悪役令嬢になりましたので、自分好みのイケメン近衛騎士団を作ることにしました

葉月キツネ

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ガルド城の秘密

第114話-夢を叶えて-

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 会場の注目はこの舞台に注がれている。
 その中でも今、最も注目されているのはユリだ。
 ガルド公からのバトンは渡された。次のユリでこの問題は結末は迎える。

「私は……やっぱりまだふさわしく無いと思います」

 震える声がマイクを通して会場に流れた。

「まだ学生で、まだ未熟です。そんなのが近衛騎士になっていいはずがありません」
「そんなことない! 学生、未熟で結構よ!」

 そんな弱々しいユリの言葉を私はかき消すように言った。

「ユリ、さっき私は言ったはずよ。近衛騎士に必要な要素を」
「確かに言っておったな。それにその要素は既にお主にあるわな。何かわかるか?」

 ユリは首を振った。
 ガルド公と目が合う。この先に続く言葉を打ち合わせるかのように。
 いやそんな事必要ない。
 それはシンプルな言葉。

「信頼よ!」「信頼じゃ」

 私の高い声とガルド公の低い声が重なった。

「私は今日の体験を通じてあなたに信頼を置いてる。人柄にも、強さにも。それが近衛騎士に必要な要素なのよ」
「雇い主がそう言うのであれば、間違いなく、お主はフランソワにとって近衛騎士に相応しいのじゃ」
「間違いねぇな。俺も今日のユリ嬢を見て信頼に値すると見た。俺の目は曇ってないことに自負はある。だから自分の評価を信じてみろよ」
「バレルさん……」

 バレルさんまでもが、ユリに言葉をかけてくれる。
 
「本当に、私でいいんですか?」
「そう言ってるじゃない。逆にその質問は私がする所よ。情けない姿を見せちゃったし、どうかしら?」
「そんなことはありません。貴方が居てくれたから私は今日の体験が出来た。今日の体験は私を成長させてくれました。それはつまり貴方が、フランソワ様がくれた成長でもあります。それにフランソワ様、格好良かったですよ」
「照れるじゃない」

 逆に褒められて頬が熱くなるのが分かる。
 照れ隠しに自分の頬を手のひらで伸ばすように触った。
 やっぱり手のひらに伝わる頬の温度はいつもより心なしかあったかい。
 暖かくなった手のひらを胸に置いて深呼吸をした。ヤンとアルの時は向こうから言われてしまったけど、今度は私からの番。

「改めて言わせてもらうわ。ユリ=ラン、あなたに私の近衛騎士になってもらいたい。どうかしら?」

 ちゃんと言えた。言った後でも心臓が強く鼓動しているのが分かる。
 そして手をユリの方に出した。

「はい。喜んで」

 ユリの手が私の手を掴んだ。
 ユリの手も私に負けじと暖かい。華奢な手には力が込められていた。それはきっとユリが緊張しているからだ。
 そんなユリの隣からカルロスさんが腰の剣を鞘に納めたまま手渡す。

「私、ユリ=ランは主のために剣を携え、如何なる時も主を守る剣として傍らにお仕え致します」

 ユリがこちらに差し出した剣を受け取る。そしてそれをユリへと返す。これで正式に私の近衛騎士となった。

「剣、重たかった。大変よね剣を振るうの」
「いつかこのような剣を悠々と扱えるくらい成長するように致します」

 一連のやりとりが終わると会場から大きな拍手が聞こえてきた。

「夢を叶えたじゃないか。おめでとう」

 声を張り上げた人はユリを祝福していた。
 1人で強く、舞台にまで響くほどの拍手をしながら。その一言をきっかけに1人の拍手が、会場の拍手に変わった。

「お兄様。ありがとうございます」

 剣を抱えたままユリが言葉を返した。
 ユリのお兄さんだったのか。存在はゲーム内で聞いたことあったけど顔を見るのは初めてだ。

「カルロス様、ありがとうございました。剣をお返しします」
「見事な祝詞だった。良き近衛騎士になられた」

 この祝福ムードに包まれてまた私は目標に近づけた。

「よろしくね。学校が始まったらあなたの仲間を紹介するわ」
「楽しみにしておきます」

 この舞台の一連でユリは少し私に対する接し方が砕けたように思えた。
 その方がいい、私が目指すのは推しとの楽しい交流なのだから。
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