上 下
542 / 744

ドワーフのダンジョンで蟻乱獲の巻!

しおりを挟む
「ぎゃぁぁ!!!!」
「ちょぉぉぉ!!!!まってまって!」
「またきたぁぁ!!!」
 千春達は阿鼻叫喚で逃げ回る。

「ルプ、まとめてヤレるか?」
「任せろ。」
 ロイロに答えるルプは風の魔法でムカデの大群を吹き飛ばす。

「アレは食べれんばいねー。」
「食べれても食べたくないです。」
 ビェリーとコンは戦闘モードの姿でルプの後ろから呟く。

「チハル、まだ上層だぞ?」
「だってぇぇ!でっかいムカデとか聞いてない!」
「まぁ俺も聞いてないが、ルプ達が倒してくれているから大丈夫だろ?」
「そう言う問題じゃないんだよぉ・・・。」
 泣きそうに言う千春、頼子達も無言で頷く。

「ガリウス殿、次の道はどちらで?」
 アリンハンドが問うとガリウスは道を示す。

「この先を右に曲がると中層に入る階段が有ります。」
「だそうですよ?」
「早く行こ!洞窟エリア怖い!」
「次は森エリアだよね?」
「森かぁ・・・森も良い思い出ないんだよなぁ。」
 ジブラロールにあるダンジョンの森エリアのムシムシ軍団を思い出す頼子。

「ココよりマシっしょ!」
 千春はそう言うとルプの後ろにぴったりくっつき歩く、そして中層に入った。


---------------


「ココから中層エリアで魔物の種類も変わります。」
「はぁ、ムカデもう出ない?」
「・・・いえ、多分居ると思いますが。」
「ロイロ!飛んで行こう!」
「別に構わんが、他の魔物は狩らぬのか?」
「他の魔物?」
「うむ、直ぐ近くに虫ではない魔物がおるぞ?」
 ロイロは探知魔法で見つけた魔物を指差す。

「どれだろ。」
「あ!アレじゃん?」
 木々の隙間から見える魔物を指差す麗奈。

「あ!ワンコ!」
「・・・首2つあるじょ?」
「おーケルベロス!」
「ミオ、ケルベロスって3つじゃん?」
「2つはなに?」
「えっとー・・・・・・オルトロスだって。」
 スマホで首2つの犬で検索する麗奈。

「あれはルビノリドと言う魔物です。」
「あ、屋台で見た肉だ。」
「って事は食べれるんだ。」
「美味しいんですか?」
 青空がガリウスに聞くと、苦笑いで答える。

「はい、あんまり美味しくないっぽいでーす。」
 青空が答えていると、ルビノリドと言われた2首犬が襲い掛かって来る。

「うりゃ。」
 頼子は影収納でルビノリドを落とす。

「ナイスヨリ。」
「単純な移動してくれたら楽だねぇ~。」
「そう言えば上層に居た冒険者は中層に来ないんですか?」
 大愛はふと思いガリウスに聞く。

「あまり来ませんね、ダンジョンは資源回収場ですが中層や下層まで行くと持って帰るのが大変なんです。」
「そりゃそうだ。」
「それに上層で魔石や甲虫の外装、チャクスや先程のムカデと言われていたドシクリが取れますから。」
「そっかぁ、ロイロこのエリアに冒険者居る?」
「数人感知しておるぞ、森の奥じゃな。」
「そっか、それじゃ焼き払うのはダメだね。」
「冒険者が居なくてもそれはダメじゃろ。」
 ロイロが突っ込むが千春はスルーし箒を取り出す、頼子達も箒や杖を取り出し跨る。

「ガリウスさん下層まで一気に行きたいので道案内お願いしまーす!」
「わかりました。」
 ロイロはドラゴンになり、皆は森を飛んで進む、そして下層へ行く道を一気に駆け下り次の階層もスルーしていく。

「この先が下層エリアになります。」
 ガリウスは説明をするが、何故か苦笑いだ。

「ガリウス殿どうされました?」
 アリンハンドがガリウスに問いかける。

「いえ、ココまで来るのに通常でしたら早くても3~4日掛かります、自分もここまで来るのは2度目、この先には1度しか入っていません。」
「あ~、ここまで2時間掛かってませんからね。」
 説明を聞いたアリンハンドも笑いで返す。

「さ!ここからが本番だぁ!」
「ガッツリ捕まえるぜー!」
「うちらは何したら良いん?」
「後ろで応援でしょ。」
「応援任せろ!」
 アイテムボックスと影収納が出来ない青空達が何故か気合を入れる。

