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騎士と派閥と学園生活と
第124話-噂の人物フランソワ-
しおりを挟む男女関わらず人が集まっているその中心に居たのは間違いなくアルだった。
みんな制服なので学院の生徒である事はわかる。将来有望な騎士に目をつけてみんなが声をかけているんだろう。
しょうがないここは1つ、アルの主人として助け舟を出そう。
「みんなここで待ってて。もう1人連れてくるわね」
マナー違反かも知れないけどアルの前にいる人達をかき分けて中に入っていく。
「見つけたここに居たのね。あなたを友達に紹介したいのこっちに来て」
「フランソワ様!」
人の間から顔を出した私に驚くアル。
アルだけじゃなくて周りの人も驚いている。驚きながらもこっちに対して敵意を露にしている人もいる。
「なんだ君は? 突然出てきて」
ごもっともな意見だ。だけど、これが終わるのを待ってたら今日みんなにアルを紹介出来る気がしなかった。
だから私ははっきり言おう。アルは私の近衛騎士ですって。
「この方は私の仕えている方です。皆様には言うタイミングが無かったのですが、私は既にこの方の近衛騎士として仕えておりますので皆様の期待に答える事はできません」
先に言われた。それなら最初から言えば良いのにと思ってしまうけど、人に気を使いすぎるのもアルの良いとこではあるのよね。
その宣言に周囲がざわつく。落胆する人、信じられないと叫ぶ人、反応は様々だけど、1人として祝福のムードではない。
「知ってるぞ。そいつ噂になってるフランソワって子だろ。君以外に近衛騎士を取ったと聞いている。それはどうなんだ! 君は本当に近衛騎士なのか?」
「本当です。祝詞を捧げ、受け取ってもらっています。私以外に近衛騎士が居るのも承知の上です」
「そんなの可笑しいだろ! 近衛騎士は1人のはず、それを許すなんて。君に対しての裏切りじゃないか?」
「違います。私はそれを踏まえてもこの方の近衛騎士になると言ったのです。裏切りではありません」
真っ直ぐとした瞳で言葉を返した。
アルに対しての言葉では勝てないと思ったのか、次に言葉が飛んできたのは私の方にだった。
「近衛騎士を何人もなんてふざけるな! 歴史と伝統を侮辱している!」
「ふざけていませんし、侮辱もしていません。ただ、私なりの考えがあってそうしている事。それに可笑しい事であれば、アルは反対していると思います。アルは真っ直ぐな人ですから。それを踏まえて承知しているのであれば、それを否定するあなたが失礼だと思いますが?」
「勝手な理屈を並べるな!」
激昂した相手の右手が私に迫る。けれどもその手が私に届く事はなかった。
私の前で他の人の手によって掴まれていた。細い腕だけど、力強く相手の腕を掴んで動けないようにしている。
私と言えば手が伸びた瞬間にアルに肩を掴まれてアルの隣に抱えられていた。
このシュチュエーションだけでご飯を3杯は行けそうな気がする。心なしかいい匂いもする。
「やめとけよ。女に手を出すのは格好悪いんじゃないか?」
飄々とした言葉だけど、芯のある言葉。そんな事を言うのは彼らしい。
「お嬢、大丈夫か? ってアルが居るなら大丈夫か」
「ヤン~。最高のタイミングね」
余裕のある不敵な笑みが心強いもう1人の近衛騎士がそこに居た。
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