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目が覚めたらゲームの世界!?
第15話-堅物騎士のアル-後編
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騎士学校の校舎から寮に至るまでのすべての場所をアルは案内してくれた。全体面積は思ってた以上に広く、学院と遜色ないほどに広いように感じる。
わざとらしく穴のある方も聞いてみたが、何もなく、ただ雑木林のようになっているだけと言われた。学院との門と道を作るために空いた空間という感じのようだ。ゲーム内でもアルがあの穴を知るのはルートに入って終盤なので違和感はない。
校舎内も教室、資料室、稽古場と言う名の別館があったりと、構造を見る限り普通の学校と変わらない気がした。
案内途中にすれちがう生徒たちが上級生下級生と関わらずにアルと私に声をかけてくれた。客人として私にするのは分かるけど、アルにも声をかけているあたり、アルは年上年下関わらず人望があるのがよく分かる。
「ここが最後ですね。食堂になります。僕たちは普段ここで食事をしています。ここ以外でも食べられるように、持ち出すこともできますよ」
大きな食堂と言っても全員が入るわけでもないのだからそれは良くわかる。入っても人が多くてかなり賑やかだろう。もしかしたらヤンはそれがあんまり好きでないから1人でご飯を食べていたのかもしれない。
子どもの頃に校外学習で行ったお菓子工場の見学を思い出すような丁寧な案内で私の騎士学校見学は終わった。
「ありがとう。とても面白かったわ。普段見れない場所を見るってやっぱりわくわくするわね」
「喜んで頂けたなら良かったです」
「あなたは校庭の方にはいかないの?」
「本来は行って自分を売るべきなんでしょうが、未だにあの空気に馴染めなくて」
「あなたは人気あるから校庭でたら学院の生徒に囲まれそうだしね。でも売りこみは安心して頂戴。私がいるんだから既に近衛騎士内定よ」
「ありがとうございます」
言葉こそ丁寧だけど、まったく心のこもっていない言葉で返された気がする。
「私はこの後もう一回校庭に行ってみようと思うの。あなたのおかげで少し元気も出たし」
「そうですか。それでは僕とはここでお別れですね。まだあなたのように具合の悪い方がいるかもしれませんので」
具合が悪かったわけではないのだけど。結局私はそういう風に見られてたのね。
「それは残念ね。また次の交流会の時にあなたをみつけて声をかけるわ! 次はヤンとも一緒にお話ししましょう。ところでユリ=ランとオーラン=ウェルをどこかで見てない? 2人とも1年だからあなたとは学年が違うけど」
「すみません。オーランという者は名前を存じませんが、ユリさんなら校庭で囲まれているのを窓から見ましたよ。ちょうどあなたと会う前なので、少し前になりますが」
「そう、まだ居るかもしれないわね。丁度良かったわ」
「ユリさんも近衛騎士に誘いにいくのですか?」
「もちろん誘うわ! と言いたいけど、今日だけで2回も振られてるし、3回目も振られたら精神的にきついから今日は声掛けだけにしておくわ」
「そうですか」
アルが苦笑しながらそう言った後に咳払いをして言葉をつづける。
「もう1人のオーランという者は校庭で同じ1年生に聞いてみるしかなさそうですね」
「そうね。少し私の方で当たってみるわ。ユリの事は知っているのね。やっぱり有名なのね」
「そうですね。学内唯一の女性というのは良くも悪くも目立ちますので」
「あなたは彼女の事をどう思うの?」
「珍しいとは思います。ただだからと言って、それを悪く言うつもりはありません。騎士学校に入ったのなら、同志であり、ライバルでもあります」
今日1番の真面目顔で答えてくれた。
『ライバル』そうよね、本来は皆ライバルの筈、私のやっていることはそれを覆すことなのだというのは分かっているわ。だってみんなが1つの椅子を取り合うのではなくなるのだから。
「さぁ、早くいかないとユリさんが移動してしまうかもしれませんよ。そこの階段を1階まで降りてあちら側に出れば校庭に出ることができます。お気をつけて」
階段と食堂の窓方を順番に指差して教えてくれる。本当にわかりやすい説明で道に迷うことはないだろう。
