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第1話
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突然の横の訪問者に戸惑いを隠せなかった。
まずテンションが高い。小声とはいえども、講義中にジェスチャーをつけながら話してくることに驚いた。
さっきまでこちらに対して向けていた顔は既に前を向いて、講義を聴いている。
意外とまじめなタイプなのかも知れない。
「今日って確か小論文やるんだっけ?」
「やるのは講義後半」
遠慮もなしにこちらに聞いてくる。その馴れ馴れしさに、実はこいつ知り合いなのではという感情さえ浮かび上がってくる。
「題材って聞いてる?」
「まだ、直前に言われるってさ」
「サンキュ」
そう言うと、彼女はまた前を向いて講義に戻る。
自分と違うタイプの人間はどうしても接しにくい。慣れない。ましてや初対面の人間相手だ。こちらは人付き合いが得意ではないので尚更だ。
当然ながら最初のやり取り以降は特に何もなく講義は進んでいった。初めはそれなりに聞いていた内容も45分を過ぎる頃には少しずつ集中力を切らして行って、それはあくびという形で体に出てくる。
前では「現代文理解」という講義の名前らしく、文を構成する要素の説明を、資料を交えながら説明しているが、いかんせん眠気のせいもあって頭に入ってこない。
だが、もうすぐやってくる小論文の課題のために起きておかないといけないのが辛いところだ。
どうやら横も同じようで、手で口元を隠してあくびをしている姿が横目に見える。
「あくびはうつるからね」
「わ、悪い」
「冗談」
声をかけられたことよりも、自分が隣を見ていたのがばれたのが気恥ずかしかった。
講義終了30分前になると小論文のテーマが発表された。内容は「現代の大学生」について。配られたA4原稿用紙1枚に書いた後に、隣、または前後とお互い内容を確認して、間違いがないかのチェックをしてから提出というのが今日の締めくくりらしい。
テーマこそシンプルではあるが、考えてみると難しい。何も考えずに大学生を始めた自分にとっては、持論も何もないからだ。
悩みぬくこと20分で書き上げた小論文は、自分で読み返して見ても、内容のない、スカスカの文だと思う。ましてやこれが、他人に読まれるのだから、なお恥ずかしい。
「そしたら交換ね。私のもよろしく」
隣から差し出された用紙と自分の用紙を交換する。
題名は「好きと言えない大学生」。
名前は相川優香。
どこか聞き覚えのある名前だ。名字だけならまだしも、名前も知っている気がする。
こちらが、隣に尋ねる前に隣から先手を打たれた。
「間違ってたらごめん。もしかして落山中学出身だったりする…?」
疑問が確信に変わる。
「もしかして、あの相川さん…」
「どの相川さんかは分からんけど、多分想像してる相川で合ってると思う」
そこには俺の知っている相川とは、全く別人の相川優香がいた。
まずテンションが高い。小声とはいえども、講義中にジェスチャーをつけながら話してくることに驚いた。
さっきまでこちらに対して向けていた顔は既に前を向いて、講義を聴いている。
意外とまじめなタイプなのかも知れない。
「今日って確か小論文やるんだっけ?」
「やるのは講義後半」
遠慮もなしにこちらに聞いてくる。その馴れ馴れしさに、実はこいつ知り合いなのではという感情さえ浮かび上がってくる。
「題材って聞いてる?」
「まだ、直前に言われるってさ」
「サンキュ」
そう言うと、彼女はまた前を向いて講義に戻る。
自分と違うタイプの人間はどうしても接しにくい。慣れない。ましてや初対面の人間相手だ。こちらは人付き合いが得意ではないので尚更だ。
当然ながら最初のやり取り以降は特に何もなく講義は進んでいった。初めはそれなりに聞いていた内容も45分を過ぎる頃には少しずつ集中力を切らして行って、それはあくびという形で体に出てくる。
前では「現代文理解」という講義の名前らしく、文を構成する要素の説明を、資料を交えながら説明しているが、いかんせん眠気のせいもあって頭に入ってこない。
だが、もうすぐやってくる小論文の課題のために起きておかないといけないのが辛いところだ。
どうやら横も同じようで、手で口元を隠してあくびをしている姿が横目に見える。
「あくびはうつるからね」
「わ、悪い」
「冗談」
声をかけられたことよりも、自分が隣を見ていたのがばれたのが気恥ずかしかった。
講義終了30分前になると小論文のテーマが発表された。内容は「現代の大学生」について。配られたA4原稿用紙1枚に書いた後に、隣、または前後とお互い内容を確認して、間違いがないかのチェックをしてから提出というのが今日の締めくくりらしい。
テーマこそシンプルではあるが、考えてみると難しい。何も考えずに大学生を始めた自分にとっては、持論も何もないからだ。
悩みぬくこと20分で書き上げた小論文は、自分で読み返して見ても、内容のない、スカスカの文だと思う。ましてやこれが、他人に読まれるのだから、なお恥ずかしい。
「そしたら交換ね。私のもよろしく」
隣から差し出された用紙と自分の用紙を交換する。
題名は「好きと言えない大学生」。
名前は相川優香。
どこか聞き覚えのある名前だ。名字だけならまだしも、名前も知っている気がする。
こちらが、隣に尋ねる前に隣から先手を打たれた。
「間違ってたらごめん。もしかして落山中学出身だったりする…?」
疑問が確信に変わる。
「もしかして、あの相川さん…」
「どの相川さんかは分からんけど、多分想像してる相川で合ってると思う」
そこには俺の知っている相川とは、全く別人の相川優香がいた。
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