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面倒事は押し付けよう!

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「ぷりん~~~~~!」
 少女の様に笑みを浮かべプリンを口にするファラスカ。

「ヒマリちゃん上手になったわね~♪」
 春恵もプリンを食べながら微笑む。

「ルペタと一緒に良く作るんですよ♪」
 ブルーワグで料理を広めている日葵が答える。

「ルペタちゃんも作るの?」
「はい、たまにユラちゃんとレンちゃんもブルーワグに遊びに来ますし。」
「あの子達も自由ね。」
「みんなに妖精付いてますから。」
 ルペタにはシュシュ、ユラにはルル、イーレンにはポポ、そして日葵にはクゥクゥがいつも一緒に付いていた。

「ブルーワグ?」
 聞きなれない国の名前にファラスカは首を傾げる。

「あっち・・・ヴァンディ大陸にあるジブラロールよりもっと向こうにある国です。」
 日葵は軽く説明する。

「ヒマリは次期王妃だもんねー。」
「実感無いけどね~・・・ってチハルもでしょ。」
「・・・実感ないね~。」
 千春と日葵は目が合い笑う。

「御二人は次期王妃様で御座いますか!?」
 驚くファラスカ。

「はい、ハルト、エンハルト殿下が第一王子でフィアンセなんです。」
 千春は顔を少し赤くしながら説明する、エンハルトは別のテーブルでセルフと話をしていた。

「そんな方と御一緒にお食事をさせて頂いたのですね。」
「それは気にしないで下さい、私より偉い人も居ますから。」
 千春はプリンをペロリと食べ終わり、パイに手を付けているアイトネを見る。

「女神様で御座いますか。」
「うん、食いしん坊女神様で御座います。」
 クスクスと笑いながら答える千春。

「ハル様も女神様で御座いましたね。」
「えぇ、成り行きなんだけどね♪」
「あの・・・。」
「?」
「神ランスルーセン様は・・・。」
「あ~・・・。」
 話を聞いていた春恵は困り顔でアイトネを見る。

『あの子は神じゃないわよ~♪』
「そ、そんな。」
『でも、その子を信じる事で安寧を受ける事が出来るのならそれで良いじゃない♪』
「そんなんで良いの?アイトネ。」
『人間は弱いわ、心の拠り所が作り物でも、それを信じる事で強くなる事が出来るの。』
 そう言うとパイをパクっと口に入れるアイトネ。

「と、残念女神様が言っております。」
『残念じゃ無いわよー!』
「だ・・・。」
『駄女神でもないわよー!』
「まだ言ってませ~ん。」
「チハル様!女神様にそんな恐れ多い事を!」
「いやぁ口に出さなくても思考読んでるから一緒なんですよ。」
 千春はケラケラと笑いながらファラスカに答える。

「でも・・・女神様が本当にいらっしゃると言う事は・・・。」
「別に教会へ言う必要は無いと思うわよ?」
「ハル様・・・でも、居ない神を信仰し、実在する神を蔑ろにするなんて。」
 悲し気に答えるファラスカ。

「アイトネー、こっちにアイトネの教会作るの有り?」
『どっちでもいいわ~♪あっちで沢山信仰してもらってるもの~♪』
「そりゃぁあんだけポンポン王都で現れてたら信仰されるに決まってるじゃん。」
 シャリーのスイーツ店、そして千春の温泉旅館にちょくちょく現れ、最近は食べ歩きもしていると目撃情報を聞いていた千春が呟く。

『最近王都の子達も私見たら手を振ってくれるのよ♪』
「祈るとかじゃ無いんかーい。」
『教会の子は祈るわね。』
「アイトネがソレで良いなら良いんだけども・・・そんなにポンポン顕現して良いの?」
『良いわよ?』
「あっそ。」
 話をぶった切る千春はアイテムボックスを開く。

「ファラスカ様ジュース飲みます?」
「じゅーす?」
「はい、甘ーい飲み物です、甘く無いのもありますけど。」
 千春はジブラロールで試験的に作り始めた炭酸ジュースを幾つか取り出す。

「こっちがファンチャモドキで、こっちはヂンヂャーエールモドキ、こっちはラムネです。」
「私ヂンヂャー飲む!」
「私はラムネかなぁ~。」
「ウチはファンチャ!」
 聞いてもいない頼子達が寄って来ると、頼子はグラスを影から取り出し並べる。

「コーラ無いの?」
「買って来たヤツならあるよ。」
「うちコーラ飲む!」
「はいはい、ダイアは自分で注いでね~。」
 ペットボトルをドンと置く千春。

「チハル。」
「あ、ハルト、話終わった?」
「概ね話は出来た、あとは何処から飛ばすかなんだが。」
「今決めなくても良くない?」
「あぁそうなんだ、案としては一番近いハースだ、既に空港予定地も準備しているからな。」
「そうなんだ、それで?」
「もう1つはフリエンツ王国なんだが・・・。」
 エンハルトはそう言うとティスケリーを見る。

