上 下
26 / 418
白と黒の騎士

第20話-ホリナの想い-後編

しおりを挟む

「お嬢様は私が邪魔ですか?」

 沈黙の空気を先に破ったのはホリナだ。それもさっきのような鋭い言い方ではない。鋭さの中に悲しみの声が混じったような辛そうな声をひねり出す。

「ごめんホリナ。そんなつもりはないの。ただ、ただね。いつも私の身の回りの支度をしれくれてる2人が本当に大丈夫かなって思うだけなの。それは分かってほしい」

 私とホリナの意見は永遠に平行線になっている。それはお互いがお互いを思っての意見。だからお互い譲ろうとはしない。
 
「1つ誤解しないで頂きたいのですが、少なくとも私は楽しく、自分の意思でお世話をさせて頂いています。お嬢様の言葉で言うならこれが『趣味』なのです」

 さっき一瞬感じた悲しみの声はもうそこにはない。

「なので、お休みをいただく方がしんどいかもしれません。生活のサイクルが崩れますので」

 淡々とホリナが言葉を紡いでいく。

「それに働きづめではありません。私もアレンも適度に休みながら、サボりながらお仕事をしていますよ。今最後に聞いたことは旦那様には内緒にしておいてくださいね」

 そう言い切ったホリナは少し笑っていた。

「分かったわ。そこまで言われたら私は何も言えないわ。そうね、だったらホリナ私について着て頂戴。ただべったりは駄目よ! 適度に離れて私を守ってね。それくらい私の専属メイドなんだからできるわよね」

 私は観念して彼女の言い分を飲んだ。さっきの笑顔のお返しに今度は私の笑顔をホリナに返す。
 ここまで言ってくれているのにそれを無下に扱うことは私にはできなかった。

「えぇ、もちろんです。私がしっかりと楽しめるようにお守りいたしますお嬢様」
「ありがとう……ホリナ」
「アレンには私から聞いてみましょうか?」
「私から直接言うわ。私から言わないと意味ないもの」

 馬の手入れをしていたアレンに聞くと答えはホリナと一緒だった。彼の趣味は馬の手入れと馬に乗ること、馬車を運転することだそうだ。仕事内容が趣味みたいなものらしい。だから彼の『ホリナ10倍はゆっくりサボってますよ』はあながち間違いではないのかもしれない。

 こうして私のアリスと街に遊びに行く約束にはお忍びでのホリナも同行になった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

婚約破棄を受け入れたのは、この日の為に準備していたからです

恋愛 / 完結 24h.ポイント:305pt お気に入り:4,215

この部屋はお兄ちゃん絶対王政だからな!

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:4

愛し合えない夫婦です

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:594

そう言うと思ってた

恋愛 / 完結 24h.ポイント:134pt お気に入り:921

睦月の桜が咲き誇る頃

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:3

薔薇の寵妃〜女装令嬢は国王陛下代理に溺愛される〜完結

BL / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:709

勝手に勘違いして、婚約破棄したあなたが悪い

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:156pt お気に入り:4,669

還暦記念

エッセイ・ノンフィクション / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

処理中です...