141 / 420
ガルド城の秘密
第112話-祝福の声-
しおりを挟む
「今宵は紹介したい者達がおる。それも3人。3人は長年誰も見つけることのできなかった、儂の求める物を見つけた。それを評してこの場で褒賞を与えるものとする。出てまいれ」
ガルド公の紹介が終わって、私達はガルド公のいる舞台へと姿を現した。
上から見た会場は色とりどりの花が咲いているように見えた。カラフルなドレスとシックな男性着が光で照らされたキャンバスに散りばめられているようにも思える。
場所が照明に近いからか下よりも暑く感じる。
私達が舞台に顔を出すとざわめきが起こった。
私達は3人でガルド公に、その後、下にいる人達に向かって頭を下げる。
両親はいないかと探してみるが、この人の中で見つけることは出来なかった。
「何を見つけたかは言えん。そして、その事をこの者たちに聞く事も許さん。しかし、この者たちは勇気を出して冒険し、ここに来るまでに至った事は間違いない。なので、儂はこの者に褒美として金一封と儂の手で叶えられる小さな願いを叶えるものとする!」
その内容に驚く。願い事までなんて聞いてもないし予測もしてなかった。
他の2人もガルド公の発言に驚いて『えっ?』なんて一緒になって言ってしまっている。
3人が顔を見合わせて『聞いてた?』と言うそれぞれの質問にも首を振った。
その反応は私達だけじゃない。会場にいる全員が近い反応のようで会場は静まっている。
静まった会場の中で音が鳴った。その音は会場の後方の一角から小さく響いている。
手と手を打ち合わせた乾いた音。その音が出ている方に見知った2人がいる。両親だ。
その音は伝播するように今度は別の方向から鳴り出す。その音の出どころに居たのは、数名の綺麗なドレスと紳士服を着込んだ集まり。
「私の家族です……」
口元を押さえて、目を拭いながらユリが呟いた。
「おめでとー! フランソワ!」
聞き覚えのある声が私を祝福してくれた。
その声の主の隣には力を込めて拍手をする強面の男性がいた。力を込めすぎて近くにいる人が若干引いているようにも見える。
「ありがとー! ルシアさーん!」
私の返事を合図にしたかのように拍手が会場全体から響いて来た。静かな会場はもうなく、ただ拍手の音だけが支配する空気になっている。
空気が震える、振動が伝わってくる。
「良かったじゃないか2人とも。祝ってくれてるぜ」
「バレルさんもですよ。ほら」
後ろでは控えめな拍手が鳴っている。チェルさんだ。
「おめでとうございます。なんだか怖い人だと思っててすみません」
「俺か!? 声がでかいからな。怖がらせたさせたら悪いな」
なんだか微笑ましいやりとりだった。
そんな拍手の合唱も次第に音が弱くなっていく。
「さて、それでは褒美のことじゃが。まずは報奨金を各自に渡す。そして、まずはバレル、お主からじゃ何を願う?」
「そんな突然言われてもなぁ。難しいな」
「なら儂が決めてやろう」
「えっ!?」
「儂への占有販売権を交付する。儂の元へ来る売買品は全てお主を通す。儂が生きとる限りは商売のしがいがあるじゃろうに。よし、決定じゃ!」
「本当かよ。すげぇ事いいやがるな」
その決定に会場が沸いた。
野次も飛んできているけど、悪意の野次じゃない。恐らくバレルさんが仕事で繋がった人達からの言葉だろうと言うのが内容から分かる。
「次はお主だ。ユリ、何を願う?」
「私は……どうしましょうか」
分かる。その気持ちはすごく分かる。次に来るのが私だと理解していても、答えは用意できてない。
いざとなると頭の中でまとまらないものよね。
「お主もか。欲がないのぉ。ではこうじゃ。お主は近衛騎士を目指しておるな。カルロスの元で騎士として今からでも動いてみよ。カルロスから剣技を学び、心を学べ。そして、次の儂の近衛騎士をお主としよう。そしていずれカルロスは儂の秘書とする」
「えっ……。それは嬉しい申し出ですが……」
「それならばいいじゃろう。決定じゃこの者を先の儂の近衛騎士候補として」
「待ったぁ!! その話待ったぁ!!」
話の流れを切る大声が舞台から放たれる。
その声の主は私だ。
下の人も、同じ舞台にいる人もみんなが私に視線を向けている。
今この会場にいる人の視線を私が独占している。
「その話に! 異議あり!」
ガルド公の紹介が終わって、私達はガルド公のいる舞台へと姿を現した。
上から見た会場は色とりどりの花が咲いているように見えた。カラフルなドレスとシックな男性着が光で照らされたキャンバスに散りばめられているようにも思える。
場所が照明に近いからか下よりも暑く感じる。
私達が舞台に顔を出すとざわめきが起こった。
