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久しぶりのクレア!

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「到着よー♪」
「さて、町長に挨拶をしておくか。」
「私も行く?」
「いや、チハルは別荘に向かって良いぞ。」
「りょ~。」
 エンハルトはそう言うとアリンハンドを連れ屋敷に入る、千春達はそのまま門を抜け街へ向かう。

「ん~久しぶり、ちょっと寒いね。」
「湖が有りますから温度が低いのでしょうね。」
 サフィーナは軽く息を吸うと白い息を吐く。

「夕方はやっぱり寒くなるね。」
「昼は温かいけどね。」
「ブルーワグはまだ雪降る事あるよ。」
 日葵はそう言うとルペタを見る、ルペタと一緒に付いて来たシュシュもウンウンと頷く。

「カエルの魔物って倒したらどうしてるの?」
 美桜はふと思いエーデルに問いかける。

「焼却処分ですね、毒が有りますので。」
「どんな毒なの?」
「麻痺毒です、肌に付くだけでも感覚が無くなります。」
「へぇ・・・麻痺だけなら何かに使えそうだよね。」
 エーデルと美桜は歩きながら話す、千春達も聞きながら歩く、街に着くと人々は前来た時同様に過ごしていた。

「魔物が沢山居るって言ってたけど街は普通だね。」
「前来た時とかわんないねー。」
「サフィー、街中見て回っても大丈夫?」
「はい、私達が付いてますから大丈夫ですよ。」
「それじゃ探索しよう!」
「旬の食材だっけ?」
「そそ、春っぽい物買いまくろう。」
 千春達は別荘の事を忘れそのまま街に繰り出し買い物を始めた、千春は頼子と一緒に露店を見て回る。

「あ!イチゴ見っけ!」
「ホントだ、でもちょっと違うね。」
「でも美味しそうじゃん?」
 真っ赤なイチゴを見ながら2人は話す。

「王女殿下じゃないかい?」
 店の女性が声を掛ける。

「はい、あれ?なんでバレました?」
「あはははは、王女殿下は特徴あるからね。」
「マジっすか。」
「ほら、それに連れもね。」
 女性は後ろに居る大きな狼と侍女達を見る。

「あールプ見たらバレバレかぁ。」
「ん?俺か?」
「別にバレても問題無いからいんじゃない?」
「まぁそれはそれとして、王女殿下これ食べてみるかい?」
「良いの?」
「勿論さ、サーペントの肉のお礼だよ。」
「あ、そう言えば町長さんにあげたなぁ。」
「美味しかったよ、あの料理、テリヤキは最高だね。」
「レシピ教えたの広まったんですね。」
「今じゃクレアの名物料理だよ。」
 千春と頼子、そしてサフィーナはイチゴを受け取り口に入れる。

「ん~~~~~~!」
「甘酸っぱい!」
「美味しいですね、もっと甘味が欲しいですが。」
「サフィー、日本のイチゴと一緒にしたらダメだよ。」
「でもこれジャムにしたら美味しいんじゃない?」
「うん、酸味あるけど味は濃いから美味しいと思う、お姉さんこれ沢山あります?」
「今はココに並んでる分しかないね、王女殿下はいつまで居るんだい?」
「今日は泊まるんで明日も居ますよ。」
「どれくらい欲しいんだい?準備しておくよ。」
「えーっとその樽一杯とか大丈夫です?」
 後ろに見える大きなバケツ二つ分くらいの樽を指差す。

「あぁ、これくらいなら問題無いね。」
「それじゃ予約お願いします!おいくらまんえんです?」
「まんえん?えっと、この量なら銀貨2枚って所だね。」
「やっす!」
「安すぎっしょ。」
「子供達の小遣い稼ぎだからね、収穫するのは子供達なんだ。」
「そっか、それじゃ採れただけ買いますから子供達に頑張れって言っておいてください。」
「了解だよ。」
 千春の言葉に嬉しそうに答える女性。

「あとこの季節で採れる物って何か有ります?」
「そうだねぇ、貴族様が食べる様な物じゃないけれど湖の周りに美味しい野菜が沢山採れるね。」
「何処に売ってます?」
「今は売ってないよ、湖の周りは騎士団に封鎖されているからね。」
「あ・・・そっか、カエルかぁ。」
「あぁ、大人ならまぁ何とかなるけれど、子供なんて一口で食べられちまう。」
「え゛?そんなに大きいの!?」
「見た事無いのかい?」
「無いです、見れます?」
「見てどうするんだい?」
「いや、興味あるだけなんですけどね。」
「湖に行けば騎士団が居るから、言えば死骸を見せてもらえると思うよ?」
「ありがと、それじゃイチゴよろしくお願いしますね!」
 千春はそう言うと立ち上がり次の店を見て回る、美桜達は同じ様に果物が売っている露店に、青空達は珍しいのか小物店を見ていた。

「ルペタちゃんこのお菓子おいしいよ!」
「たべたい!」
「おぢさんこれ4つください!」
「あいよお嬢ちゃん。」
 おぢさんと言われた店主は小さな袋に入れたクッキーをユラとルペタに手渡す。

