166 / 431
騎士と派閥と学園生活と
第136話-私の元に来て-
しおりを挟む
「全部、やっぱり見透かされてたんだな」
オーランは独り言を言いながら拳を握り締めていた。
「えっと。どういう事なの?」
「俺の負けだ。もういいだろ」
「だから、なんなのよ。私にもわかるように言ってよ」
「お前を罠に嵌めようとしてたんだよ! それをお前は先に潰してたんだろ! あぁ、すげぇよ本当に。一瞬でも一矢報いたと思った俺には最高に効く作戦だったさ」
その言葉を私は信じられなかった。さっきまでなんだかんだと言いながらもご飯を一緒に食べて、語っていたのに。
「フランソワ様!」
背後からユリの声が響いた。息を切らしながら私を追いかけてくれていたんだろう。肩で息をしている。
前面にはヤン、背後にはユリ。私達がさっき来た道には見知った人が道を塞いでいた。フロストのところにいたガタイのいい人、ヴァリだ。
いつのまにか私とオーランは完全に追い込まれていた。
「さて、覚悟はいいな。ここに来るはずの奴らから聞いてるからな、お前はここで拘束させてもらうぜ」
ヤンが少しずつ距離を詰めてくる、腰の剣に手をかけながら。
「待って! 何かの間違いよ!」
私はオーランとヤンの間に割り込んだ。
そうでもしないと取り返しのつかないことになりそうな気がしたからだ。
「間違いもくそもあるかよ。そいつ自身が自分で言っただろうよ」
「それは何か事情があるのよ」
「ねぇよ! 雇われてんだよそいつは!」
「なら雇われてること自体にきっと何かあるのよ。嫌々かもしれないじゃない」
「聞き分けがねぇな。そいつはあんたに危害を加えようとしてたんだ。俺たちの敵だろ」
私とヤンの口論は次第に声量が大きくなっていく。お互いがお互いに譲らない。
「敵じゃない。私は彼を貴方と同じ近衛騎士にしたいの。だからここまで来たのよ」
「騙されてんだよ。それにな、あんたがそいつを近衛騎士にしたって信用できねぇんだよ」
「それでも!」
「それでもじゃねぇんだ。だったらそいつに聞いてみろよ。あんたに仕える気はあるかよ」
オーランは私達のやりとりに口を挟むことはない。ただ、ずっと私達を見ていただけ。
「ねぇ、ヤンの言ってることは本当なの? 誰かに雇われてそんなことしようとしてたの? 今からでも私の所に来て!」
支離滅裂に近い、頭の中にある言葉を全てオーランにぶつけた。
「ははっ……」
オーランは小さく笑った。乾いた声に聞こえる。
そここらのオーランの言葉は叫びだった。
「本当さ! 前にあんたと一緒にいたメイドに毒を打ったのも俺さ! 下層のチンピラにあんたがあの日街に来てる事を教えたのも! 今日ここで人を使ってあんたを襲わせそうとしたのも俺さ!」
あの日というのはキース一派と戦った日のことだろう。そんな前から彼は私を狙っていた。その事実が私には1番効いている。初の交流会で彼を探していたが見つけることは出来なかった。けれど、彼は私の方を知っていた。
「それは雇われてる人からの命令なの……?」
「言えねぇ」
「それは嫌々雇われてたりするの……?」
返答はない。
「だったらさ。私のとこに来ようよ。今からでも……」
「俺をどうも思わないのか? あんたの付き人に毒を打った奴でもあるんだぞ」
「それは絶対に許さない。後で思いっきり平手打ちするわ。それでホリナにちゃんと謝って」
また返答は来ない。
「だからそれで終わり。私は少なくとも許すわ。仕事だったんだもの。これからは私の元に来て欲しい」
私の彼への願いを伝えた。
だけど、その言葉への返答はオーランの口からは出てこなかった。
オーランが口を開く前に、別の人間の言葉が返答代わりになった。
「お嬢……お人好しやすぎねぇか?」
オーランは独り言を言いながら拳を握り締めていた。
「えっと。どういう事なの?」
「俺の負けだ。もういいだろ」
「だから、なんなのよ。私にもわかるように言ってよ」
「お前を罠に嵌めようとしてたんだよ! それをお前は先に潰してたんだろ! あぁ、すげぇよ本当に。一瞬でも一矢報いたと思った俺には最高に効く作戦だったさ」
その言葉を私は信じられなかった。さっきまでなんだかんだと言いながらもご飯を一緒に食べて、語っていたのに。
「フランソワ様!」
背後からユリの声が響いた。息を切らしながら私を追いかけてくれていたんだろう。肩で息をしている。
前面にはヤン、背後にはユリ。私達がさっき来た道には見知った人が道を塞いでいた。フロストのところにいたガタイのいい人、ヴァリだ。
いつのまにか私とオーランは完全に追い込まれていた。
「さて、覚悟はいいな。ここに来るはずの奴らから聞いてるからな、お前はここで拘束させてもらうぜ」
ヤンが少しずつ距離を詰めてくる、腰の剣に手をかけながら。
「待って! 何かの間違いよ!」
私はオーランとヤンの間に割り込んだ。
そうでもしないと取り返しのつかないことになりそうな気がしたからだ。
「間違いもくそもあるかよ。そいつ自身が自分で言っただろうよ」
「それは何か事情があるのよ」
「ねぇよ! 雇われてんだよそいつは!」
「なら雇われてること自体にきっと何かあるのよ。嫌々かもしれないじゃない」
「聞き分けがねぇな。そいつはあんたに危害を加えようとしてたんだ。俺たちの敵だろ」
私とヤンの口論は次第に声量が大きくなっていく。お互いがお互いに譲らない。
「敵じゃない。私は彼を貴方と同じ近衛騎士にしたいの。だからここまで来たのよ」
「騙されてんだよ。それにな、あんたがそいつを近衛騎士にしたって信用できねぇんだよ」
「それでも!」
「それでもじゃねぇんだ。だったらそいつに聞いてみろよ。あんたに仕える気はあるかよ」
オーランは私達のやりとりに口を挟むことはない。ただ、ずっと私達を見ていただけ。
「ねぇ、ヤンの言ってることは本当なの? 誰かに雇われてそんなことしようとしてたの? 今からでも私の所に来て!」
支離滅裂に近い、頭の中にある言葉を全てオーランにぶつけた。
「ははっ……」
オーランは小さく笑った。乾いた声に聞こえる。
そここらのオーランの言葉は叫びだった。
「本当さ! 前にあんたと一緒にいたメイドに毒を打ったのも俺さ! 下層のチンピラにあんたがあの日街に来てる事を教えたのも! 今日ここで人を使ってあんたを襲わせそうとしたのも俺さ!」
あの日というのはキース一派と戦った日のことだろう。そんな前から彼は私を狙っていた。その事実が私には1番効いている。初の交流会で彼を探していたが見つけることは出来なかった。けれど、彼は私の方を知っていた。
「それは雇われてる人からの命令なの……?」
「言えねぇ」
「それは嫌々雇われてたりするの……?」
返答はない。
「だったらさ。私のとこに来ようよ。今からでも……」
「俺をどうも思わないのか? あんたの付き人に毒を打った奴でもあるんだぞ」
「それは絶対に許さない。後で思いっきり平手打ちするわ。それでホリナにちゃんと謝って」
また返答は来ない。
「だからそれで終わり。私は少なくとも許すわ。仕事だったんだもの。これからは私の元に来て欲しい」
私の彼への願いを伝えた。
だけど、その言葉への返答はオーランの口からは出てこなかった。
オーランが口を開く前に、別の人間の言葉が返答代わりになった。
「お嬢……お人好しやすぎねぇか?」
0
お気に入りに追加
235
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。
棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。
これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。
それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

彼女がいなくなった6年後の話
こん
恋愛
今日は、彼女が死んでから6年目である。
彼女は、しがない男爵令嬢だった。薄い桃色でサラサラの髪、端正な顔にある2つのアーモンド色のキラキラと光る瞳には誰もが惹かれ、それは私も例外では無かった。
彼女の墓の前で、一通り遺書を読んで立ち上がる。
「今日で貴方が死んでから6年が経ったの。遺書に何を書いたか忘れたのかもしれないから、読み上げるわ。悪く思わないで」
何回も読んで覚えてしまった遺書の最後を一息で言う。
「「必ず、貴方に会いに帰るから。1人にしないって約束、私は破らない。」」
突然、私の声と共に知らない誰かの声がした。驚いて声の方を振り向く。そこには、見たことのない男性が立っていた。
※ガールズラブの要素は殆どありませんが、念の為入れています。最終的には男女です!
※なろう様にも掲載

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました
宵闇 月
恋愛
異世界に転生したらスマホゲームの悪役令嬢でした。
しかも前世の推し且つ今世の婚約者は既にヒロインに攻略された後でした。
断罪まであと一年と少し。
だったら断罪回避より今から全力で奪い返してみせますわ。
と意気込んだはいいけど
あれ?
婚約者様の様子がおかしいのだけど…
※ 4/26
内容とタイトルが合ってないない気がするのでタイトル変更しました。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる