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村に行く前に!

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「チハルは居るか?」
 エンハルトは千春の部屋に来るなり声を掛ける、後ろからはアリンハンドが一緒に入ってくる。

「ハルトさん、千春はまだ戻ってないよ。」
「そうか、ヨリも行くのか?」
「モチ、原因が私達のせいだもん。」
 頼子は悲しそうに呟く。

「そうかもしれないが、ヨリ達のせいだと言うのは考えすぎだろう。」
「でも治せるんだよ?」
「・・・。」
「ただいま!」
 千春はドラッグストアから戻り声を掛ける。

「チハル。」
「ハルト、来てたの?村行ってくるから。」
「・・・。」
「どうしたの?」
「チハル、お前達が責任を感じる必要は無いぞ。」
「・・・いや、私のせいだもん。」
「・・・はぁ、俺も行く。」
「え?大丈夫だよ、ロイロがドラゴン沢山連れてくるし。」
「いーや、一緒に行く、美味い飯を広めさせたのは俺だ。」
「へ?」
 腰に手を当て溜め息を吐いたエンハルトは千春に言う。

「お前達の責任では無い、教えたのはチハルかもしれないが、広めさせたのは王国の責任だ、それにチハルにそんな顔はさせたく無い。」
 真面目な顔をしたエンハルトは千春と頼子を見る。

「準備出来たぞチハル。」
「ロイロありがとう!それじゃ行こう。」
「チハル、あと1時間まってくれ。」
「え?」
「王国として正式に出陣する。」
「でも・・・。」
「頼む。」
「・・・わかったよ。」
 真剣な顔で言うエンハルトに千春は頷くと、エンハルトはすぐに部屋を出て行った。

「千春サプリは?」
「ビェリーに預けてる。」
「サプリ飲んだだけじゃ直ぐに治らないよね。」
「多分、長期的な治療が必要だろうね。」
 千春と頼子はどんよりとした雰囲気で話しているとモリアンが問いかける。

「世界樹の実食べさせたら治りませんかぁ?」
「「あっ。」」
「ダメですよ、田舎の農村とは言え世界樹の実で治ったと噂になればどんな事になるか分かりません。」
 モリアンの提案にサフィーナが待ったをかける。

「実と分からなければ良いんじゃ無いですかぁ?ジュースにするとか?」
「・・・それっぽいのにしたら良いかな?」
「それっぽいって?」
 千春の呟きに頼子が聞く。

「ポーションの入れ物に入れるとか。」
「良いね、ポーション開発部に貰ってこようか。」
「サフィー、それなら良い?」
「ハルトの確認、いえ、陛下の確認が必要ですね。」
「お父様かぁ、事後報告は?」
「陛下の胃袋壊したければ。」
「くっ・・・ちょっと行ってくる!」
 千春は箒を取り出しサフィーナの止める声も聞かず飛び出した。


-----------------


「お父様!」
「チハル、農村の件か。」
 ベランダから声を掛けてきた千春に驚かず千春に向くと答えるエイダン。

「はい!世界樹の実使って良いですか?」
「んーーーむ、原因が分かったのじゃろう?使わずに済むのでは無いか?」
「間に合わない人もいるかも知れないので。」
「しかし結構な人数がおる、実もそんなに揃わぬじゃろ。」
「それは大丈夫です!」
 千春はアイテムボックスから大量の世界樹の実をボトボトと出す、エイダンは額に手をやり天井を仰ぐ。

「ポーションの瓶に入れて世界樹の実と分からないようにします、緊急性の無い人にはビタミン剤にしますので。」
「ふむ、許可しよう、無茶はするでないぞ?」
「はい!」
 千春は嬉しそうに返事をすると窓から飛び出した。

「もうサフィーナに裁量権を渡してはいかがですか?」
 宰相のルーカスはエイダンに進言する。

「ふむ、今の件も直ぐに報告も来たからのぅ。」
「チハル王女殿下を止めれる者は限られております。」
「やる事は突拍子の無い物ばかりじゃが、どれも王国には良い方に動いておるからのぉ、メグに話をしてみよう。」
 エイダンは腹を軽く摩るとルーカスにマルグリットを呼びに行かせた。


-----------------


「オッケー貰ったよ!」
 千春は部屋に飛び込むなり皆に言う。

「うぃー、準備出来てるよ、世界樹の実ちょうだい。」
 頼子はボウルとオタマを持ち千春に言う、千春は厨房に行くと世界樹の実をボトボトと取り出す。

「俺達が潰して行くぞ。」
 ルプはそう言うと、世界樹の実を握りつぶしボウルに果汁を流し入れる。

「千春、ここにビタミン剤入れたらいんじゃね?」
「混ぜても大丈夫かな。」
「試しに混ぜたら?」
「んじゃこれに飲むタイプのビタミン剤いれるね。」
 蓋を開け、ドボドボといれかき混ぜる千春。

「鑑定!・・・うん、飲める。」
「千春の鑑定じゃダメじゃん!」
「アリンは?」
「アリンさーん!」
 応接室で準備をしているアリンハンドが厨房に顔を出す。

「どうされました?」
「これ鑑定してください。」
 頼子はボウルごとアリンハンドに見せると、アリンハンドは鑑定をかける。

「はい、万能薬ですね。」
「それだけ?」
「はい、十分凄いと思いますが。」
「ん~~~~、混ぜても意味ないかぁ。」
「無いと言う事も無いのでは?」
「どういう事?」
「必要な栄養が入ってるのですよね?万能としか分かりませんが必要な栄養素が有るのは良いと思いますよ。」
「・・・そっか、これ使うのはヤバそうな人だし何個か作っておこう。」
「おっけー。」
 千春はルプや子供姿のビェリーとコンが潰した世界樹の果汁にビタミン剤を入れ、ポーションの小瓶に詰めていく。

「チハルこっちの準備は出来た、出発出来るぞ。」
 エンハルトが声を掛けて来ると千春も返事をする。

「りょ!こっちもオッケー!」
 千春のアイテムボックスと頼子の影収納に小瓶を入れるとバタバタと庭に出る。

「ロイロ!お願い!」
「場所は分かるのか?」
「私が分かります。」
「よし、アリンはダフニーに乗るが良い、ダフニー先頭を頼むぞ。」
「了解しました。」
 ダフニーはそう言うとドラゴニュートの姿からドラゴンに変化する。

『チハル、儂に乗れ。』
「うん、ロイロお願い。」
『任せるが良い。』
 千春はロイロに乗ると、サイマス、アベリア、ミリカ達ドラゴンに頼子やサフィーナが乗る、竜騎士団のドラゴンもエンハルト達を乗せ立ち上がる。

『行くぞぉ!』
 ロイロの掛け声にドラゴン達が咆哮を上げ皆が翼を大きく広げ風を乗せる、そして皆は農村に向かって一直線に飛んで行った。





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