200 / 420
嵐の来訪者
第170話-初陣-
しおりを挟む
模擬戦が始まりだすと、いつもにぎやかな交流会が一層にぎやかになった。
陣の周りには人だかりが増え続けて、後ろの人は見えているのか気になるところだ。
そんな中、私は最前線で陣を見渡せるようにしていた。もちろん、ヤンを始めとしてアンとユリィもだ。
ただ、アリスとユリの姿はなかった。アリスはこの人だかりでどこにいるかが分からない。ユリは模擬戦に参加するために、この人だかりの視線の集まる場所に行っている。
参加者は8人、全員が揃うと教師と思われる人物から挨拶が始まり、簡単な注意喚起が行われた。
ルールは簡単で、陣の中でお互いの背後にある人形を守りながら戦い、人形に先に一撃を入れた方が勝ちだ。もちろん、参加者同士が戦うので、降参と言う敗北ルールもある。
武器は貸出のもので、木で出来た剣か、槍に見立てた木の棒になる。使いやすい方を選んで戦うらしい。
そして、模擬戦が始まった。
トーナメント制になっていて、幸いなことにユリとマルズ君は別のブロックになっていて、初戦からマルズくんの出番になっていた。
「両者前へ!」
教師陣から声が上がり、該当者二人が陣の中に入る。お互い木で出来た剣を片手に携えて、緊張した顔つきでお互い距離を置いて向かい合う。
マルズ君の対戦相手は私の知らない子だった。
「始め!」
開始の合図が宣言されると両者が武器を構える。
お互いにすぐには動かない。見合ったままで、じりじりと距離を詰めていく。
初戦という事もあってか見ている側にも緊張していた。自然と息を呑んでいた。
ただ、そうなっているのは一部の人間だけで、ヤンなんかはいつも通りの表情だった。場数の違いか、それとも歳の差かは分からないけど。
「頑張れ! マルズ君」
張り詰めた空気なのは分かっている。だけど、私はこの中で一番か、二番目に緊張しているであろう、人物に声援を送った。
周りの目がこっちに向いて来たのが分かるけど気にしない。
マルズ君はこっちを全く見ないまま、相手を見据えている。
先に動いたのは相手側だった。
真っ直ぐとマルズ君への距離を詰めて剣を縦に振り下ろす。
マルズ君はそれを頭の上で受け止めた。
二人の武器がぶつかって鈍い音が鳴った。乾いた木同士が擦り合う音。
そして、相手が止められた剣を次の攻撃の為に引いた瞬間、マルズ君は相手の胴体に一撃を入れた。
攻撃を防いだ場所からの斜めへ下す軌道は防御の隙を与えずに完璧に相手を捉えていた。
さらに一撃を入れて、そのまま相手の背後に立っている人形へと走り込んだ。
相手はその行方が見えていた、だけど、反応が出来ていなかった。
そのままマルズ君の剣が人形へと一撃を入れた。
「勝負あり!」
陣の周りには人だかりが増え続けて、後ろの人は見えているのか気になるところだ。
そんな中、私は最前線で陣を見渡せるようにしていた。もちろん、ヤンを始めとしてアンとユリィもだ。
ただ、アリスとユリの姿はなかった。アリスはこの人だかりでどこにいるかが分からない。ユリは模擬戦に参加するために、この人だかりの視線の集まる場所に行っている。
参加者は8人、全員が揃うと教師と思われる人物から挨拶が始まり、簡単な注意喚起が行われた。
ルールは簡単で、陣の中でお互いの背後にある人形を守りながら戦い、人形に先に一撃を入れた方が勝ちだ。もちろん、参加者同士が戦うので、降参と言う敗北ルールもある。
武器は貸出のもので、木で出来た剣か、槍に見立てた木の棒になる。使いやすい方を選んで戦うらしい。
そして、模擬戦が始まった。
トーナメント制になっていて、幸いなことにユリとマルズ君は別のブロックになっていて、初戦からマルズくんの出番になっていた。
「両者前へ!」
教師陣から声が上がり、該当者二人が陣の中に入る。お互い木で出来た剣を片手に携えて、緊張した顔つきでお互い距離を置いて向かい合う。
マルズ君の対戦相手は私の知らない子だった。
「始め!」
開始の合図が宣言されると両者が武器を構える。
お互いにすぐには動かない。見合ったままで、じりじりと距離を詰めていく。
初戦という事もあってか見ている側にも緊張していた。自然と息を呑んでいた。
ただ、そうなっているのは一部の人間だけで、ヤンなんかはいつも通りの表情だった。場数の違いか、それとも歳の差かは分からないけど。
「頑張れ! マルズ君」
張り詰めた空気なのは分かっている。だけど、私はこの中で一番か、二番目に緊張しているであろう、人物に声援を送った。
周りの目がこっちに向いて来たのが分かるけど気にしない。
マルズ君はこっちを全く見ないまま、相手を見据えている。
先に動いたのは相手側だった。
真っ直ぐとマルズ君への距離を詰めて剣を縦に振り下ろす。
マルズ君はそれを頭の上で受け止めた。
二人の武器がぶつかって鈍い音が鳴った。乾いた木同士が擦り合う音。
そして、相手が止められた剣を次の攻撃の為に引いた瞬間、マルズ君は相手の胴体に一撃を入れた。
攻撃を防いだ場所からの斜めへ下す軌道は防御の隙を与えずに完璧に相手を捉えていた。
さらに一撃を入れて、そのまま相手の背後に立っている人形へと走り込んだ。
相手はその行方が見えていた、だけど、反応が出来ていなかった。
そのままマルズ君の剣が人形へと一撃を入れた。
「勝負あり!」
0
お気に入りに追加
234
あなたにおすすめの小説
醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます
ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。
そして前世の私は…
ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。
とある侯爵家で出会った令嬢は、まるで前世のとあるホラー映画に出てくる貞◯のような風貌だった。
髪で顔を全て隠し、ゆらりと立つ姿は…
悲鳴を上げないと、逆に失礼では?というほどのホラーっぷり。
そしてこの髪の奥のお顔は…。。。
さぁ、お嬢様。
私のゴットハンドで世界を変えますよ?
