3 / 10
彼女と僕
お誘い
しおりを挟む
「いらっしゃいませ」
マスターと彼女の声が響く。
安心感のあるマスターの声と癒しの彼女声の組み合わせはこの店の良さだとにわか常連としては思う。
今日は一人のようだ、大橋さんの姿はなかった。
「抹茶ラテをお願いします」
こちらが言う前に彼女が抹茶ラテを準備する動きに入るあたり店としても客として慣れて来たのだと感じる。
少しすると慣れた手つきで彼女がコースターの上に抹茶ラテを置きに来た。その間私はと言うと必死に彼女を誘うためのプランを考えており、いつものように彼女を見れていなかった。
「マスター、休憩にはいりますね」
「あぁ」
そのやりとりが終わると我にかえった。このままでは彼女は裏に行ってしまう。なんとかして彼女をこの場に引き止めなければ誘うどころではなくなってしまうのだ。
しかし、その思惑は外れた。彼女が自分で入れたティーカップを持って隣の席に座ったのであった。
「お隣りよろしいですか?」
いきなりの事に驚いたまま返事をするものだから声が若干裏返りながらも情けない声を出しながら「ひ、ひゃい!」と答える。なんとも惨めな姿であった。
「いつも私の入れた抹茶ラテを美味しそうに飲んでもらってるからお礼を言わなければと思っていたの。と言うのが表向きで本当は大橋さんから『彼は面白い子だから試しに話してみるといい』って聞いてたからね」
大橋さんグッジョブ。
今度会ったら何も聞かずにケーキセットを御馳走しよう。
「いや、こちらこそいつも抹茶ラテを美味しく作っていただきありがとうございます。あなたのおかげで抹茶ラテの美味しさに気づけました」
「そんな事を言っていただけるなんて嬉しい。ここで働いて初めてだもの!」
ここに通って初めて見た彼女の笑顔は想像以上にグッと来るものがあった。
そこからは自分の大学の話をしたり、彼女が最近ケーキ作りに挑戦していることなどお互いの話をしながら短い休憩時間を過ごした。
「もうこんな時間。そろそろ仕事に戻らないとマスターの視線が怖いわ」
そう言いながらマスターの方を見てみると咳払いをひとつしてマスターがこちらを向いた。確かに鋭い目で睨まれたらすごい怖い。
だが今しかないのだ。今ここで言わなければともう言えない気がする。勇気を振り絞り声を出す。
「ま、前園さん!よければ今度遊びに行きませんか?実は水族館のチケットがあるんです。少し寒い時期ですがどうでしょうか!?」
「水族館……ですか」
彼女は私の誘いに対して驚いた顔で呟いた。
「実は魚が苦手なんです……」
撃沈。
大橋さんからのパスを活かしきれずに恥ずかしくなった。そして大橋さんの情報に「前園さんは魚嫌い」と言うのも追加しておいてもらおう。
「と言うのは冗談です。はい。再来週の土曜日の10時なんていうのはどうですか?私お仕事お休みなので」
今度はこちらが驚いた。びっくりしすぎて一瞬声が出なかった。彼女から冗談が飛んで来るのは予想していなかったからだ。
「えっ、えっ、えーといいんですか?本当に?」
「はい」
彼女のその返事に外見は驚きのあまり動けていないが、心の中では踊っていた、盛大にガッツポーズをしている自分がそこにはいた。
「そ、それじゃあ再来週の土曜日に水族館前で…」
「はい。楽しみにしておきますね。ではそろそろ仕事に戻りますね。本当にマスターに怒られてしまうので」
そう言い残すと彼女はエプロンをつけカウンターの中へと戻って行った。
落ち着こうと氷が溶けて少し薄くなった抹茶ラテを口をつける。いつも以上に甘く濃厚な抹茶ラテに感じられた。
マスターと彼女の声が響く。
安心感のあるマスターの声と癒しの彼女声の組み合わせはこの店の良さだとにわか常連としては思う。
今日は一人のようだ、大橋さんの姿はなかった。
「抹茶ラテをお願いします」
こちらが言う前に彼女が抹茶ラテを準備する動きに入るあたり店としても客として慣れて来たのだと感じる。
少しすると慣れた手つきで彼女がコースターの上に抹茶ラテを置きに来た。その間私はと言うと必死に彼女を誘うためのプランを考えており、いつものように彼女を見れていなかった。
「マスター、休憩にはいりますね」
「あぁ」
そのやりとりが終わると我にかえった。このままでは彼女は裏に行ってしまう。なんとかして彼女をこの場に引き止めなければ誘うどころではなくなってしまうのだ。
しかし、その思惑は外れた。彼女が自分で入れたティーカップを持って隣の席に座ったのであった。
「お隣りよろしいですか?」
いきなりの事に驚いたまま返事をするものだから声が若干裏返りながらも情けない声を出しながら「ひ、ひゃい!」と答える。なんとも惨めな姿であった。
「いつも私の入れた抹茶ラテを美味しそうに飲んでもらってるからお礼を言わなければと思っていたの。と言うのが表向きで本当は大橋さんから『彼は面白い子だから試しに話してみるといい』って聞いてたからね」
大橋さんグッジョブ。
今度会ったら何も聞かずにケーキセットを御馳走しよう。
「いや、こちらこそいつも抹茶ラテを美味しく作っていただきありがとうございます。あなたのおかげで抹茶ラテの美味しさに気づけました」
「そんな事を言っていただけるなんて嬉しい。ここで働いて初めてだもの!」
ここに通って初めて見た彼女の笑顔は想像以上にグッと来るものがあった。