「大銅貨4枚だよ。」
「はい!」
 ユラは銀貨を一枚渡すと大銅貨6枚を受け取りポシェットに入れる。

「このくっきーを作るところにいったんだよ!」
「がくえんのおでかけ?」
「うん!」
 2人はそう言うと袋を開け、妖精達と一緒にクッキーを食べる、サリナはその時ケンブリットが攫われ、ロイロとルプが大暴れした事を思い出し苦笑いする。

「あーーーーーーーー!!!!!チハルちゃんだー!!!!!」
 通りを歩いている千春に指をさしながら叫ぶ女性が走って来る。

「ユーリンだ。」
「ユーリンだね。」
「ユーリンだな。」
「ユーリンじゃなぁ。」
 千春、頼子、ルプ、ロイロは声を聞き呟く、そして声が聞こえた方を見る。

「なにしてんのー?!」
「旬の食べ物探しとカエル見に来たんだよ。」
「えーあんなの見てどうすんの?」
「いや、なんかどんな感じなのかなって。」
「ただのでっかいカエルだよ?」
「それがウジャウジャいるんですけどねぇ~、こんにちはチハルちゃん。」
 ユーリンの後ろからシャルルが笑みを浮かべ挨拶する。

「野郎どもは?」
「今ギルドで集計中。」
「今日は25匹やったからね、小金貨2枚と銀貨5枚!」
「ユーリンいたら楽でしょ。」
「助かってますよ~、他のメンバーなんてヒーヒー言いながら引きずり回してましたもん。」
「ユーリンもう持ってないの?」
「ないよー、全部廃棄だもん。」
 千春は残念そうに呟く。

「チハルちゃん今日泊り?」
「うん、王族の別荘に泊るよ。」
「湖の横だよね?多分今日寝れないよ。」
「・・・え?」
「あいつら夜鳴きまくるからね。」
「あー!ゲコゲコ言うのか!」
「いや、グブォォォォォオ!って感じ。」
「何それ怖い。」
「それが数百匹一斉に鳴くからね。」
「そうそう、湖側にある家の人達それが理由で逃げてるからねー。」
 嫌な顔をしながらシャルルが言う。

「あ、ロイロちゃんも来てたんだ。」
「うむ、ユーリンに用事もあったからのぅ。」
「なに?」
「これだけ出してくれ。」
 ロイロは手を開いて言う。

「ほいほい、大中小?」
「小じゃな。」
「はーい。」
 ユーリンは小さな巾着を5個取り出すとロイロに渡す。

「何それ?」
「ん、新人が来たんでな、そいつらの給料じゃ。」
「へぇ、ユーリンが管理してんの?」
「なんか流れでね。」
「安全じゃろ?」
「まぁアイテムボックスに入れてたら安全だけど、ユーリンに何か有ったらどうするの?取り出せないよ?」
「それは大丈夫じゃ、儂の特製結界魔石を渡しておる。」
「へっへー、ドラゴンに襲われても大丈夫なんだってさ。」
 ユーリンは首飾りを服から取り出し見せる。

「チハルそろそろ別荘に向かうわよ、ハルトとアリンも戻って来るでしょう。」
「あ、忘れてたわ。」
「千春ぅ、忘れないであげてよぉ。」
 頼子は千春の肩に手を置き嘆く。

「それじゃ皆呼ばないと。」
「呼びますね。」
 サフィーナは手首についている石をコンコンと叩く。

「なにそれ。」
「魔道具ですよ、サリナ達はこの音で戻ってきます。」
「へぇ便利ー、話とかは出来ないの?」
「出来ますよ。」
 そう言うとサフィーナは手首の石を口元まで寄せ話す。

「モリー。」
『はーい?』
「呼んだだけよ。」
『ふぇ!?チハルさんみたいな事しないで下さーい!』
「おい!モリー、聞こえてるよ!なによ!私みたいな事って!」
 千春が物言いを付けるが皆は笑っている。

「ユーリン今日どっか泊るの?」
「うん、宿取ってるからね。」
「別荘来ない?」
「いく。」
「わたしも!」
「んじゃユーリンとシャルルは別荘ね。」
「千春、野郎どもはどうすんの?」
「野郎はいらん。」
 ばっさりと切り捨てる千春。

「それじゃパトリス達に伝えて別荘向かうね。」
「ガーラン達の荷物も渡さないとね。」
「ユーリン、これ野郎どもにあげて。」
 千春はアイテムボックスから焼酎の瓶を取り出す。

「おー!これは喜ぶわ。」
「ありがとうチハルちゃん。」
 2人は焼酎を受け取るとギルドに走って行った。

「戻りましたー!」
「モリー!私みたいな事って何!?」
「よくやるじゃないですかぁ・・・呼んだだけとか。」
「あー私にもやるね。」
 モリアンと頼子は千春を見る。

「・・・さ、行こか。」
 皆が集まったのを確認すると千春は別荘に向かった。





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