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家庭科の授業をやりましょう!

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「此方でございます。」
「スゴォ。」
「流石貴族の学園だねぇ。」
 千春と頼子はユラの通う学園に来ていた。

「この教室使って良いんですか?」
「はい、料理教室専用で御座いますので。」
「新品じゃん。」
 頼子は綺麗に磨かれたシンクを触りながら言う。

「作らせたんですよ。」
 サフィーナはなんでも無いように答える。

「え?マジで?」
「今日の為に?」
「いえ、料理を作りたいと言う令嬢が増えたのです。」
「貴族令嬢も料理したがるんだ。」
「しませんよ普通は。」
「そなの?んじゃなんで?」
「フランシス嬢が切っ掛けですね、あとはユラやイーレンがお菓子を作ってる事も原因です。」
「いつの間にー?!」
「シャリーが教えてクッキーを作ってましたね。」
「シャリーちゃん監修なら美味しいだろうね。」
 千春は食材を、サフィーナはレシピを取り出しながら話す。

「ハンバーグですよねぇ?」
「そだよー。」
 モリアンとラルカは食材を並べながら問いかける。

「なんでハンバーグなんです?」
「家庭科の授業と言えばハンバーグ!」
「あとカレーなー。」
「作ったねぇ。」
 千春と頼子は中学校時代を思い出しながら呟く。

「いきなりハンバーグは難しいのでは?」
「どうだろうね、簡単すぎてもどうかなーって思うし、言うほど難しく無いと思うよ。」
 話をしていると学園の子供達が教員と共に入って来る。

「チハルおねえちゃん!」
「チハルおねえさま!」
 ユラとイーレンが駆け寄って来る。

「ユラ、イーレンも来たの?」
「はい!おりょうりのお勉強ですよね!?」
「そだよー。」
 次々と入って来る学生、上は千春と変わらない歳の子やユラの様な小さな子も居る。

「結構いますねぇ。」
 モリアンが呟く。

「まぁ材料はいっぱい有るし、人数は制限してるんだよね?」
「はい、希望者が殺到しましたので大変で御座いました。」
 教員は苦笑いで答える。

「チハル様!」
「はーいフランちゃん様禁止ねー。」
「うっ・・・チハル・・・さん。」
「久しぶりー、フランちゃんも来たんだね。」
「はい!勿論です!」
 オーレン公爵令嬢のフランシスも嬉しそうに話す、後ろにはフランシスの同級生らしき貴族令嬢が2人立っていた。

「こちらがフィヤー侯爵家のヤーテ、こちらはバンドレ伯爵家のテールキです。」
「ヤーテで御座います。」
「テールキで御座います。」
「チハルだよー、こっちはヨリ、ヨロシクね♪」
 気さくに言う千春とニッコリ手を振る頼子、2人は王女殿下と言う事を知っている為気さくすぎる千春に驚く。

「それじゃ子供達と上級生はチームを組んで料理してもらうから、フランちゃんユラ達お願いしていい?」
「勿論ですわ♪ユラ様よろしくお願いしますね。」
「さまいらないよ?」
「・・・ユラちゃん?」
「はーい!」
「イーレンちゃんもよろしくね♪」
「はーい!」
 5人は千春の近くのテーブルに座る、そして他の令嬢達も席に着く。

「揃いましたので始めましょう。」
 教員が声を掛けると皆が立ち上がり礼をする。

「えー、家庭科の授業を行います。」
 千春が言うと『かていか?』と首を傾げる。

「はい食生活における技術と衛生のお勉強です。」
 そう言うとモリアンとラルカが翻訳された本を渡す。

「小さい子も居るので簡単に簡潔に説明しますねー。」
 千春は衛生面として手洗いや道具を洗いそして消毒等の説明を行う。

「手洗いは絶対に、手には沢山のばい菌が付いてます、常在菌と言って通常は問題有りません逆に良い事も有ります、しかし食事に付くと・・・。」
 説明を始めると皆は難しそうな顔をする。

「千春、まだそこは早すぎるよ。」
「うっ・・・やっぱり?」
「手洗いで綺麗にしましょうくらいでいんじゃね?」
「まぁそうだね。」
 ある程度話を進め、令嬢達もウンウンと頷き理解した所で次に進める事にした千春。

「それではみなさん手を洗ってくださーい。」
 シンクで手を洗う令嬢達、そしてエプロンを着け料理の準備を始める。

「それではレシピを見てください、今日はハンバーグとポテトサラダを作ります。」
 肉や野菜、そして卵等の材料を皆が取りに来る、そして料理が始まる。

「レシピで分からない所は聞いてくださいねー。」
 そう言うと千春は頼子と一緒に見て回る、皆は初めて触るミンチを素手で捏ね、パン粉を混ぜ、卵を入れ、コネコネと不思議な顔をしながら、そして楽しそうに作る。