そこからは自分の大学の話をしたり、彼女が最近ケーキ作りに挑戦していることなどお互いの話をしながら短い休憩時間を過ごした。
「もうこんな時間。そろそろ仕事に戻らないとマスターの視線が怖いわ」
そう言いながらマスターの方を見てみると咳払いをひとつしてマスターがこちらを向いた。確かに鋭い目で睨まれたらすごい怖い。
だが今しかないのだ。今ここで言わなければともう言えない気がする。勇気を振り絞り声を出す。
「ま、前園さん!よければ今度遊びに行きませんか?実は水族館のチケットがあるんです。少し寒い時期ですがどうでしょうか!?」
「水族館……ですか」
彼女は私の誘いに対して驚いた顔で呟いた。
「実は魚が苦手なんです……」
撃沈。
大橋さんからのパスを活かしきれずに恥ずかしくなった。そして大橋さんの情報に「前園さんは魚嫌い」と言うのも追加しておいてもらおう。
「と言うのは冗談です。はい。再来週の土曜日の10時なんていうのはどうですか?私お仕事お休みなので」
今度はこちらが驚いた。びっくりしすぎて一瞬声が出なかった。彼女から冗談が飛んで来るのは予想していなかったからだ。
「えっ、えっ、えーといいんですか?本当に?」
「はい」
彼女のその返事に外見は驚きのあまり動けていないが、心の中では踊っていた、盛大にガッツポーズをしている自分がそこにはいた。
「そ、それじゃあ再来週の土曜日に水族館前で…」
「はい。楽しみにしておきますね。ではそろそろ仕事に戻りますね。本当にマスターに怒られてしまうので」
そう言い残すと彼女はエプロンをつけカウンターの中へと戻って行った。
落ち着こうと氷が溶けて少し薄くなった抹茶ラテを口をつける。いつも以上に甘く濃厚な抹茶ラテに感じられた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
【ショートショート】おやすみ
樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
◆こちらは声劇用台本になりますが普通に読んで頂いても癒される作品になっています。
声劇用だと1分半ほど、黙読だと1分ほどで読みきれる作品です。
⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠
・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します)
・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。
その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
四十二歳の冴えない男が、恋をして、愛を知る。
只野誠
恋愛
今まで恋愛とは無縁の冴えない男が恋をして、やがて愛を知る。
大人のラブストーリーとは言えない、そんな拙い恋物語。
【完結済み】全四十話+追加話
初日に九話まで公開、後は一日ごとに一話公開。
【完結】maybe 恋の予感~イジワル上司の甘いご褒美~
蓮美ちま
恋愛
会社のなんでも屋さん。それが私の仕事。
なのに突然、企画部エースの補佐につくことになって……?!
アイドル顔負けのルックス
庶務課 蜂谷あすか(24)
×
社内人気NO.1のイケメンエリート
企画部エース 天野翔(31)
「会社のなんでも屋さんから、天野さん専属のなんでも屋さんってこと…?」
女子社員から妬まれるのは面倒。
イケメンには関わりたくないのに。
「お前は俺専属のなんでも屋だろ?」
イジワルで横柄な天野さんだけど、仕事は抜群に出来て人望もあって
人を思いやれる優しい人。
そんな彼に認められたいと思う反面、なかなか素直になれなくて…。
「私、…役に立ちました?」
それなら…もっと……。
「褒めて下さい」
もっともっと、彼に認められたい。
「もっと、褒めて下さ…っん!」
首の後ろを掬いあげられるように掴まれて
重ねた唇は煙草の匂いがした。
「なぁ。褒めて欲しい?」
それは甘いキスの誘惑…。
地味系秘書と氷の副社長は今日も仲良くバトルしてます!
めーぷる
恋愛
見た目はどこにでもいそうな地味系女子の小鳥風音(おどりかざね)が、ようやく就職した会社で何故か社長秘書に大抜擢されてしまう。
秘書検定も持っていない自分がどうしてそんなことに……。
呼び出された社長室では、明るいイケメンチャラ男な御曹司の社長と、ニコリともしない銀縁眼鏡の副社長が風音を待ち構えていた――
地味系女子が色々巻き込まれながら、イケメンと美形とぶつかって仲良くなっていく王道ラブコメなお話になっていく予定です。
ちょっとだけ三角関係もあるかも?
・表紙はかんたん表紙メーカーで作成しています。
・毎日11時に投稿予定です。
・勢いで書いてます。誤字脱字等チェックしてますが、不備があるかもしれません。
・公開済のお話も加筆訂正する場合があります。
JC💋フェラ
山葵あいす
恋愛
森野 稚菜(もりの わかな)は、中学2年生になる14歳の女の子だ。家では姉夫婦が一緒に暮らしており、稚菜に甘い義兄の真雄(まさお)は、いつも彼女におねだりされるままお小遣いを渡していたのだが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる