悪役令嬢になりましたので、自分好みのイケメン近衛騎士団を作ることにしました

嵐の来訪者

第172話-加虐的な勝ち方-

　その宣言に驚いていたのは今地面に屈している彼だけではなかった。
　周りのギャラリーにもどよめきが起こる。
　勝った勝負に対してへの仕切り直し、素人目にも分かる異常さだった。

「不思議があることはない。君はさっき先手を打った。だけど、それがダメだった。なら今度は受けに回る。私のさっきの動きを見て、勉強しただろう。だから、君が勝てる確率が上がったはずだ。だからこその仕切り直しだよ」

　長いこと話したけどまとめたら簡単な話だ。「先手でも、後手でも君は勝てない事を証明する」ただ、単にそう言っているだけだ。

　ウェルズの言葉に立ち上がって彼は元の場所に戻って呼吸を整えて構えた。
　そして、ウェルズが動いた。
　武器を前方に構え、突きを繰り出す。
　その一撃を防御しようとするが、点と言う小さな攻撃面を合わせるのには速度が速すぎた。
　武器をかち合わせる事なく、彼の身体に命中した。
　ただ、武器を側面から当てる事で、ズレて命中した。それでも肩に当たった一撃は彼の腕を下げさせ、膝を地面へとつけさせた。

「さぁ、どうする？」

　ウェルズの言葉に彼は「降参」と言う言葉で返した。

「勝負あり！」

　審判代わりの教師からの言葉で試合は終わった。
　ギャラリーからの拍手は鳴ったが、どこか戸惑いがあるかのように、まばらに鳴っていた。
　ウェルズからは対面の相手を立たせるための手が出されていた。

「やっぱ、槍は戦いにくいな」
「ヤンもそんなこと思ったりするんだ」
「当たり前だろ。リーチが違うしな。それにあいつは体術も大したもんだしな。やりにくいだろうな」

　ヤンが言うならそうなんだろう。戦いに対しては臨機応変に戦う彼がそこまで言うなら、ウェルズの実力は本物なのかもしれない。

「ちなみになんだけど、ヤンがもし戦ったら勝てると思う？」

　私の質問に大きくため息をついた。
　どこか冷めた目線で私の方を見ている。

「俺の方が勝つ。当たり前だろうが」

　自信満々な表情で返してくるヤン。
　その表情に私はつられて笑ってしまう。
　私の近衛騎士は頼もしいんだ。