私達は3人でガルド公に、その後、下にいる人達に向かって頭を下げる。
両親はいないかと探してみるが、この人の中で見つけることは出来なかった。
「何を見つけたかは言えん。そして、その事をこの者たちに聞く事も許さん。しかし、この者たちは勇気を出して冒険し、ここに来るまでに至った事は間違いない。なので、儂はこの者に褒美として金一封と儂の手で叶えられる小さな願いを叶えるものとする!」
その内容に驚く。願い事までなんて聞いてもないし予測もしてなかった。
他の2人もガルド公の発言に驚いて『えっ?』なんて一緒になって言ってしまっている。
3人が顔を見合わせて『聞いてた?』と言うそれぞれの質問にも首を振った。
その反応は私達だけじゃない。会場にいる全員が近い反応のようで会場は静まっている。
静まった会場の中で音が鳴った。その音は会場の後方の一角から小さく響いている。
手と手を打ち合わせた乾いた音。その音が出ている方に見知った2人がいる。両親だ。
その音は伝播するように今度は別の方向から鳴り出す。その音の出どころに居たのは、数名の綺麗なドレスと紳士服を着込んだ集まり。
「私の家族です……」
口元を押さえて、目を拭いながらユリが呟いた。
「おめでとー! フランソワ!」
聞き覚えのある声が私を祝福してくれた。
その声の主の隣には力を込めて拍手をする強面の男性がいた。力を込めすぎて近くにいる人が若干引いているようにも見える。
「ありがとー! ルシアさーん!」
私の返事を合図にしたかのように拍手が会場全体から響いて来た。静かな会場はもうなく、ただ拍手の音だけが支配する空気になっている。
空気が震える、振動が伝わってくる。
「良かったじゃないか2人とも。祝ってくれてるぜ」
「バレルさんもですよ。ほら」
後ろでは控えめな拍手が鳴っている。チェルさんだ。
「おめでとうございます。なんだか怖い人だと思っててすみません」
「俺か!? 声がでかいからな。怖がらせたさせたら悪いな」
なんだか微笑ましいやりとりだった。
そんな拍手の合唱も次第に音が弱くなっていく。
「さて、それでは褒美のことじゃが。まずは報奨金を各自に渡す。そして、まずはバレル、お主からじゃ何を願う?」
「そんな突然言われてもなぁ。難しいな」
「なら儂が決めてやろう」
「えっ!?」
「儂への占有販売権を交付する。儂の元へ来る売買品は全てお主を通す。儂が生きとる限りは商売のしがいがあるじゃろうに。よし、決定じゃ!」
「本当かよ。すげぇ事いいやがるな」
その決定に会場が沸いた。
野次も飛んできているけど、悪意の野次じゃない。恐らくバレルさんが仕事で繋がった人達からの言葉だろうと言うのが内容から分かる。
「次はお主だ。ユリ、何を願う?」
「私は……どうしましょうか」
分かる。その気持ちはすごく分かる。次に来るのが私だと理解していても、答えは用意できてない。
いざとなると頭の中でまとまらないものよね。
「お主もか。欲がないのぉ。ではこうじゃ。お主は近衛騎士を目指しておるな。カルロスの元で騎士として今からでも動いてみよ。カルロスから剣技を学び、心を学べ。そして、次の儂の近衛騎士をお主としよう。そしていずれカルロスは儂の秘書とする」
「えっ……。それは嬉しい申し出ですが……」
「それならばいいじゃろう。決定じゃこの者を先の儂の近衛騎士候補として」
「待ったぁ!! その話待ったぁ!!」
話の流れを切る大声が舞台から放たれる。
その声の主は私だ。
下の人も、同じ舞台にいる人もみんなが私に視線を向けている。
今この会場にいる人の視線を私が独占している。
「その話に! 異議あり!」
0
お気に入りに追加
234
あなたにおすすめの小説
虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります
結城芙由奈
恋愛
伯爵家である私の家には両親を亡くして一緒に暮らす同い年の従妹のカサンドラがいる。当主である父はカサンドラばかりを溺愛し、何故か実の娘である私を虐げる。その為に母も、使用人も、屋敷に出入りする人達までもが皆私を馬鹿にし、時には罠を這って陥れ、その度に私は叱責される。どんなに自分の仕業では無いと訴えても、謝罪しても許されないなら、いっそ本当の悪女になることにした。その矢先に私の婚約者候補を名乗る人物が現れて、話は思わぬ方向へ・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
悪役令嬢らしいのですが、務まらないので途中退場を望みます
水姫
ファンタジー
ある日突然、「悪役令嬢!」って言われたらどうしますか?
