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魔王都!

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 魔王都の路地裏に隠れながら、魔族の子供は大通りを歩く異国の人間を見つめる、キャッキャと騒ぐ女達は隙だらけだ、男の子は1人に狙いを定めると軽い足取りでポニーテールの少女にぶつかる。

「どこ見てんだよ!気をつけろ!」
 そう言うと駆け足で立ち去ろうとするが、ガッチリと腕を掴まれた。

「ほらチハル、面倒でも巾着はアイテムボックスに入れませんか?」
 サフィーナは男の子の腕を掴んだまま呟く。

「えー、めんどくたいー、3人目?」
「えぇ、やはり目立ちますね、このメンバーですと。」
 ため息を吐きながら言うサフィーナ、男の子は反対の腕をモリアンに掴まれ、逃げようとするがびくともしない。

「暴れちゃダメですよ?」
 優しく言うモリアン、しかし腕はガッチリホールドしたままだ。

「離せよ!」
「護衛を断らなければ良かったのでは?」
 サリナは千春に言うと嫌そうに千春は答える。

「やだよー、あんなゴツい軍人さん連れて買い物とかぁ。」
「お?千春また狙われたん?」
「チハル1番隙だらけだもんねー。」
「ぽやぽやしてっからね。」
 最初のスリに合った時は大騒ぎこそしないものの、驚いていた頼子達も2度目、3度目となると他人事だ。

「今回は子供ですが、衛兵に引き渡しましょう。」
 サフィーナが言うと男の子は真っ青な顔になる。

「ごめんなさい!もうしません!許してください!」
「アルデア、ここのスリって刑罰何なの?」
「常習犯なら腕切られるわよ、初犯なら百叩きね。」
「腕!?・・・こわっ!」
「君初犯?」
 美桜は男の子の前でしゃがんで話しかける。

「・・・違う。」
「ありゃー、腕切られちゃうのかー。」
 軽く答える美桜、男の子は泣きそうだ。

「しっかし治安良く無いねぇ。」
 ポツリと呟く千春、するとサリナが答える。

「チハル様が来られる前はジブラロールも似た様なものでした。」
「え?そうなの?」
「はい。」
「今は良くなったんだ・・・なんで?」
「全部チハルさんが原因ですよぉ?」
 何を言ってるんですか?と言う様にモリアンが言う。

「・・・サフィー詳しく。」
「話すと長くなりますから取り敢えずこの子の対応を考えましょうか。」
「魔族なので見た目と年齢違うんじゃ無いんですかぁ?」
「確かにモリーの言うのも一理あるね、君何歳なの?」
 千春が問いかけると、男の子が呟く様に答える。

「・・・10歳。」
「あ、見た目通りだったわ。」
「チハル、衛兵に引き渡すの?」
 美桜はしゃがんだまま問いかけると千春は横に首を振る。

「流石にちょっとねぇ、君どこ住んでるの?」
「屋根があれば何処でも。」
「家無しか!孤児院・・・無いんだろうなぁ。」
「有ってもいっぱいで入れないとか?」
「君、孤児院行った?」
「・・・。」
 首を振る男の子、千春はため息を吐くとサフィーナとモリアンに手を離すように言う。

「もうやっちゃダメだよ?手無くなっちゃうからね?さ!次いこー!」
 ポカンとする男の子を尻目に千春は歩き出す、頼子達も次に行く店を探索し始めた。


-----------------


「何も無いって言ってたけど結構有ったね。」
「そうかしら、ジブラロールの方が物も食材も多いじゃない。」
 アルデアはそう言うと果実水を口に含む。

「見てコレ、幸運のお守りだってさ。」
 青空が見せるのは透明な水晶が付いたペンダントだ。

「この近くにその石が取れる鉱山があるのよ。」
「へぇ、幸運になるの?」
「・・・なるかもしれないわね。」
 喜んでいる青空をチラリと見ると、クスッと笑い答える。

「あと魔物素材のアクセサリー多いよね。」
「カラフルな羽飾りとか有ったねー。」
「こっちにいる魔物の種類が違うのかな。」
「お肉も聞いた事ない肉結構有ったね。」
「チハル肉買ってたじゃん、何か作るの?」
「気になったから買ったけど、味見してみないとわかんないね。」
 買った物の話をしていると、不意に千春が思い出したように言う。