「で・・・思ったよりも狭いんですけどー。」
 1~3階層までの洞窟エリアの様な岩肌、そして湿った空気に千春が嫌そうに呟く。

「蟻の巣エリアって言ってましたね。」
 アリンハンドは壁を触りながら呟く。

「ルプ、気配ある?」
「あぁ所々にあるな、この先に大きな分岐がある、そこにまず行くとするか。」
 ルプはそう言うとテクテク歩き始める。

「ん~うじゃうじゃおるばい。」
「ビェリー、何処に居るか分かる?」
「この先におるばい。」
「沢山いますねー。」
 ビェリーとコンも同じ様に気配を感じ伝える、そして分岐の所でルプが止まる。

「ココだな。」
「ここ蟻の通路やね。」
 ビェリーは5つに分かれた分岐の一つを見ながら影の落とし穴を作る。

「ヨリ、そこに匂いの有るもんおいてくれん?」
「匂い?えっと~、生ものは千春に渡してるんだよね、千春なんか出して。」
「ほいよ、匂いなら魚で良いかな。」
 千春は調理で余った魚のアラを影の手前にボタボタ落とす、すると奥からザワザワと音が聞こえ始める。

「ちょ、蟻?」
「あぁ、今風魔法で匂いをその通路に送ったからな。」
 ルプは通路を見ながら千春に答える、すると大きな蟻がワラワラと出て来る、そしてビェリーの作った落とし穴に面白い様に落ちて行く。

「うわぁ入れ食い?」
「すっご、こんなに居るの?」
 軽く20匹程の蟻が続けて落ちて行く。

「簡単だね。」
「この要領で捕まえて行くばい!」
「うぃーっす。」
 ロイロとルプ達の探知で道を探り次々と蟻を捕獲していく。

「うん、私達する事無いね。」
「もっと冒険者っぽい事すると思ってたよ。」
「応援すらしてねぇ。」
 暫く進み、また捕まえる、それを続けているとルプが一つの通路を見る。

「・・・女王蟻か?」
「魔力は有るがどうじゃろうな。」
「ダンジョンマスターはもっと下層でしょうから、そうかもしれませんね。」
「いってみりゃ分かるんやない?」
「そうだな。」
 ルプはその通路に向かい歩いて行く、そして開けた場所に到着した。

「うわぁ!すごぉぉぉ!」
「うわぁ!キモぉぉぉ!」
「卵だぁ!」
「え?コレ全部卵?」
「蟻の卵って事?」
「やば!気付かれたんじゃん?!」
 部屋に入るなり真っ白な卵が並んでいた、その卵は小さく野球ボールを長細くしたような形だ。

「チハル、蟻回収だ。」
「うぃー!サフィーいくよー!」
「はい!」
 千春とサフィーナはアイテムボックスで近づく蟻を片っ端から捕獲する、ビェリー、頼子、麗奈も影収納で蟻を捕獲し近づく蟻は全て回収した。

「女王蟻はどれだったのかな?」
「女王蟻はアレだろ。」
「どれ?」
 ルプが見る方を千春がのぞき込むと、人の子供ほどの蟻がプルプルと震えていた。

「・・・え?アレ?」
「だろ?」
「ちっちゃいよ?」
「ちっちゃいな。」
「生まれたての蟻じゃ無く?」
「あぁ、魔力の量が違うのぅ、アレが女王蟻じゃなぁ。」
 千春はプルプル震える女王蟻を見る。

「えっと・・・えぇ~?こんなビビられても困るぅ。」
「王冠とか付けてないんだね。」
「ミオ、漫画の見過ぎ。」
「そりゃそうだ。」
「近寄っても大丈夫?」
「儂の魔法を掛けておる、噛まれても大丈夫じゃ。」
 ロイロに言われ千春達は女王蟻に近付く。

「女王蟻ちゃん、言葉分かる?・・・ってわかるわけないか、レナ、分からない?」
「ん~、アミみたいに話しかけられたらワンチャン分かるかもだけど。」
 麗奈はそう言うと女王蟻に話しかける。

「言葉わかる?」
 女王蟻はそのままプルプル震えるだけで動かない。

「・・・ん!ダメだね!」
「そっか、どうしよ。」
「ん~、駆逐するつもり無いしこの子は放置で良いんじゃない?」
「そだね、十分捕まえたし。」
「ねぇ、この子連れてったら蟻養殖出来ないかな。」
「えぇ~?何処に連れてくの?」
「ジブラロールのダンジョンとか?」
「えぇ~?この子一匹じゃ卵の世話とか出来ないんじゃん?」
「あ、んじゃ私とサフィーが捕まえた蟻とこの子、あと卵持って帰る?」
「イイネ!ってこのダンジョンの蟻ってどうなるの?」
 頼子はアリンハンドを見る。