「フリエンツからの交易は飛行艇いらないわ。」
「え?なんで?」
「うちの身内が行くわ。」
「え“?」
「夫と義父も最近他国に行くのが楽しいみたいなのよ。」
「へぇ~、なんで?」
「チハルちゃんの料理に決まってるでしょ。」
「あ、ごめんなさい。」
「なんで謝るのよ。」
「なんとなく。」
「それは置いといて、この国にもチハルちゃんの料理が広まるなら喜んで来るわよ。」
「おぉー!それは広めないとだー。」
「広めるつもりでしょ?」
「そりゃ遊びに来て食べ歩きしたいし。」
「ま、そう言う事よ。」
 ティスケリーは話しが終わったと言わんばかりに背を向けスイーツを食べ始める。

「そう言う事だ。」
「それじゃハースから飛行艇出す感じ?」
「だな、ただ・・・。」
「ただ?」
「その航路はあそこ通るんだよ。」
「あそこって?」
「湖の上だ。」
「・・・あー、ドラゴン達が無駄について来るかも?」
「その通りだ。」
「通らないように行けば?」
「ヒスイとフローラの話では絶対に気付くそうだ。」
 エンハルトの言葉に頷くヒスイとフローラ。

「ま、いんじゃない?」
「・・・そうだな、今更か。」
 気楽に言う千春に釣られ笑みを浮かべるエンハルト。

「あとは明日の話なんだが。」
「うん。」
「セルフ卿も一緒に話をしたいと言っている。」
「いんじゃない?」
「良いのか?」
「どうせ私聞いても良く分かんないし。」
「そうだなぁ分からないだろうなぁ。」
「・・・人に言われるとちょっと凹む。」
 ショボンとする千春に思わず吹き出すエンハルト。

「はっはっは、それじゃ分かるヤツ連れて来るか。」
「え?」
「フェアリーリング作れるんだろう?」
「作れると思うよ?」
 ノーク瓜の砂糖煮を食べているリリとクゥクゥを見ながら答える千春。

「で?誰連れて来るの?」
「そりゃぁ商業ギルドのメイソンだ。」
「マジで?」
「面倒な話も全部解決するぞ?」
「うん!呼ぼう!全部任せよう!」
「それにチハル、孤児院も作るつもりだろう?」
「うん。」
「ジブラロールで孤児院を運営してるのもメイソンだろう。」
「・・・最強じゃんメイソンさん。」
 全てを任せるつもりの千春はニッコリ微笑む。

「呼ぶのは明日だ、今日はのんびり過ごさせてもらおうか。」
「そうだね。」
 エンハルトと千春の話が終わった所で執事のルグラスが声を掛けて来る。

「エンハルト王子殿下、チハル王女殿下、皆様のお部屋の準備が出来ております。」
「有難うございま~す!」
 ロマンスグレーイケオジのルグラスはニコッと微笑みながらお辞儀をする。

「うちのペット達は?」
「ルプ様で御座いますか?」
「はい。」
「別室で、その、宴会を。」
「うん、平常運転!・・・そういえばロイロは・・・。」
 千春が呟くとサフィーナが答える。

「帰って来た報告は受けてませんね。」
「何してんだろう、大丈夫かな。」
「ロイロさんにその心配は必要?」
「だってー知らない土地だし、一応女の子だし。」
「その前にドラゴンですよ?」
「・・・そだね。」
 千春はスンと真顔になりサフィーナに答えると立ち上がる。

「さ、お部屋に行きますかー!」
「あーいよ!」
「チハル、お菓子ある?」
「あるけどまだ食べるの!?」
「お菓子は別腹でしょ。」
「知らないよ?ビンドル先生に怒られるよ?」
「「「「やばっ!」」」」
 皆はキャッキャと騒ぎながらルグラスに案内され部屋に向かった。


------------------


「もうギブアップかぁ~?」
 ロイロはジョッキを片手に男達へ声を掛ける。

「あ・・・姐さん。」
「なんじゃぁ~♪」
「もう・・・無理っす・・・うっぷ。」
「だらしないのぅ~・・・グビグビッ!」
 ジョッキの酒を一気に飲み干すと、プハァァ!と息を吐くロイロ。

「それじゃぁ儂の勝ちじゃな!」
「酒勝負しなくても姐さん勝ってたじゃないっすか。」
 大柄な男は苦笑いで答える。

「まぁそうじゃがな!がっはっはっは!」
「こんな美人がそんな笑い方・・・。」
「いや、見た目はこうだが中身ドラゴンだぞ。」
「正体がドラゴンでもいい、俺は姐さんに付いて行く。」
「俺もだ・・・。」
「踏んでほしい・・・。」
 子分達は大柄な男の後ろから呟く。

「それじゃぁ儂がこのギルドのボスじゃな♪」
「その・・・ロイロの姐さん、ボスになって何をするんですか?」
 大柄な男が問いかける。

「ん・・・なんじゃったかな?」
「え?」
「あ~、詳しい者を連れて来る、そいつから聞け。」
「はい・・・え?」
「ソリダス・・・いや、セルフィンの方が良いかのぅ~・・・ユーリン連れてきたらチハルに怒られるじゃろうなぁ~。」
 ブツブツと呟くロイロ、男達は考え事をする酔ったロイロを見つめながら溜息を吐いた。




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