「ユラもできるよ~♪」
「ユラは一緒に作ったもんねー。」
 ユラはジャガイモの皮をピーラーで剥きながら話す。

「よそ見してたら手切るよ。」
「はーい!」
 横ではイーレンが真剣な顔でジャガイモの皮を剥く。

「お湯が沸きましたわ!」
 ヤーテが嬉しそうに報告してくる。

「フランシス、卵割りますわ・・・良いですか!?」
「はい!お願いします!」
 テールキは卵を持ちプルプルしている。

「テールキちゃん卵割った事ある?」
 千春はプルプルしているテールキに声を掛ける。

「ありません。」
「そっか、初めてかぁ、頑張れ!」
「はい!」
 そしてテールキはテーブルに卵を叩きつける。

グシャ!

「・・・フランシスぅぅぅ。」
 泣きそうになるテールキ。

「フフフ、こうするのよ。」
 フランシスはテーブルの角に軽くコンッと卵を当てると両手でパカリと割り入れる。

「お上手ですわぁ!」
「フランシス凄いわ!」
 2人はフランシスに絶賛する。

「チハルさ・・んの方が凄いですわ、片手で卵を割りますもの。」
「えぇ!チハルさ・・・ん本当ですか!?」
「見てみたいですわ!」
「別に良いけど・・・そのハンバーグそんなに卵入れないよ?」
「・・・残念ですわぁ。」
 その後玉ねぎの微塵切りで涙を流す令嬢達を見ながら微笑みながら各班を見て回る。

「後は焼くだけですわ!」
「チハルおねえちゃんぽてとさらだできたよ!」
「おー流石ユラとイーレンは慣れてるねー。」
 他の班にいる小さな子は芋を潰すのにも苦戦していた。

「それじゃフライパンに油を入れて両面焼こうか。」
「はい!頑張ります!」
 ヤーテはフライパンを火にかける、そして並んでテールキもフライパンを持つ。

「油跳ねしたら火傷しちゃうから気を付けて、もし火傷したら治療するからね。」
「はい!!」
「はいっ!!」
 2人は真剣にフライパンを握る、そしてフランシスがハンバーグを入れる。

ジュゥゥゥゥ

「両面が焼けたら天板に置いてオーブンで焼くからね。」
 千春は2人に言うが、2人はフライパンから目を離さず必死だ。

「他の班は~・・・。」
 周りを見渡すと、サフィーナやラルカ、そしてモリアンが指導をしていた。

「うちの侍女達は有能じゃぁ。」
「そりゃ千春の侍女だもん、どんだけ料理してると思ってるのさ。」
「あー、まぁ確かに他の侍女よりやってるだろうねぇ。」
 そして他の班もハンバーグを焼き始め、両面に焼き色が付いたら天板に乗せる。

「はい、あとはオーブンで焼くだけです、お疲れさまー。」
 千春が言うと、嬉しそうな声や溜息、ほっとした声が聞こえる。

「どうだった?料理作ってみて。」
 皆は嬉しそうに感想を言い合う、そして一息つく為に侍女や令嬢の付き人がお茶を淹れる。

「サフィー、アレ出して良いよね。」
「はい。」
 千春はアイテムボックスから人数分のプリンを取り出す。

「はい、焼けるまでお茶しまーす、デザート食べながらノンビリしてねー。」
 令嬢達にプリンを配る侍女達、ユラとイーレンも嬉しそうに受け取る。

「これはチハルさんが作ったんですよね?」
 フランシスもプリンを受け取ると千春に問いかける。

「そだよ~ん。」
「美味しそうです。」
 皆はプリンを受け取り口に入れる、そしてワイワイと話し始める、暫くするとハンバーグが焼け、皆はそれを皿に盛り付け、子供達が作ったポテトサラダをトッピングしテーブルに座る。

「はい!それじゃ頂きましょう!いただきます♪」
 千春が言うと令嬢達もいただきますと言いハンバーグを食べ始める。

「あら、皆いただきますって言うんだ。」
「ジブラロールでは当たり前になりましたね、市井でも貴族家でも言いますよ。」
「広まったねぇ。」
「チハルが広めたんでしょう?」
「いや・・・別に広めたつもりはないんだけどなぁ。」
 そして千春達もハンバーグを口に入れる。

「んまい!」
「やった!」
 千春達のハンバーグはフランシス班が一緒に作った物だ。

「ユラのぽてとさらだは!?」
「美味しいよー♪」
「んふふふふ、やったー!」
「よかったー!」
 ユラとイーレンは顔を合わせニッコニコだ、そして食事が終わり、皿洗いまで貴族令嬢達にさせると授業は終わった。

「はい、皆さんお疲れ様でした、それでは本日の授業これで終了です!」
 皆は有難う御座いましたと礼をし部屋を出て行く、その後、家庭科の授業は定期的に行われ抽選が必要な程の人気授業になった。






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