「モリー、さっき言ってたさぁ、私が原因って何なの?」
「あ、覚えてました?」
「そりゃー気になるもん。」
 そう言うとサフィーナが話出す。

「チハルが来てから仕事が増えましたからね。」
「仕事?」
「えぇ、農業では王都の穀倉地帯の拡張、食事改善による人口増加、人が増え仕事も増えました、仕事の無いスラムの人間は仕事ができるようなりました。」
「あとスラムや路地に住んでた子供達はチハルさんの孤児院で保護されましたから、さっきの子のような犯罪するしか無い子も居なくなりましたねぇ。」
 サフィーナとモリアンは千春に説明すると話を続ける。

「生産ギルドでも人手が足りないくらい忙しいと聞きました、概ねチハルやヨリ達の開発品、後はタイキ様が進めている飛空挺の建造、チハルの飛空島の開拓ですね。」
「犯罪ギルドも駆逐して新たにロイr・・・。」
「モリー。」
「あ、いえ、ナンデモナイデスヨ?」
 モリアンはサフィーナに言われハッとし、言葉に詰まる。

「何?気になるんだけど。」
「たいしたことじゃありませんよ。」
「犯罪ギルド駆逐がたいしたことない・・・あるでしょ、ロイロが何かしてるの?」
「・・・。」
 サフィーナはモリアンを睨むがモリアンは目を逸らす。

「はぁ、犯罪ギルドは駆逐しても新たに生まれる物なんです、それなら王国の息が掛かった犯罪ギルドを作り操作すれば良い・・・そう言う事です。」
「なんでロイロが関わってんの?」
「発案者がロイロだからです。」
「あ~~~~、まぁ転生何回目か知らないけど万年単位で生きてるからねぇロイロ、色々知ってるんでしょ?」
「えぇ、結構楽しんでやってますね。」
「そっか、だから最近居ない事多いんだねぇ、まぁ楽しんでるならいっか。」
「良いんです?」
「良いよ?別に束縛するつもりも無いし、何気に必要な時は横に居てくれるからねぇ~。」
 そう返事をすると果実水を飲む、そしてピコーンと思いついたように千春が声を上げる。

「そうだ!」
「ダメですよ。」
「まだ何も言って無ーい!」
 速攻でサフィーナに止められる千春はブー!と頬を膨らませる。

「どうせジブラロールと似たようにするとか、孤児院建てるとか言うんでしょう?」
「・・・はい。」
「国の政に関わる事案です、思い付きで言わないで下さい。」
「それじゃさ!魔王さんに言ったらダメかな!?」
「ダメです、チハルが口を出す事が問題ですから。」
「なんで?」
「色々な利権や策略、恨みを買います、わざわざチハルがそれを請け負う必要が無いと言う事ですよ。」
「んぅぅぅ。」
「千春、メグ様に相談したら?」
 唸る千春に頼子が頬杖をつきながら助言する。

「それだ!」
「・・・まぁそれでしたら。」
 サフィーナもこれ以上言っても無駄なんだろうと思いながら苦笑いで答える。

「よし!お母様に相談だ!」
「帰んの?」
「魔王都も満喫したしもどりますか~。」
「手に入れた肉で焼肉ぱーちーしようぜー。」
「あれ何肉だったの?」
「なんとか牛って言う魔物。」
「なんだそれ。」
「さぁ?」
「グフォック牛ですよぉ?」
 モリアンは覚えていたようで青空達に教える。

「こまけ~こたぁいいのよ、美味けりゃ!さ!帰るよー!」
 そう言うと千春は立ち上がり魔王城へ戻った。





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