「ありがとう。あなたの説明本当に楽しかったわ。またね」
「はい。それでは」
お互いに短い別れの言葉を投げ合って私は階段へ向かっていく。
わざとらしく穴のある方も聞いてみたが、何もなく、ただ雑木林のようになっているだけと言われた。学院との門と道を作るために空いた空間という感じのようだ。ゲーム内でもアルがあの穴を知るのはルートに入って終盤なので違和感はない。
校舎内も教室、資料室、稽古場と言う名の別館があったりと、構造を見る限り普通の学校と変わらない気がした。
案内途中にすれちがう生徒たちが上級生下級生と関わらずにアルと私に声をかけてくれた。客人として私にするのは分かるけど、アルにも声をかけているあたり、アルは年上年下関わらず人望があるのがよく分かる。
「ここが最後ですね。食堂になります。僕たちは普段ここで食事をしています。ここ以外でも食べられるように、持ち出すこともできますよ」
大きな食堂と言っても全員が入るわけでもないのだからそれは良くわかる。入っても人が多くてかなり賑やかだろう。もしかしたらヤンはそれがあんまり好きでないから1人でご飯を食べていたのかもしれない。
子どもの頃に校外学習で行ったお菓子工場の見学を思い出すような丁寧な案内で私の騎士学校見学は終わった。
「ありがとう。とても面白かったわ。普段見れない場所を見るってやっぱりわくわくするわね」
「喜んで頂けたなら良かったです」
「あなたは校庭の方にはいかないの?」
「本来は行って自分を売るべきなんでしょうが、未だにあの空気に馴染めなくて」
「あなたは人気あるから校庭でたら学院の生徒に囲まれそうだしね。でも売りこみは安心して頂戴。私がいるんだから既に近衛騎士内定よ」
「ありがとうございます」
言葉こそ丁寧だけど、まったく心のこもっていない言葉で返された気がする。
「私はこの後もう一回校庭に行ってみようと思うの。あなたのおかげで少し元気も出たし」
「そうですか。それでは僕とはここでお別れですね。まだあなたのように具合の悪い方がいるかもしれませんので」
具合が悪かったわけではないのだけど。結局私はそういう風に見られてたのね。
「それは残念ね。また次の交流会の時にあなたをみつけて声をかけるわ! 次はヤンとも一緒にお話ししましょう。ところでユリ=ランとオーラン=ウェルをどこかで見てない? 2人とも1年だからあなたとは学年が違うけど」
「すみません。オーランという者は名前を存じませんが、ユリさんなら校庭で囲まれているのを窓から見ましたよ。ちょうどあなたと会う前なので、少し前になりますが」
「そう、まだ居るかもしれないわね。丁度良かったわ」
「ユリさんも近衛騎士に誘いにいくのですか?」
「もちろん誘うわ! と言いたいけど、今日だけで2回も振られてるし、3回目も振られたら精神的にきついから今日は声掛けだけにしておくわ」
「そうですか」
アルが苦笑しながらそう言った後に咳払いをして言葉をつづける。
「もう1人のオーランという者は校庭で同じ1年生に聞いてみるしかなさそうですね」
「そうね。少し私の方で当たってみるわ。ユリの事は知っているのね。やっぱり有名なのね」
「そうですね。学内唯一の女性というのは良くも悪くも目立ちますので」
「あなたは彼女の事をどう思うの?」
「珍しいとは思います。ただだからと言って、それを悪く言うつもりはありません。騎士学校に入ったのなら、同志であり、ライバルでもあります」
今日1番の真面目顔で答えてくれた。
『ライバル』そうよね、本来は皆ライバルの筈、私のやっていることはそれを覆すことなのだというのは分かっているわ。だってみんなが1つの椅子を取り合うのではなくなるのだから。
「さぁ、早くいかないとユリさんが移動してしまうかもしれませんよ。そこの階段を1階まで降りてあちら側に出れば校庭に出ることができます。お気をつけて」
階段と食堂の窓方を順番に指差して教えてくれる。本当にわかりやすい説明で道に迷うことはないだろう。
「ありがとう。あなたの説明本当に楽しかったわ。またね」
「はい。それでは」
お互いに短い別れの言葉を投げ合って私は階段へ向かっていく。
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