**********************
『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』の続編です。
続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。
前作も読んでいただけるともっと嬉しいです!
転生侍女シリーズ第二弾です。
短編全4話で、投稿予約済みです。
よろしくお願いします。
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
モブ令嬢ですが、悪役令嬢の妹です。
霜月零
恋愛
私は、ある日思い出した。
ヒロインに、悪役令嬢たるお姉様が言った一言で。
「どうして、このお茶会に平民がまぎれているのかしら」
その瞬間、私はこの世界が、前世やってた乙女ゲームに酷似した世界だと気が付いた。
思い出した私がとった行動は、ヒロインをこの場から逃がさない事。
だってここで走り出されたら、婚約者のいる攻略対象とヒロインのフラグが立っちゃうんだもの!!!
略奪愛ダメ絶対。
そんなことをしたら国が滅ぶのよ。
バッドエンド回避の為に、クリスティーナ=ローエンガルデ。
悪役令嬢の妹だけど、前世の知識総動員で、破滅の運命回避して見せます。
※他サイト様にも掲載中です。
悪役令嬢らしいのですが、務まらないので途中退場を望みます
水姫
ファンタジー
ある日突然、「悪役令嬢!」って言われたらどうしますか?
私は、逃げます!
えっ?途中退場はなし?
無理です!私には務まりません!
悪役令嬢と言われた少女は虚弱過ぎて途中退場をお望みのようです。
一話一話は短めにして、毎日投稿を目指します。お付き合い頂けると嬉しいです。
深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~
白金ひよこ
恋愛
熱で魘された私が夢で見たのは前世の記憶。そこで思い出した。私がトワール侯爵家の令嬢として生まれる前は平凡なOLだったことを。そして気づいた。この世界が乙女ゲームの世界で、私がそのゲームの悪役令嬢であることを!
しかもシンディ・トワールはどのルートであっても死ぬ運命! そんなのあんまりだ! もうこうなったらこのまま病弱になって学校も行けないような深窓の令嬢になるしかない!
物語の全てを放棄し逃げ切ることだけに全力を注いだ、悪役令嬢の全力逃走ストーリー! え? シナリオ? そんなの知ったこっちゃありませんけど?
底辺おっさん異世界通販生活始めます!〜ついでに傾国を建て直す〜
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
学歴も、才能もない底辺人生を送ってきたアラフォーおっさん。
運悪く暴走車との事故に遭い、命を落とす。
憐れに思った神様から不思議な能力【通販】を授かり、異世界転生を果たす。
異世界で【通販】を用いて衰退した村を建て直す事に成功した僕は、国家の建て直しにも協力していく事になる。
乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか〜
ひろのひまり
恋愛
生まれ変わったらそこは異世界だった。
沢山の魔力に助けられ生まれてこれた主人公リリィ。彼女がこれから生きる世界は所謂乙女ゲームと呼ばれるファンタジーな世界である。
だが、彼女はそんな情報を知るよしもなく、ただ普通に過ごしているだけだった。が、何故か無関係なはずなのに乙女ゲーム関係者達、攻略対象者、悪役令嬢等を無自覚に誑かせて関わってしまうというお話です。
モブなのに魔法チート。
転生者なのにモブのド素人。
ゲームの始まりまでに時間がかかると思います。
異世界転生書いてみたくて書いてみました。
投稿はゆっくりになると思います。
本当のタイトルは
乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙女ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか?〜
文字数オーバーで少しだけ変えています。
なろう様、ツギクル様にも掲載しています。
記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?
ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」
バシッ!!
わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。
目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの?
最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故?
ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない……
前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた……
前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。
転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる