上 下
732 / 744

港町ルジイタを探索だぁ!

しおりを挟む
「ファーノ君!次野菜見たい!」
「はい、こちらですチハルお嬢。」
「お嬢ってやめない?」
「え?何でッスか?」
 ケモ耳をピコピコと動かしながら答える獣人ファーノ。

「テノボ君、これなにー?」
「それか?ソレはエイの干物だぞ。」
「へぇ~・・・不味そう。」
 頼子はファーノの連れ、人族のテノボに色々と聞きながら物色していた。

「チハル、アレじゃん?」
 青空は向かっている先の露店に並べられた野菜を指差す。

「ソラお嬢、あんまり離れたらヤバいっスから。」
「そうなの?」
「可愛い女の子が1人で歩いてたら攫われるっスよ。」
「可愛い?」
「はい、可愛いっす。」
「んふうふ~♪ごめんね~彼氏いるから~♪」
「でしょうねー、こんなに可愛いなら男が黙って無いっスよ。」
 デヘヘと笑う青空に軽く受け流すファーノ。

「・・・ん。」
「どうしました?チハルお嬢。」
「あの子達・・・。」
「あーあっちは行ったらダメっスよ。」
「・・・スラム的な?」
「はい。」
「そっかぁ・・・子供達の受け入れとか無いの?」
「教会っスか?」
「あ、教会あるんだ、神様は誰なの?」
「ランスルーセンって言う神様っス。」
「へー。」
「大昔にこの大陸に国を作った英雄神っス。」
「おぉ~、偉い人なんだ。」
「ま、信仰してんのは国の偉いヤツらだけっスけどね。」
「で?孤児院とかは?」
「無いっスね。」
「・・・。」
 千春はチラッとエンハルトを見ると苦笑いで横に首を振る。

「ダメ?」
「ダメって事は無いが、違う国の事だからな。」
「ギリギリセーフ?」
「ん~、まぁ例のお金が有れば5~6か所は作れるだろうが、管理がなぁ。」
「そっかぁ・・・。」
 子供達はボロボロの服を着て人込みを見ている。

「あの子達なにやってんだろ。」
「隙が有るヤツ狙ってるっス。」
「・・・スリ?」
「はい。」
「詳しいね、ファーノ君。」
「俺達そっち側っスから。」
「あ、そうなんだね。」
「そうっス・・・ってチハルお嬢怖くないんっスか?」
「何が?」
「俺達と普通に話ししてるっスよね。」
「うん、ファーノ君良い人だよね。」
「・・・初めて言われたっス。」
 照れながら答えるファーノ。

「チハルみてみてー!星形の野菜ー!」
 大愛が珍しい野菜を見つけ千春に見せる。

「わぁお、みんなさっき渡したお金全部使っちゃっていいからバンバン買って良いよ。」
「マ?」
「うん、ヨリとレナとダイア、影収納しといて。」
「「「りょ~。」」」
 3手に分かれ皆は楽し気に買い物を始める。

「ロイロ~。」
「・・・ま~た厄介事考えておるじゃろ。」
「だってぇ~。」
「チハルらしいっちゃらしいがのぅ。」
「しょうがねぇだろ、千春の性分だ諦めろ。」
 ロイロは溜息を吐きながら答えると、ルプは笑いながらロイロを見る。

「テノボ、ボスは何処じゃ。」
「え!?」
「ボスの所へ連れていけ。」
 ロイロはテノボに言うとドラゴンに変化する。

「うぉああああ!!!ドラゴン!?」
『ほれ、背に乗れ。』
「うぉ!言葉が判るのか!?」
『儂が翻訳魔道具を身に付けておるからな。』
「ロイロ、どこ行くの?」
『ここの犯罪ギルドに挨拶してくるだけじゃ。』
「あの子達に関係する?」
『うむ、チハルは安心して買い物をしてくればいい。』
 ロイロはそう言うと翼を広げ地面を蹴り飛んで行った。

