。ただ、三撃目からは全て受けた。
 声を出す暇もなく地面に倒れた。

「よく防いだ。それだけでも君はすごいじゃないか」

 勝ちを確信したのか余裕そうな表情で語りかけてくる。本心かもわからない褒め言葉は耳障りでしかない。
 集中が途切れたのは足の痛みだった。庇うように動いていたけど、それでも防げなかった。
 さっきの試合でのダメージが蓄積していた。
 片膝を地面に立て、木剣を杖代わりに立ち上がる。攻撃を受けた部分が痛い。痛みが一点ずつに集中している分感じ方がきつい。
 それでも立ち上がる。私は勝たないといけない。

「私は……まだ負けてませんよ。まだ……勝てますから」

 相手のほくそ笑む表情を崩す。そう思うだけで身体はまだまだ動く。気持ちも折れていない。

「それならどうぞ」
「言われなくても!!」

 痛みを我慢しながら足に力を込めて踏み込んで攻撃を繰り出す。ただ、我慢しても力が思うように込められないのが自分でも分かった。

「そんな攻撃じゃ、主人は守れないぞ」

 安い挑発なのは丸わかり。ただ真実でもあった。
 こちらの攻撃は悉く防がれている。なのに、相手は反撃してこない。完全に遊ばれていた。
 力負けしていた。蓄積されたダメージのせいかは断言できない。
 事実としては私の攻撃は届かなかった。

「それでも! それでも!」

 自分を鼓舞した。そうでもしないと心が折れそうになったから。

「私は!」

 子どものように、自分に言い聞かせるように、相手に訴えるように。

「君の負けだ。敗因は……」

 その先は聞き取れなかった。そこからの記憶は曖昧だった。虚に覚えているのは感覚だけ。言葉が終わるより前に、ほぼ同時に五箇所に痛みが走った。両肩、両足、額へと。
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