悪役令嬢になりましたので、自分好みのイケメン近衛騎士団を作ることにしました

葉月キツネ

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騎士と派閥と学園生活と

第136話-私の元に来て-

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「全部、やっぱり見透かされてたんだな」

 オーランは独り言を言いながら拳を握り締めていた。

「えっと。どういう事なの?」
「俺の負けだ。もういいだろ」
「だから、なんなのよ。私にもわかるように言ってよ」
「お前を罠に嵌めようとしてたんだよ! それをお前は先に潰してたんだろ! あぁ、すげぇよ本当に。一瞬でも一矢報いたと思った俺には最高に効く作戦だったさ」

 その言葉を私は信じられなかった。さっきまでなんだかんだと言いながらもご飯を一緒に食べて、語っていたのに。

「フランソワ様!」

 背後からユリの声が響いた。息を切らしながら私を追いかけてくれていたんだろう。肩で息をしている。
 前面にはヤン、背後にはユリ。私達がさっき来た道には見知った人が道を塞いでいた。フロストのところにいたガタイのいい人、ヴァリだ。
 いつのまにか私とオーランは完全に追い込まれていた。

「さて、覚悟はいいな。ここに来るはずの奴らから聞いてるからな、お前はここで拘束させてもらうぜ」

 ヤンが少しずつ距離を詰めてくる、腰の剣に手をかけながら。

「待って! 何かの間違いよ!」

 私はオーランとヤンの間に割り込んだ。
 そうでもしないと取り返しのつかないことになりそうな気がしたからだ。

「間違いもくそもあるかよ。そいつ自身が自分で言っただろうよ」
「それは何か事情があるのよ」
「ねぇよ! 雇われてんだよそいつは!」
「なら雇われてること自体にきっと何かあるのよ。嫌々かもしれないじゃない」
「聞き分けがねぇな。そいつはあんたに危害を加えようとしてたんだ。俺たちの敵だろ」

 私とヤンの口論は次第に声量が大きくなっていく。お互いがお互いに譲らない。

「敵じゃない。私は彼を貴方と同じ近衛騎士にしたいの。だからここまで来たのよ」
「騙されてんだよ。それにな、あんたがそいつを近衛騎士にしたって信用できねぇんだよ」
「それでも!」
「それでもじゃねぇんだ。だったらそいつに聞いてみろよ。あんたに仕える気はあるかよ」

 オーランは私達のやりとりに口を挟むことはない。ただ、ずっと私達を見ていただけ。

「ねぇ、ヤンの言ってることは本当なの? 誰かに雇われてそんなことしようとしてたの? 今からでも私の所に来て!」

 支離滅裂に近い、頭の中にある言葉を全てオーランにぶつけた。

「ははっ……」

 オーランは小さく笑った。乾いた声に聞こえる。
 そここらのオーランの言葉は叫びだった。

「本当さ! 前にあんたと一緒にいたメイドに毒を打ったのも俺さ! 下層のチンピラにあんたがあの日街に来てる事を教えたのも! 今日ここで人を使ってあんたを襲わせそうとしたのも俺さ!」

 あの日というのはキース一派と戦った日のことだろう。そんな前から彼は私を狙っていた。その事実が私には1番効いている。初の交流会で彼を探していたが見つけることは出来なかった。けれど、彼は私の方を知っていた。

「それは雇われてる人からの命令なの……?」
「言えねぇ」
「それは嫌々雇われてたりするの……?」

 返答はない。

「だったらさ。私のとこに来ようよ。今からでも……」
「俺をどうも思わないのか? あんたの付き人に毒を打った奴でもあるんだぞ」
「それは絶対に許さない。後で思いっきり平手打ちするわ。それでホリナにちゃんと謝って」

 また返答は来ない。

「だからそれで終わり。私は少なくとも許すわ。仕事だったんだもの。これからは私の元に来て欲しい」

 私の彼への願いを伝えた。
 だけど、その言葉への返答はオーランの口からは出てこなかった。
 オーランが口を開く前に、別の人間の言葉が返答代わりになった。

「お嬢……お人好しやすぎねぇか?」
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