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ガルド城の秘密

第107話-失われた技術-

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 読み終わった後は静かな一幕だった。
 その中で口を開いたのは私だった。

「これってつまり、『魔法』は実在したって事ですよね。とりあえず」
「読む限りはそう見える。ただ証拠がないからの」
「この城本体が証拠ではありますよね。確かにこの空間も人がしたにしては広さとかも普通じゃないなって」
「うむ。それはそうなんじゃがなぁ」

 はっきりした事は分からない。ただ、今はそう予測するしかできない。

「使い方って言っても、まずその精霊がいなければ話にならないのであればこれは誰にも使えないと言う事では?」

 ユリの言葉に落胆した。
 その通りだ。
 この石板の事を『魔法』が実在するために信じるのであれば、失われた技術と言う事になって、証明出来ないから信憑性はなくなる。逆に偽物、出鱈目な物として見れば『魔法』は存在しない物だと言う事になる。
 どちらにしても『魔法』の存在は証明されない。

「ちなみにガルド公は精霊に心当たりは?」
「ない。妻からも、妻の父と母からも聞いた事もないの」
「つまり、これは失われた技術であると言う事ですね」
「ユリはこの石板にある文を信じるの?」
「えぇ、信じます。元々ガルド公の一族は魔法が使えたと昔から聞いたこともありました。実際この空間を歩いて、人の作りにしては手がかかりすぎるものかと。それにここの事をガルド公が知らないと言う事も合わせての考え方ですが」
「ふむ。そう言われたらそうじゃの。ここを作るのであれば人員が恐ろしいほど必要になるじゃろうが、ここが全く外に漏れていないのは不思議で仕方ないわい」

 火のない所に煙は立たないと言うか。確かに人の口を完全に戸を立てることは出来ない。
 それはつまり、ここを1人で作った。それなら分かる。何故ならその人が離さなければここが露呈するのは偶然入り口を見つける事などでしかない。

「ただ、言う通り失われた技術である事も理解はして、納得しておるよ。儂に子どもはおらん。妻には兄も姉も、弟も妹もおらんかった。元々ガルド一族は子どもを1人しか産まなかったのが慣わしだったからの」

 考えれば考える程、今に残る『魔法』がないものだと考えないといけない結末になってくる。
 ある意味私の存在が証拠かも知れないけど、言っても信じてくれないだろうし、側から見たら怪しい人物扱いしかされないだろう。

「そう考えるとガッカリですね」

 私は落胆の言葉を残して隣の机に探索の対象を変えた。
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