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ガルド城の秘密
第57話-月と星と庭と-
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ユリとの会話は時間を忘れる程に楽しかった。
家、両親のこと、そして実業家である兄の話、騎士学校での日常。私の知らない世界がユリの口から語られていく。ユリの話すエピソードに私は一喜一憂して聴き入っていた。
気づけばお互い最初に手に持っていたグラスは空になっていた。
「私飲み物取ってくるわ。少し待っててユリ」
「いえいえ、私が取ってきますよ。さっきと同じのを持ってきますね」
こちらの返答を聞かずにユリは私からグラスを取って会場へと戻っていった。
手持ち無沙汰になって仕方なくテラスから見える広大な庭と星が輝く夜空を眺めた。木々が生茂る森のような庭園、ここからではまるで森のようにしか見えない。
そんな中にも上から見ると所々に大きな岩が鎮座していたり、小さな池もある。
庭を作ったと言うよりかは「自然そのままの場所を囲って、そこに城を建てた」と言うのが合いそうだ。
「お待たせしました」
ユリからさっきと同じ飲み物が入ったグラスを受け取る。お互いにグラスで乾杯をしてから口の中に流し込んだ。
「何を見ていられたんですか?」
「庭と空をね。綺麗だなー、自然だなーってね」
「確かにそうですね。月も高く登る時期ですから自然の明かりが木々を照らし出すのは幻想的ですね。小さい頃はこの庭に迷い込むと出られないと親によく言われたものです」
私の隣でテラスの手すりに身を預けるようにして過去の事を話してくれた。
私もユリの見ている月明かりの庭へと目線を向ける。暗く怪しくも広がる庭もユリの言う通り、幻想的に見えてくる。
このまま景色を見ているのもいいけど、私はユリの話の続きを聞きたかった。彼女の目から見た日常の事を。
「ねぇさっきの話の続きを聞かせてよ。もっともっと聞きた……」
「そう言えば会場で美味しそうな果物がありました。取りに行きましょう」
突然だった。私の言葉を遮ってユリは私の手を引っ張って有無を言わさずに会場へと引き込んだ。
「どうしたのいきなり!?」
「すみません、用事を思い出しまして。会場でゆっくりとお食事ください」
私をテラスから入ってすぐの所にある果物があるテーブルに置いてユリはそのまま会場の扉へと向かっていった。
その突然の行動に私は混乱していた。さっきまでとは空気の違ったユリは何故か急ぐように私を会場へ戻した。
「用事って……」
用事を思い出したと言って私の前から去って行ったユリに私はどこか納得できないものがあった。本当に急ぎの用事だったらそう言って戻っていけばいいのに、わざわざ私を会場へと連れ戻した理由がわからない。
その答えを考えて見つける前に私は手に持っていたグラスをテーブルに置いてユリの後を急いで追いかけた。
家、両親のこと、そして実業家である兄の話、騎士学校での日常。私の知らない世界がユリの口から語られていく。ユリの話すエピソードに私は一喜一憂して聴き入っていた。
気づけばお互い最初に手に持っていたグラスは空になっていた。
「私飲み物取ってくるわ。少し待っててユリ」
「いえいえ、私が取ってきますよ。さっきと同じのを持ってきますね」
こちらの返答を聞かずにユリは私からグラスを取って会場へと戻っていった。
手持ち無沙汰になって仕方なくテラスから見える広大な庭と星が輝く夜空を眺めた。木々が生茂る森のような庭園、ここからではまるで森のようにしか見えない。
そんな中にも上から見ると所々に大きな岩が鎮座していたり、小さな池もある。
庭を作ったと言うよりかは「自然そのままの場所を囲って、そこに城を建てた」と言うのが合いそうだ。
「お待たせしました」
ユリからさっきと同じ飲み物が入ったグラスを受け取る。お互いにグラスで乾杯をしてから口の中に流し込んだ。
「何を見ていられたんですか?」
「庭と空をね。綺麗だなー、自然だなーってね」
「確かにそうですね。月も高く登る時期ですから自然の明かりが木々を照らし出すのは幻想的ですね。小さい頃はこの庭に迷い込むと出られないと親によく言われたものです」
私の隣でテラスの手すりに身を預けるようにして過去の事を話してくれた。
私もユリの見ている月明かりの庭へと目線を向ける。暗く怪しくも広がる庭もユリの言う通り、幻想的に見えてくる。
このまま景色を見ているのもいいけど、私はユリの話の続きを聞きたかった。彼女の目から見た日常の事を。
「ねぇさっきの話の続きを聞かせてよ。もっともっと聞きた……」
「そう言えば会場で美味しそうな果物がありました。取りに行きましょう」
突然だった。私の言葉を遮ってユリは私の手を引っ張って有無を言わさずに会場へと引き込んだ。
「どうしたのいきなり!?」
「すみません、用事を思い出しまして。会場でゆっくりとお食事ください」
私をテラスから入ってすぐの所にある果物があるテーブルに置いてユリはそのまま会場の扉へと向かっていった。
その突然の行動に私は混乱していた。さっきまでとは空気の違ったユリは何故か急ぐように私を会場へ戻した。
「用事って……」
用事を思い出したと言って私の前から去って行ったユリに私はどこか納得できないものがあった。本当に急ぎの用事だったらそう言って戻っていけばいいのに、わざわざ私を会場へと連れ戻した理由がわからない。
その答えを考えて見つける前に私は手に持っていたグラスをテーブルに置いてユリの後を急いで追いかけた。
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