「・・・大丈夫かな。」
「ロイロにその心配は要らないだろ。」
 ルプは笑みを浮かべ答える。

「チハル。」
「なに?ハルト。」
「明日、ドココが来るって言ってただろ。」
「うん。」
「管理させるか?」
「!」
「決まりだな。」
「いいの?!」
「どうせまたちょくちょく来るんだろ?」
「そのつもり~♪」
「飛空艇を1便大陸に向かわせるか。」
「マ!?」
「その為の準備は必要だがな。」
「準備?」
「あぁ、空港や飛空艇の護衛やら、色々な。」
「あー護衛も居るのかー。」
「そこは心配しなくても良いぞ、ヒマそうなドラゴンが増えたからな。」
 パパドラにもれなく付いて来た暇潰しドラゴン達数頭を思い出しながら千春は笑みを浮かべる。

「それじゃあの子達どうにかなりそう?」
「大丈夫だろ、その為にロイロも動いたんだ。」
「そっか、そっか~♪」
 もう一度子供達を見る千春。

「チハルお嬢・・・。」
「なに?」
「ロイロの姐さん・・・ドラゴンなんっすか!?」
「え?ボコボコにされたんでしょ?」
「人間の姿でしたよ!?」
「あ、ドラゴン姿でボコボコにされたのかと思った。」
「いやいやいや!あの姿で出て来られたら逃げますって!」
「そりゃそうだwww」
 ゲラゲラと笑う千春。

「チハルお嬢って何者っスか?」
「私?普通の女子高生だよ♪」
「ジョシコウセイ?」
「ジェーケーだよジェーケー!」
「チハル、分かるわけ無いだろ。」
 思わず突っ込むエンハルト。

「ハルトの兄さん、教えてくださいっス!」
「あ~・・・何処まで教えて良いんだ?」
「隠す必要なくない?」
 ハルトに聞かれ千春はサフィーナを見る。

「そうですね、ロイロさんも犯罪ギルドで言うでしょうし問題無いでしょう。」
「はい!サフィーママから許可出たので教えましょう!」
 千春はそう言うとファーノを見る、すると横からモリアンがドヤ顔で話始める。

「ジブラロール第一王女で~♪エンハルト殿下の許嫁で~♪聖女軍団のリーダーで~♪聖獣の主で~す♪」
「・・・は?」
 ファーノは何言ってんだコイツと言う目でモリアンを見る。

「盛り過ぎだろお前。」
「お前って!失礼ですよ!私にはモリアンと言う名前があるんですぅ~!」
「は?お前はお前だろ!メイドのくせに偉そうだな。」
「メイドじゃありません!侍女ですぅ~!」
「はぁ!?お前みたいなのが侍女ぉ?こっちの姉さん達ならまだしも!」
 ファーノは落ち着いて話を聞いているサフィーナとサリナ、ナッテリーを見る。

「本当ですよ?」
 サフィーナが言うとファーノはピタリと止まり千春を見る。

「いぇ~い♪」
 Vサインでファーノを見る千春。

「マジっスか?」
「マジっす♪」
 ピスピスとVサインでニコニコの千春、ファーノは地面に両足を突き土下座する。

「すいませんっしたぁぁぁぁあ!」
「いやいや、大丈夫だって!こっちの国では普通の女の子だから!」
「いやいやいやいや!聖女とか言ってたっすよ!?」
「こっちも聖女居るの?」
「はい!居るっす!」
「え?!そうなの?!アイトネー!」
『なに~?』
「こっちも聖女居るの?」
『居ないわよ、この子が言ってるのは聖女として祭り上げてる子が居るって事よ。』
「あ、そう言う事か。」
「・・・チハルお嬢・・・この方・・・誰?」
「コレ?アイトネだよ、この星・・・この世界の女神様、一番偉い人だよ。」
「・・・。」

バタン

「あ、倒れた。」
『あらら~。』
「アイトネ、らんすなんちゃら教って知ってる?」
『この国を建国した者の教会ね。』
「神様なの?」
『違うわよ?』
「英雄だったんでしょ?」
『・・・アレが?』
「知ってるの?」
『一応知ってるわ、国を作って好き放題やって女性達に刺されて死んだわよ。』
「うわぁ・・・。」
『今の王はその血筋だけど、その子はいい子よ?』
「そりゃ良かった、交易しても大丈夫そ?」
『えぇ、チハルの船に手を出したら天罰落ちる様にしましょうか?』
「・・・うん、それは有難いかも。」
『おっけー♪』
「いいの?そう言う事して。」
『条件付ければオッケー♪』
「条件?」
『船首に私の船首像付けてくれたら良いわ♪』
「飛行艇全部に付けよう、ね、ハルト。」
「そうだな。」
 千春とアイトネの話を聞いて笑い続けていたエンハルトは笑いを堪えながら答えた。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幸子ばあさんの異世界ご飯

雨夜りょう
ファンタジー
「幸子さん、異世界に行ってはくれませんか」 伏見幸子、享年88歳。家族に見守られ天寿を全うしたはずだったのに、目の前の男は突然異世界に行けというではないか。 食文化を発展させてほしいと懇願され、幸子は異世界に行くことを決意する。

転生王女は現代知識で無双する

紫苑
ファンタジー
普通に働き、生活していた28歳。 突然異世界に転生してしまった。 定番になった異世界転生のお話。 仲良し家族に愛されながら転生を隠しもせず前世で培ったアニメチート魔法や知識で色んな事に首を突っ込んでいく王女レイチェル。 見た目は子供、頭脳は大人。 現代日本ってあらゆる事が自由で、教育水準は高いし平和だったんだと実感しながら頑張って生きていくそんなお話です。 魔法、亜人、奴隷、農業、畜産業など色んな話が出てきます。 伏線回収は後の方になるので最初はわからない事が多いと思いますが、ぜひ最後まで読んでくださると嬉しいです。 読んでくれる皆さまに心から感謝です。

転生少女の異世界のんびり生活 ~飯屋の娘は、おいしいごはんを食べてほしい~

明里 和樹
ファンタジー
日本人として生きた記憶を持つ、とあるご飯屋さんの娘デリシャ。この中世ヨーロッパ風ファンタジーな異世界で、なんとかおいしいごはんを作ろうとがんばる、そんな彼女のほのぼのとした日常のお話。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?

水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが… 私が平民だとどこで知ったのですか?

ドアマットヒロインはごめん被るので、元凶を蹴落とすことにした

月白ヤトヒコ
ファンタジー
お母様が亡くなった。 それから程なくして―――― お父様が屋敷に見知らぬ母子を連れて来た。 「はじめまして! あなたが、あたしのおねえちゃんになるの?」 にっこりとわたくしを見やるその瞳と髪は、お父様とそっくりな色をしている。 「わ~、おねえちゃんキレイなブローチしてるのね! いいなぁ」 そう、新しい妹? が、言った瞬間・・・ 頭の中を、凄まじい情報が巡った。 これ、なんでも奪って行く異母妹と家族に虐げられるドアマット主人公の話じゃね? ドアマットヒロイン……物語の主人公としての、奪われる人生の、最初の一手。 だから、わたしは・・・よし、とりあえず馬鹿なことを言い出したこのアホをぶん殴っておこう。 ドアマットヒロインはごめん被るので、これからビシバシ躾けてやるか。 ついでに、「政略に使うための駒として娘を必要とし、そのついでに母親を、娘の世話係としてただで扱き使える女として連れて来たものかと」 そう言って、ヒロインのクズ親父と異母妹の母親との間に亀裂を入れることにする。 フハハハハハハハ! これで、異母妹の母親とこの男が仲良くわたしを虐げることはないだろう。ドアマットフラグを一つ折ってやったわっ! うん? ドアマットヒロインを拾って溺愛するヒーローはどうなったかって? そんなの知らん。 設定はふわっと。

大聖女の姉と大聖者の兄の元に生まれた良くも悪くも普通の姫君、二人の絞りカスだと影で嘲笑されていたが実は一番神に祝福された存在だと発覚する。

下菊みこと
ファンタジー
絞りカスと言われて傷付き続けた姫君、それでも姉と兄が好きらしい。 ティモールとマルタは父王に詰め寄られる。結界と祝福が弱まっていると。しかしそれは当然だった。本当に神から愛されているのは、大聖女のマルタでも大聖者のティモールでもなく、平凡な妹リリィなのだから。 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...