私は、逃げます!
えっ?途中退場はなし?
無理です!私には務まりません!
悪役令嬢と言われた少女は虚弱過ぎて途中退場をお望みのようです。
一話一話は短めにして、毎日投稿を目指します。お付き合い頂けると嬉しいです。
醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます
ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。
そして前世の私は…
ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。
とある侯爵家で出会った令嬢は、まるで前世のとあるホラー映画に出てくる貞◯のような風貌だった。
髪で顔を全て隠し、ゆらりと立つ姿は…
悲鳴を上げないと、逆に失礼では?というほどのホラーっぷり。
そしてこの髪の奥のお顔は…。。。
さぁ、お嬢様。
私のゴットハンドで世界を変えますよ?
**********************
『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』の続編です。
続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。
前作も読んでいただけるともっと嬉しいです!
転生侍女シリーズ第二弾です。
短編全4話で、投稿予約済みです。
よろしくお願いします。
深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~
白金ひよこ
恋愛
熱で魘された私が夢で見たのは前世の記憶。そこで思い出した。私がトワール侯爵家の令嬢として生まれる前は平凡なOLだったことを。そして気づいた。この世界が乙女ゲームの世界で、私がそのゲームの悪役令嬢であることを!
しかもシンディ・トワールはどのルートであっても死ぬ運命! そんなのあんまりだ! もうこうなったらこのまま病弱になって学校も行けないような深窓の令嬢になるしかない!
物語の全てを放棄し逃げ切ることだけに全力を注いだ、悪役令嬢の全力逃走ストーリー! え? シナリオ? そんなの知ったこっちゃありませんけど?
嘘つくつもりはなかったんです!お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
季邑 えり
恋愛
異世界転生した記憶をもつリアリム伯爵令嬢は、自他ともに認めるイザベラ公爵令嬢の腰ぎんちゃく。
今日もイザベラ嬢をよいしょするつもりが、うっかりして「王子様は理想的な結婚相手だ」と言ってしまった。それを偶然に聞いた王子は、早速リアリムを婚約者候補に入れてしまう。
王子様狙いのイザベラ嬢に睨まれたらたまらない。何とかして婚約者になることから逃れたいリアリムと、そんなリアリムにロックオンして何とかして婚約者にしたい王子。
婚約者候補から逃れるために、偽りの恋人役を知り合いの騎士にお願いすることにしたのだけど…なんとこの騎士も一筋縄ではいかなかった!
おとぼけ転生娘と、麗しい王子様の恋愛ラブコメディー…のはず。
イラストはベアしゅう様に描いていただきました。
悪役令嬢の独壇場
あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。
彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。
自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。
正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。
ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。
そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。
あら?これは、何かがおかしいですね。
すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした
珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。
色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。
バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。
※全4話。
気が付けば悪役令嬢
karon
ファンタジー
交通事故で死んでしまった私、赤ん坊からやり直し、小学校に入学した日に乙女ゲームの悪役令嬢になっていることを自覚する。
あきらかに勘違いのヒロインとヒロインの親友役のモブと二人ヒロインの暴走を抑えようとするが、高校の卒業式の日、とんでもないどんでん返しが。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる