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食育と衛生管理!

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「ヨリ、今日本屋寄って帰るわ。」
「ついて行くよ。」
 授業が終わりカバンを担ぐと千春は頼子に言う、頼子もカバンを手に答える。

「アレでしょ?食育のなんちゃら。」
「そ、古本屋に行こうと思ってさ。」
「あの手の本って高いよねぇ。」
「そうなのよねぇ~。」
 2人は廊下を歩きながら話していると、美桜と麗奈が走って来る。

「チハル!今日行って良い?」
「良いけど、今日木曜だよ?」
「明日はチハルの家から学校行くー。」
「私もー。」
「私ら今から古本屋行くけど。」
「おっけ~、準備してからのんびり行くよ。」
「りょうかーい。」
 千春と頼子は手を振り走っていく美桜達を見送るとテクテク歩く。

「のんびりって言いながら走ってんねぇ。」
 頼子はクスクスと笑いながら呟く。

「ヨリ勉強どう?」
「ん~、勉強の方はやってるよ、でもあっちで色々やってるとさー、欲しい知識が色々ありすぎてさ、大学で専攻するより短大とか専門学校の方が良い気がしてるんだよね。」
「わがるぅぅぅぅ、今回の病気の件とかさ、アイトネに教えてもらったからすぐ対応出来たけど、医療系に進んだとしても結局治療は魔法かアレじゃん?」
「万能薬な実ね。」
「そ、外科手術とか無理じゃん?」
「無理だね。」
「政治とかコッチと比べるのが間違ってたじゃん?」
「だねぇ。」
「だから好きな事をやるという手もあるなと。」
「千春の好きな・・・料理?」
「そ、料理だけじゃなく食に必要な勉強をしたいなって思ったのさ♪」
「いんじゃない?」
 楽しそうに話す千春に頼子は頷く。

「私は前言ったバイオテクノロジーの勉強はやりたいなぁ。」
「どんな事するの?」
「食品の事もそうだし、環境とか、医薬品の研究もするらしい。」
「すごいなバイオテクノロジー。」
「でしょ、まぁまだ時間はあるけど勉強だけはやっておいて損しないし、また変わるかもしれないから。」
「そだねぇ。」
 未来の自分を思い浮かべながら2人はバスに乗り街にある古本屋へ向かった。


-------------------


「ただいまー。」
「たいまおじゃまー。」
「お帰りなさいチハル、ヨリ、遅かったわね。」
 サフィーナは時計をチラリと見る。

「うん、古本屋で例の本買ってたから。」
「食べ物の勉強する本?」
「そ、ビェリー出してー。」
「ほーい。」
 ビェリーは影収納からドサドサとテーブルに本を出す。

「すごい!美味しそうな絵ですっ!」
「写真だけどね。」
「これ作るんですか!?」
 色々な料理が乗っている写真を見ながらモリアンは楽しそうに問いかける。

「いや、こういう料理がどの病気の時に良いよ~って言う本だから。」
「これは?」
「コレは糖尿病食だね。」
「とーにょーびょー?」
「そ、甘い物ばかり食べてたら掛かる病気、怖いんだよー?」
「そ・・・そうなんです?」
「ま、この前の贅沢病って言ってた脚気と一緒で偏った食事じゃなければそうそうならないよ。」
「治るんですか?」
「治らないらしいよ、でもアレ使ったらどうなんだろうねぇ。」
「治りそうな気がするね。」
「ね、糖尿病になりそうな人も居るし、病気になったら使ってみよう。」
 千春はペラペラと本を開きながらいくつかの項目に目を通す。

「それは?」
 サフィーナは横から千春の読んでいる所を聞く。

「3大栄養素と5大栄養素、今回の必須項目だよ。」
「びたみん、みねらる?」
「・・・え?サフィー読めるの?」
「ひらがなとカタカナだけですが。」
「マ!?」
「漢字は難しいのでまだ読めませんが、ひらがなとカタカナは読める様になりました、ただまだ文章や意味が分からない事が多いので。」
「しょうがないよ、でも読めるの凄いな。」
「その3大栄養素と5大栄養素ってなんですかぁ?」
 モリアンが問いかける。

「穀物で摂れる炭水化物、肉や魚で摂れるたんぱく質、あとはモリーの好きなマヨネーズみたいな油、脂質だね、これが3大栄養素で生きていくために必要な物、あとは野菜から摂れるビタミン、貝とか海藻から摂れるミネラル、この2つを合わせて5大栄養素だよ。」
「バランス良く食べれば良いんですか?」
「うん、ぶっちゃけて言うと極端に偏らなければまぁ病気にならないよ、モリーみたいに毎日マヨネーズ食べてたらヤバいけど。」
「うっ・・・毎日ではない・・・と思います・・・よ?」
「そだね、ほぼ毎日って感じだね。」
「マヨネーズはほとんど油だもんねー。」
 ケラケラと笑いながら頼子が笑う。

「太い人ってだいたいマヨネーズ好きだよね。」
「マヨネーズは飲み物って言う人が居るくらいだし。」
「・・・わかります。」
「あ、わかっちゃうんだ。」
「流石マヨラー。」
「この前の病気は何が足りなかったんですか?」
「ビタミンB1だね。」
「びたみん、野菜ですね。」
「いや、そう思うじゃん?今の説明だと。」
「はい。」
「ビタミンB1は肉に多く入ってるんだよ、特にブタ、こっちだと猪だね、オークはわかんない。」
「お肉ですか。」
「勿論野菜にも入ってるよ、野菜の方が他のビタミンも取れるし食物繊維も取れるから野菜も食べた方が良いね。」
「・・・結局何食べたら良いんですかぁ?」
 良く分からなくなったモリアンは首を傾げる。

「何でも食べれば良いんだよ、好き嫌い無く、色々な物をバランスよく!コレが一番!」
「だよねー、この本読んで余計わかんなくなりそう。」
 ペラペラと本を捲りながら頼子が言う。

「そりゃそうだよ、成人男性と女性の一日の必要摂取量とか考えてたらキリがないもん。」
「うわぁそれ言っちゃう?」
「言っちゃうよ、ただ知識としては持ってた方が良いって感じ、それに火入れたらビタミンも壊れるし、生肉で食べないじゃん。」
「サラダは?」
「サラダもねぇ、こっちの世界って井戸水とか川の水じゃん、水魔法で洗ったりしないじゃん。」
「だね。」
「一度水を沸騰させるか水魔法で水出すか、あとは浄化させた水で洗わないとサラダ作れないよ怖くて。」
「そう考えると日本ってすげぇなぁ。」
「凄すぎるんだよ日本の水道。」
 フムフムと頷くサフィーナ達、そして千春は必要な部分に付箋を付けていく。

「このページは必要な所だね。」
「結構あるね。」
「結構厳選したんだよぉ?」
 暫く付箋を付けているとLIMEが鳴る。

「ミオ達来たね、迎えに行ってくる。」
 千春はパタパタと走り日本に戻る、そして美桜達を異世界に連れて戻る。

「おっす!」
「ちゃお~♪」
「いらっしゃいミオ、レナ。」
「チハル、これママから。」
 麗奈はそう言うと本を渡す。

「何の本?」
「食品衛生責任者資格の教本、ママがくれたよ。」
「えー?なんでそんなの持ってるの?」
「さぁ?持ってるからじゃん?」
「レナのママ持ってるの!?」
「らしいよ?なんかパートしてた時取ったって言ってた。」
「パートで資格取れるんだ。」
「講習受けたら誰でも取れるんだってさ。」
「・・・そうなんだ。」
「でも食中毒とか結構大事な事書いてるらしいから。」
「おぉ、それは助かる、こっちは栄養の事ばっかりだったから。」
 千春はそう言うと本をペラペラと流し読む。

「うん、衛生面も勉強した方が絶対良いね。」
「そうですね、よくお腹を壊す人も居ますから。」
「生で食べたんだろうねぇ。」
「魔族の人って生で食べてたよね。」
「食べてた!魔王とか!」
「どんな胃袋してんだか。」
「あー、それは多分胃酸のPH値が高いのと免疫が強いんだよ。」
 千春はペラペラと本を見ながら言う。

「そうなの?」
「多分ね、死肉を食べる動物はそういう免疫機能があるんだよ、前本で読んだもん。」
「どんな本だよ・・・。」
「ま、こっちの人達は私達と変わらないだろうし、この項目は必須だね。」
 千春はペタペタと付箋を付けるそして千春達4人と侍女達4人は翻訳した物をメモし、教本を作る。

「みんな頑張ってー。」
「・・・がんばりまっす!」
「私達の食生活改善の為ですから、メグ様からも頼まれています、チハルは気にしなくて良いですよ。」
「有難うサフィー、これ終わったら魔国牛のすき焼き作ってあげるから。」
 千春がそう言うと皆の目が変わる、そして翻訳速度が爆上がりしあっという間に翻訳は終わった。




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