「多分ですが、ダンジョンマスターがまた沸かせると思いますよ。」
「ほう・・・ん?って事はジブラロールのダンジョンマスターって蟻湧かせれる?」
「どうでしょうか、聞いてみないと分かりませんね。」
 千春とアリンハンドの話を聞き美桜が手をポンと打つ。

「レミちゃんにお願いすれば良いのか!」
「蟻湧きエリア作ってもらえば蟻食い放題!」
「なんかヤだなその言い方。」
「蟻食い放題って・・・きしょい。」
「美味しいじゃん?」
「確かに。」
「んじゃ取り敢えず・・・この子は捕獲しとこう。」
 プルプル震える女王蟻を千春はアイテムボックスに落とす。

「チハルぅ。」
「何?ヒマリ。」
「はたから見てると鬼の所業やで?」
「・・・うん、私もちょっと罪悪感駆られた、ま、やっちまったもんはしゃーない!帰ろうか!」
「帰るのか?」
 エンハルトが千春に問いかける。

「え?うん、用事終わりだよね?」
「てっきりダンジョンマスターの所まで行くかと思ってたからな。」
「あー、いや、ダンマスに用事無いし、アイトネに聞いたらダンマスも虫らしいからね。」
「虫のダンマスかー、どんな虫なんだろ。」
「最強の虫じゃん?」
「その最強って何って話じゃん?」
「最強・・・カブトムシ!」
「クワガタだろ!」
「えー!アレ!スズメバチ的な!」
「それって軍隊蜂のアミじゃん?」
「最恐・・・ごきb「帰ろう!」」
「「「「帰ろう!」」」」
 頼子のごきb発言で全員が帰る選択肢を選び、皆は一気にダンジョンを駆け上った。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幸子ばあさんの異世界ご飯

雨夜りょう
ファンタジー
「幸子さん、異世界に行ってはくれませんか」 伏見幸子、享年88歳。家族に見守られ天寿を全うしたはずだったのに、目の前の男は突然異世界に行けというではないか。 食文化を発展させてほしいと懇願され、幸子は異世界に行くことを決意する。

転生王女は現代知識で無双する

紫苑
ファンタジー
普通に働き、生活していた28歳。 突然異世界に転生してしまった。 定番になった異世界転生のお話。 仲良し家族に愛されながら転生を隠しもせず前世で培ったアニメチート魔法や知識で色んな事に首を突っ込んでいく王女レイチェル。 見た目は子供、頭脳は大人。 現代日本ってあらゆる事が自由で、教育水準は高いし平和だったんだと実感しながら頑張って生きていくそんなお話です。 魔法、亜人、奴隷、農業、畜産業など色んな話が出てきます。 伏線回収は後の方になるので最初はわからない事が多いと思いますが、ぜひ最後まで読んでくださると嬉しいです。 読んでくれる皆さまに心から感謝です。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

転生少女の異世界のんびり生活 ~飯屋の娘は、おいしいごはんを食べてほしい~

明里 和樹
ファンタジー
日本人として生きた記憶を持つ、とあるご飯屋さんの娘デリシャ。この中世ヨーロッパ風ファンタジーな異世界で、なんとかおいしいごはんを作ろうとがんばる、そんな彼女のほのぼのとした日常のお話。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?

水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが… 私が平民だとどこで知ったのですか?

大聖女の姉と大聖者の兄の元に生まれた良くも悪くも普通の姫君、二人の絞りカスだと影で嘲笑されていたが実は一番神に祝福された存在だと発覚する。

下菊みこと
ファンタジー
絞りカスと言われて傷付き続けた姫君、それでも姉と兄が好きらしい。 ティモールとマルタは父王に詰め寄られる。結界と祝福が弱まっていると。しかしそれは当然だった。本当に神から愛されているのは、大聖女のマルタでも大聖者のティモールでもなく、平凡な妹リリィなのだから。 小説家になろう様でも投稿しています。

聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!

伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。 いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。 衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!! パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。  *表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*  ー(*)のマークはRシーンがあります。ー  少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。  ホットランキング 1位(2021.10.17)  ファンタジーランキング1位(2021.10.17)  小説ランキング 1位(2021.10.17)  ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。

処理中です...