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チチルメイドになる!

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「何処の屋敷も大きいなぁ。」
 窓から見える風景を見ながら千春が呟く。

「ここ一帯は位の高いエリアになりますので尚の事豪華なのです。」
 ヤーテは楽しそうに外を見る千春に説明する。

「お嬢様ぁ、敬語になってますわよぉ?」
「無茶言わないで下さい、急に変えれませんわ。」
 苦笑いで答えるヤーテ、一緒についてきているクティスも苦笑いだ。

「そう言えば何処のお茶会に行くの?」
「ダグーレン侯爵家ですわ。」
「ヘェ~。」
「確かユラ様のご友人がいらっしゃいましたわ。」
「ユラ?誰だろ、イーレンちゃんはゴールマン伯爵だったよね。」
「ケンブリットではありませんか?」
「あー!ケン君か!ケン君も居るのかな?」
「今日は令嬢しか集まりませんから。」
 程なくゴールマン家へ到着する馬車、千春はクティスと一緒にメイドの仕事をする。

「それでは行きましょう。」
 ヤーテはそう言うと2人を連れ会場へ行く。

「ごきげんようヤーテ。」
「ごきげんようテールキ、フランシス様は?」
「イノニス様にご挨拶されてますわ。」
 バンドレ伯爵家令嬢のテールキは微笑みながら答える、そしてクティスと千春を見る。

「メイド変わりましたの?」
「・・・ちょっとね。」
 困り顔で答えるヤーテ、テールキは千春を見ながら話しかける。

「どちらかでお会いした事ありましたでしょうか?」
「気のせいでは?」
 ニッコリ微笑み飄々と答える千春。

「お名前は?」
「・・・チチルです。」
 普段呼ばれるチハルのイントネーションを変えながら答える千春、そしてフランシスが戻ってきた。

「ヤーテ、ごきげんよう・・・え?」
 フランシスはヤーテの後ろにいる千春を見る。

「・・・えーーーー!!!!」
「フランシス様!」
 物凄く驚くフランシスに声を掛け落ち着かせるヤーテ。

「チ、チハr・・・。」
「しーーー!!!」
「え?チハルs・・・。」
 必死で口元に指を当て止める千春とヤーテ。

「何をされてますの!?(ボソッ)」
「ヤーテちゃんのメイド。」
「意味がわかりませんの、ヤーテどう言う事なの?」
「それがー・・・。」
 ヤーテは困り果て、千春を見る。

「えっとねー、かくかくしかじかだよ。」
「チハル様、前もそれ言われてましたね、護衛は?」
 キョロキョロと周りを見回すフランシス。

「いないよ?お忍びソロ活動だから、あと私の事はチチルって呼んでね。」
 ケラケラと笑いながら言う千春にため息を吐くフランシス。

「わたくしの護衛を付けます、チハル様は一緒に行動して下さい。」
「えー、別に良いよー。」
「ダメです、何かあったらどうするんですか。」
「大丈夫だよ、いざとなればアイトネ呼ぶし。」
 千春はそう言うとキョロキョロ見回す。

「あれ?」
「どうされました?」
「いや、いつもなら、呼んだ~?って来るのに。」
 千春は心の中でアイトネに話しかける。

(アイトネー・・・アイトネさーん・・・アイちゃーん・・・エクレアあるよー?・・・)
「ヤバ、アイトネ居ない。」
(モートさーん?)
「・・・モートさんも不在かぁぁ!」
 アイトネは日本に、モートは冥界に出かけて不在だった。

「ま、大丈夫っしょ。」
「・・・ヤーテ、お茶会は挨拶終わったら抜けましょう。」
「そうですわね。」
「護衛いるんでしょ?大丈夫だよー。」
 呑気に言う千春、すると離れた所で歓声が上がる。

「何かしら?」
 ヤーテは声の上がる方を見る、フランシスは聞いていた話を伝える。

「イノニスさんが言っていたサプライズでしょうね。」
 令嬢3人と千春が見ていると、見慣れた侍女と千春が現れる。

「え?」
「チハル王女殿下!?」
「・・・。」
 現れた王女殿下一行にヤーテとテールキは驚きと惑う、フランシスは困り顔だ、そして千春の方を見ると、千春はダッシュで逃げる所だった。

「チハ、チチルさん!!!」
「え!待ってくださいまし!」
「ええええ!!」
 3人は急な出来事に何も出来ず、逃げるを見送る事しか出来なかった。

「・・・ヤーテ、テールキ、チハ・・・チチルさんの事は内密に、今いらっしゃる王女殿下にはチハル様として話す事、良いですね。」
「はい。」
「はい。」
 察したフランシスは護衛に千春を追って護衛するように伝えると、代役の千春へ挨拶に動いた。


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「やばかったぁ!」
 千春は館から出ると、そのまま箒を取り出し王都まで隠れながら飛んで逃げた。

「はて、ここは何処じゃい。」
 キョロキョロと周りを見る千春、城は見えるが王都は広く、千春がいつも買い物をするメインの通りでは無い。

「空から見たらわかるけど、見つかったらヤバいかな。」
 箒をアイテムボックスに放り込み、小さな道を歩く千春、路上ではシートを敷いた物売りが並んでいた。

「わ~色々ある~♪」
 物珍しさに千春はしゃがみ込み商品を見て回る、すると2人の男性が千春に声を掛けて来た。

「嬢ちゃんどこの子だ?」
「迷子か?」
 人相の悪い男2人はニヤニヤしながら話しかけて来る。

「えっとー、迷子っちゃー迷子ですけど、お城が見えるので大丈夫です。」
 いざとなれば空から戻れる千春は平然と答える。

「ココは治安がいいとは言えないからな、遊ぶならあっちの通りにしな。」
「そうだぞ、お前くらい可愛い子は攫われちまうぞ?」
「可愛い?」
「あぁ可愛い。」
「えへへ。」
「ほら、あっちの通りに行きな。」
「はーい。」
 男達は手をぺっぺっと振り千春を追いやる、千春は手を振り返しながらも露店を見つつ大通りに向かった。


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「サリナさん。」
 フランシスは千春に化けたノースの護衛兼侍女のサリナに声を掛ける。

「フランシス様。」
 サリナはペコリと頭を下げノースを見る、本来ならば先に千春の代役ノースに声を掛けるべきだ、そして自分に声を掛けて来たフランシスに近寄る。

「如何なさいましたか?」
「チハル様が王宮を抜け出し今しがたこちらに居ました。」
 サリナは目を見開く。

「それで、今は?」
「王女殿下一行を見た瞬間逃げられました。」
「・・・。」
 事情を知っていたフランシスはこっそり説明する。

「有難うございます、因みにどんな格好でしたでしょうか。」
「ヤーテの家でメイド服に着替え、目元を強調したメイクをしています、髪の毛は茶色です。」
「分りました、有難うございます。」
 フランシスは千春の身を案じ、サリナに伝える、サリナは魔法道具で素早く連絡をする。

「サフィーナ様。」
『どうしたの?』
「チハル様がお戻りになり、メイド服、茶色のウィッグ、目元を化粧して1人で王都を探索しております。」
『直ぐに捕まえて。』
「現在逃げているとの事です。」
『・・・何故逃げるのかしら。』
「多分・・・怒られるからだと。」
『逃げた方が怒られるでしょうに、サリナはそのままノースの警護を、あとはこちらで手配するわ。』
 サフィーナはそう言うと通信を切った、サリナは通信が切れたのを確認すると、クスッと笑う。

「怒られるから逃げるなんて・・・子供みたい。」
 サリナの呟きを聞いたフランシスもクスクス笑う。

「楽しそうでしたわよ。」
「でしょうね、後で皆に叱られると分かってるのに。」
 マルグリット、エンハルト、そしてサフィーナに物凄く怒られる姿を想像するサリナとフランシスは目が合いまた笑う。

「大丈夫でしょうか。」
 ふと素に戻るフランシス。

「滅多な事は起きませんよ、ああ見えてチハル様は自衛も出来ますから。」
 サリナはそう言うとノースの護衛を続けた。



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