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ガルド城の秘密

第61話-ユリとの距離-

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 私達が会場に戻っても、さっき会場を抜け出した時と雰囲気とはほとんど変わらずにパーティーは続いていた。
 私とユリは今度は会場の中で飲み物を飲んでいた。冷たいフルーツジュース。ほのかな酸味と果物特有の甘さが私の喉を刺激し、潤していく。
 テラスに出なかったのはユリの勧めだった。「外に不審者がいるかもしれないのだから、迂闊に外に出ない方がいい」ごもっともな意見だ。

「フランソワ様はガルド公の言っていた『魔法』を信じているんですか?」

 私の現在進行形な体験談を話しても信じてもらえないだろうし、話したら話したで頭のおかしい人間だと思われても仕方ない。現状を話す事はできないけど、興味があることだけは肯定した。

「夢はあるじゃない。それに今からパーティー開催中は暇でしょうし。いいんじゃないかしら」

 誤魔化してユリにそれらしい理由をつけて答えを返した。

「ユリ、あなたは無理してついて来なくてもいいのよ。私を心配してくれて合わせてくれたんでしょ」

 本当は興味もないだろうに。私に合わせてくれたユリは優しい。
 
「いえ。私もお供いたしますよ。乗り掛かった船ですので。それに私は魔法よりも外で見た人影の方が気になりますので」
「何にもなければ良いんだけどね」
「そうですね。何よりガルド公の言っていた魔法の技術を盗みに来る輩と言うのが引っかかります」
「流石にそんな人達本当にいないでしょ。あれはガルド公なりの冗談よ」

 ガルド公が自分の家系、先祖の逸話があるから魔法と言うのに執着があるのかもしれないが、それ以外の人からすると夢物語だ。私のような例外を除けば。
 だから私はあのやりとりは冗談も入っていると思っている。

「ただ、聞いたことがあります。この世にはない技術を求める信仰者の事です。魔法信仰者の集まりがあると」
「本当に? そんなのいるんだ」
「噂ですけどね。実際に魔法を使うとも言われています。流石にそこまで信じていませんが、そんな未知数の輩がいるかも知れないと思うと心配ですよフランソワが」
「えっ!? なんで私が?」

 なんで私にその信者が関わってくるのかが分からない。

「フランソワ様が本当に魔法について調べ出したら魔法信仰者としては手がかりを求めて接触してくるかもしれません。特に顔も見られているかもしれませんし」
「それはないでしょう。私が何を調べてたりするのなんて分からないわよ」
「あくまで警戒です。もしかしたらこの会場にも信仰者がいるかもしれませんしね。私も挨拶さえ終わってしまえば残りの開催期間はお役御免ですので、それもありますが」
「つまりあなたも暇なのね」

 ユリはその問いに言葉で答えず、苦笑いをして意思表示をした。

「それじゃあ明日は朝食後に玄関フロアに集合しましょ。それから資料室へ行ってみましょ」
「資料室は私も楽しみなので遅くならないようにフランソワ様に合流します」
「ねぇ、ところでさ。もうそろそろ呼び方緩くしてくれないの? 私なんか呼び捨てなんだからもう少し仲良くなった証に『フランソワ』とかって呼んで欲しいんだけど」

 ユリは少し困った顔をしている。

「流石にそれは…すみません」

 ユリとの心の距離が縮まるのにはもう少し時間がかかりそうだ。
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