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ガルド城の秘密

第112話-祝福の声-

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「今宵は紹介したい者達がおる。それも3人。3人は長年誰も見つけることのできなかった、儂の求める物を見つけた。それを評してこの場で褒賞を与えるものとする。出てまいれ」

 ガルド公の紹介が終わって、私達はガルド公のいる舞台へと姿を現した。
 上から見た会場は色とりどりの花が咲いているように見えた。カラフルなドレスとシックな男性着が光で照らされたキャンバスに散りばめられているようにも思える。
 場所が照明に近いからか下よりも暑く感じる。
 私達が舞台に顔を出すとざわめきが起こった。
 私達は3人でガルド公に、その後、下にいる人達に向かって頭を下げる。
 両親はいないかと探してみるが、この人の中で見つけることは出来なかった。

「何を見つけたかは言えん。そして、その事をこの者たちに聞く事も許さん。しかし、この者たちは勇気を出して冒険し、ここに来るまでに至った事は間違いない。なので、儂はこの者に褒美として金一封と儂の手で叶えられる小さな願いを叶えるものとする!」

 その内容に驚く。願い事までなんて聞いてもないし予測もしてなかった。
 他の2人もガルド公の発言に驚いて『えっ?』なんて一緒になって言ってしまっている。
 3人が顔を見合わせて『聞いてた?』と言うそれぞれの質問にも首を振った。
 その反応は私達だけじゃない。会場にいる全員が近い反応のようで会場は静まっている。
 静まった会場の中で音が鳴った。その音は会場の後方の一角から小さく響いている。
 手と手を打ち合わせた乾いた音。その音が出ている方に見知った2人がいる。両親だ。
 その音は伝播するように今度は別の方向から鳴り出す。その音の出どころに居たのは、数名の綺麗なドレスと紳士服を着込んだ集まり。

「私の家族です……」

 口元を押さえて、目を拭いながらユリが呟いた。

「おめでとー! フランソワ!」

 聞き覚えのある声が私を祝福してくれた。
 その声の主の隣には力を込めて拍手をする強面の男性がいた。力を込めすぎて近くにいる人が若干引いているようにも見える。

「ありがとー! ルシアさーん!」

 私の返事を合図にしたかのように拍手が会場全体から響いて来た。静かな会場はもうなく、ただ拍手の音だけが支配する空気になっている。
 空気が震える、振動が伝わってくる。

「良かったじゃないか2人とも。祝ってくれてるぜ」
「バレルさんもですよ。ほら」

 後ろでは控えめな拍手が鳴っている。チェルさんだ。

「おめでとうございます。なんだか怖い人だと思っててすみません」
「俺か!? 声がでかいからな。怖がらせたさせたら悪いな」

 なんだか微笑ましいやりとりだった。
 そんな拍手の合唱も次第に音が弱くなっていく。

「さて、それでは褒美のことじゃが。まずは報奨金を各自に渡す。そして、まずはバレル、お主からじゃ何を願う?」
「そんな突然言われてもなぁ。難しいな」
「なら儂が決めてやろう」
「えっ!?」
「儂への占有販売権を交付する。儂の元へ来る売買品は全てお主を通す。儂が生きとる限りは商売のしがいがあるじゃろうに。よし、決定じゃ!」
「本当かよ。すげぇ事いいやがるな」
 
 その決定に会場が沸いた。
 野次も飛んできているけど、悪意の野次じゃない。恐らくバレルさんが仕事で繋がった人達からの言葉だろうと言うのが内容から分かる。

「次はお主だ。ユリ、何を願う?」
「私は……どうしましょうか」

 分かる。その気持ちはすごく分かる。次に来るのが私だと理解していても、答えは用意できてない。
 いざとなると頭の中でまとまらないものよね。

「お主もか。欲がないのぉ。ではこうじゃ。お主は近衛騎士を目指しておるな。カルロスの元で騎士として今からでも動いてみよ。カルロスから剣技を学び、心を学べ。そして、次の儂の近衛騎士をお主としよう。そしていずれカルロスは儂の秘書とする」
「えっ……。それは嬉しい申し出ですが……」
「それならばいいじゃろう。決定じゃこの者を先の儂の近衛騎士候補として」
「待ったぁ!! その話待ったぁ!!」

 話の流れを切る大声が舞台から放たれる。
 その声の主は私だ。
 下の人も、同じ舞台にいる人もみんなが私に視線を向けている。
 今この会場にいる人の視線を私が独占している。

「その話に! 異議あり!」
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