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カエル料理を普及させましょう!

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「チハルちゃーん。」
「おかえりユーリン、帰って来た所悪いけどもう一回冒険者ギルドに行ってもらって良い?」
「ん?どうしたの?」
「冒険者ギルドマスターを呼んできて欲しいんだよ。」
「なんで?」
「これ試食してもらいたくてね。」
 千春はそう言うと皿に乗せた唐揚げを見せる。

「唐揚げだね。」
「唐揚げね。」
 ユーリンが言うとシャルルものぞき込みながら言う。

「うん、ただ肉がアレなのよ。」
 千春が指を差す方にはカエルの解体された肉がある。

「うぇっ!カエル!?」
「チハルちゃんアレ料理したんですか!?」
「うん、食べてみて。」
「・・・チハルちゃんが作ったんなら食べるけどぉ。」
 恐るおそるユーリンは唐揚げを摘まみ口に入れる。

「・・・うんま!」
「え?!本当!?私も食べて良いですか?」
「どうぞどうぞ。」
「・・・美味しい。」
「でしょー。」
「でもこれ毒あるよね?」
「皮の部分に毒腺?袋があって皮剥いたら身の方は大丈夫なんだよ。」
「よく食べようと思ったね。」
「鑑定したら美味しいって出たからさ。」
 モグモグと2人は口を動かす。

「あ!冒険者ギルドのカエルってまだ焼却処分してないよね!?」
「うん、まだあると思う。」
「チハルちゃん、ギルマス呼ぶついでに回収してくる!」
「私も手伝う!」
 そう言うと2人は踵を返し冒険者ギルドに走って戻って行った。

「チハル、クラガン町長を連れて来たぞ。」
「はーい!」
 エンハルトが言うと千春は返事をして準備をするようにサフィーナに指示をする。

「チハル王女殿下お呼びいただき有難うございます。」
「すみません忙しい所。」
「いえいえ、それで御用と言うのは?」
「・・・ハルト言って無いの?」
「あぁ言わない方が面白いと思ってな。」
「うわぁ。」
 ニヤリと笑うエンハルト、たまにこういうお茶目な事をするのを知っている千春は苦笑いをする。

「えー、取り敢えずこちらにどうぞ。」
 テーブルに促すと、侍女達が準備をする、そしてクラガンが座ると、侍女達が唐揚げと照り焼きを並べる。

「こちらは・・・唐揚げと照り焼きで御座いますね。」
「はい、材料はアレです。」
 千春が指す方を見るクラガンは驚く。

「魔物のカエルで御座いますか!?」
「はい、皆食べてますので大丈夫ですよ。」
「町長、俺も食べている、問題無い。」
「・・・はぁ、エンハルト殿下も食べられたので御座いましたら。」
 そう言うとクラガンはナイフとフォークで唐揚げを半分に切る、そして断面を見た後口に入れる。

「!?」
「どうです?」
「美味しゅう御座います!」
 そう言うとモグモグと口を動かす、そしてすぐにもう片方も口に入れ咀嚼する。

「こっちは照り焼きです。」
「いただきます。」
 クラガンは一口サイズに切ると、迷いもなく口に入れる。

「・・・美味しいです。」
「ですよねー。」
「これはどういった調理法で?」
「普通の鳥とあまり変わりませんよ、カラアゲの方はニンニクとショウガを少し多めに入れてお酒と混ぜて30分くらい漬け込みました、照り焼きの方は酒と酢に浸けこんでマヨネーズを塗り込んで同じ様に少し漬け込みます。」
「毒の方は?」
「毒は皮の所にあるので剥げば問題無いです。」
 説明をするとクラガンは試食の照り焼きもあっという間に食べてしまった。

「これは冒険者ギルドへ直ぐに報告しなければいけません。」
「討伐の方ですか?」
「はい、処分ではなく解体の方で指示しましょう。」
「クラガン町長、今冒険者ギルドマスターを呼びに行かせてる。」
 エンハルトが言うと同じく、馬の嘶く声が聞こえた。

「チハルちゃーん呼んで来たよー。」
「どうどうどうどう!」
 ユーリンが声を上げ、一緒に乗っている大柄な男が馬を止める、ユーリンはぴょんと飛び降りる、
その後ろにはシャルルと女性が1人馬に乗りついて来ていた。

「ユーリンこちらが王女殿下か。」
「うん、チハルちゃんだよ、このおっさんがココのギルドマスター・・・名前何だっけ。」
 はて?と首を傾げるユーリンに苦笑いしながら男が挨拶をする。

「失礼しました、クレア冒険者ギルド、ギルドマスターをしているラルドと申します。」
「チハルです、チハルちゃんでも良いですよ?」
「いえ、王女殿下にちゃん付など、他の冒険者に示しが付きません。」
 大柄な男は髭面で強面だが丁寧に話す。

「ご挨拶が遅れました、クレア冒険者ギルド事務管理をしておりますノビリスと申します、以後お見知りおきを。」
 ペコリと頭を下げ挨拶をする女性。

「あ、そんなに固くならないで下さい、ジブラロールのギルマスさんも冒険者と変わらない話し方してくれるんで。」
「そうそう、ギルマスお堅く話すとチハルちゃん嫌がるから。」
「・・・そうなのか?」
「ね、チハルちゃん。」
「うん、お願いします。」
「しかし・・・。」
 ラルドは横にいる男性、エンハルトを見る。

「構わないぞ、この件に関して不敬は無い。」
「はっ、了解致しました、それでチハル様どういったご用件で?」
 了解したと言いながらも丁寧に問いかけるラルド。

「これ食べてもらいたいんです。」
「コレですか、カラアゲとテリヤキですね、クラガンも食べたのか?」
「あぁラルド、食べてみてくれ。」
 町長とギルマスは気さくに話す。

「頂こう。」
 モリアンとラルカが唐揚げと照り焼きをテーブルに置く、ノビリスの分も並べ席に促す。

「私もで御座いますか?」
「ノビリスさんも食べてみてー。」
「ノビリスちゃん、驚くよ?マジで。」
 千春とユーリンがノビリスに言うと、ラルドとノビリスはフォークに刺し口に入れる。

「美味いな。」
「美味しいです。」
「ギルマス、この肉アレだよ。」
 ユーリンはニヤニヤしながら解体されたカエルを指差す。

「な!?カエルか!?」
「ぶっ!!!!」
 驚くラルド、ノビリスは思わず吹き出す。

「だからお前ら自分でカエルを処分すると回収していたのか!」
「ぴんぽ~ん、今ならタダで貰えるでしょ。」
「・・・確かにコレは今後処分するのは考え物ですね。」
「ラルド、私の討伐依頼の変更を解体で頼む。」
「あぁ、了解した、しかし解体方法は?」
「皮に毒があるそうだ、皮を剥げば問題無いと言う事らしい。」
 クラガンは千春を見ると、千春はニッコリと頷く。

「ノビリス、直ぐに手配を、しかし金額はどうするか。」
「討伐金額はそのままでいいんじゃない?肉として卸せば回収出来るようになるってだけで。」
 ユーリンはそう言うと、モリアンの持つ皿から唐揚げを1つ貰い口に入れる。

「そうだな、ラルドそれで良いか?」
「構わない、費用が減るのは助かる。」
「っていうか売って増やせば?今までの分経費掛かってるんでしょ?」
「・・・それはそうだが、いきなりカエルの肉を買えと言って買うか?」
「商業ギルドにも試食させて売り込めば良いじゃん。」
「そうですね、そこは私が手配致します。」
 ユーリンのアイデアにノビリスが言う、そして話が進み町長とギルマス、そしてノビリス嬢は帰って行った。

「チハルちゃん、もっと食べたい!」
「私も!」
「ユーリンとシャルルには頑張ってもらったから好きなだけ食べて良いよー。」
「「やったー!」」
 万歳しながらぴょんぴょんと跳ねる2人の後ろから男達が声を掛けて来る。

「ユーリン!」
「シャルル!」
「あ、来たの?」
「来たのじゃねぇよ、酒だけ渡して消えやがって。」
「それどころじゃなかったんだよ。」
「・・・やっぱり姫様関係かよ!」
「ギルマスひっぱって連れて行くから何事かと思ったら。」
 パトリスとガーランが文句を言いながら歩いてくる、後ろからトリスもテクテクと付いて来ている。

「王女殿下お酒有難う。」
「おひさー・・・パトラッシュ。」
「パトリスだよ。」
「何しに来たの?」
「・・・いや、酒のお礼と状況把握に来たんだ、迷惑だったなら帰るが。」
「まぁ別に良いけどね、カラアゲ食べる?」
「お!いただきます!」
「俺も食べて良いですか!?」
「俺も!」
「どうぞ~。」
 野郎3人は何故かユーリン達に促されテーブルに座る。

「ほい、バトリスたんとおあがり。」
「なんだよユーリン気持ち悪いな。」
「なんだとコラ。」
「ガーラン、トリスもはい。」
「有難うシャルル。」
「おぉ美味そう。」
 3人は唐揚げをパクリと口に入れる。

「どう?」
「・・・・!!!」
「!!!!」
「うむぁぃ!!」
 口をモゴモゴと動かしながら頷き答える3人、そしてユーリンはアレが見えるように体を動かし三人に言う。

「この肉アレだけどね。」
 解体されたカエルを指差しながらニヤリと笑い伝えると。

ぶふぅぅぁぁ!!!!!

「きたない!!!!」
「噴き出すな!!!!」
「げふぉげふぉげっふぉ!!!!」
「待て!おい!」
「なんてもん食わせるんだ!」
 吹き出し文句を言う3人。

「美味しかったでしょ。」
「大丈夫よ、これからあのカエル、討伐じゃなく収獲対象になるから。」
 ユーリンとシャルルが言うとパトリスはチラリと千春を見る、千春はサムズアップしながら笑う。

「・・・やっぱり姫様案件かよ。」
「いつものこった。」
「美味けりゃ良いか。」
 三人は諦めたように呟く、顔を戻すとユーリンとシャルルは唐揚げを頬張っていた。





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