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白と黒の騎士
第28話-下層とキース一派-後編
しおりを挟む「分かった。中層にも恩を売りたいから」
「正解です。中層の中には下層と併合されることを嫌がる声も上がるでしょう。その声がもし下層と共鳴して団結されると問題大きくなりますから」
「敵の敵は味方って事ね」
「そういう言い方は初めて聞きました。いい言葉です覚えておきます」
「でも結局ヤンがどうこうっていうのは分からないわ」
その疑問はまだ説明されていない。
「ヤンはフロストを信頼して下層を預けました。そのフロストから下層を奪ったとあればヤンはキース一派をこの街から追い出すことを考えるでしょう」
「でもするならフロストって人と一緒にするんじゃないの? 今度は準備もしてさ、だったらまだ何とかなるんじゃないの?」
「ヤンは一人でするでしょう。ヤンは基本的に人と一緒に何かをしない。するとしてもフロスト達の動きに勝手に合わせるか、フロスト達が勝手にヤンに合わせるかでしょう」
「それでキース一派を追い出せるの?」
「勝率は5分5分にもならないでしょう。見立てでは準備をしてでも7割はフロスト達の負けです。そうなるからこそ高層は手を出さない選択肢を選んでいる。ヤンが入ってもの計算です。ヤン抜きなら9割フロスト達の負けです」
「ヤンの存在はでかいのね」
「下層の顔でもありましたから。下層で彼とフロストを知らない人はいませんでした」
今この街がどういった状況なのかは分かった。今ヤンが何をしようとしているかも分かったつもりだ。
高層の考えを私は理解できない。だって、そんなの高層の勝手な考えで犠牲になってる人たちがいる。自分たちの望まない事を押し付けられるために。
「アルはどう思う?」
アルの考えが知りたい。さっきから表情は見えなくても声はいつものアルのようには聞こえなかった。怒りを抑えているのか、何を思って私にこの話をしてくれたのか。
「高層の考えに納得することはできません。でもそれをどうこうできる立場でもないのも分かっています。だから歯がゆい。下層にいるからと言う理由だけで被害を受けていい話じゃない。その考えに賛同した高層の人間も、自分の父親にも正直僕は怒りを持っている」
さっきまで以上に感情を噛み殺した声が聞こえてくる。悔しさと怒りが垣間見える。いつも丁寧な話し方をするアルからは想像できない話し方だ。
「でも僕はアル=レイトで。レイト家の人間であり、育ててもらった恩もある。家の意見には従わなければいけない。だから……僕にはヤンを心配することしかできなかった」
アルの自分の無力さを嘆く声が痛々しい。
布の向こう側のどこにいるかも分からない彼に手を差し伸べそうになるけど、布の直前で腕を止めた。私にできる事はここで彼を慰めるわけでもなく、共感することでもない。私にできる事は……。
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