上 下
423 / 744

ワッフゥー!

しおりを挟む
「いぇーい!届いたー!」
 千春はMamazonの箱を開ける。

「何か買ったの?」
「うん!これだよ~♪」
 マス目の付いたフライパンを掲げながら嬉しそうに叫ぶ。

「何です?これー。」
「よく聞いてくれたねモリー、コレはワッフルベイクパンって言うんだよ。」
「わっふー?」
「ワッフル!コレで新しいスイーツ作れるよ。」
「何が必要ですか!?」
 スイーツと聞き、食い気味に言うモリアン、すまし顔のサフィーナとサリナも興味がありそうに見ている。

「ホットケーキの生地とホイップクリーム、アイスクリームとチョコも欲しいな、あとはフルーツかな?」
「食堂で貰ってきます!」
「いや、ココで作れば良いじゃん。」
「いえ!待てませんので!」
 モリアンはそう言うと扉を開け走って行った。

「今から作るの?」
「いや、ヨリ達が来たら作ろうと思ったんだけど・・・モリー泣くよね。」
「泣きはしないでしょう、落ち込むとは思いますけど。」
 呆れ気味に答えるサフィーナ、しかしスイーツと聞きラルカとマクリもソワソワしているのを見て千春はクスッと笑う。

「試し焼きもしたいし今から作りましょうかね。」
 段ボールの中からもう一つ取り出し梱包を剥がすと厨房に移動する。

「チハル様何をお手伝いしたら良いですかニャ!?」
「マクリとラルカは果物を薄く切ってくれる?」
「了解です!」
「はいですにゃ!」
 軽く洗い流しコンロに乗せ温めていると頼子から着いたと連絡が来る千春は門を通り玄関まで行くと声を掛ける。

「らっしゃい!」
「さっきぶりー。」
 頼子を迎え入れ厨房に戻るとモリアンが戻ってきていた。

「チハルさん!持ってきました!」
「はいはい、それじゃ焼きましょうかねー。」
「なに?ワッフルメーカー買ったの?」
「電気ないからベイクパンの方だよ。」
「へぇ、魔石使って魔道具に出来ないかな。」
「出来たら便利だね。」
 生地を流し込み蓋を合わせるともう一つ取り出す。

「2つ買ったんだね。」
「もう一個買えばよかったかなぁ。」
「作ろうか?」
「へ?」
「ほら、金属性あるから多分作れるよ、なんか良い金属ない?」
「あるある、ミスリルあるよ。」
 千春はアイテムボックスからミスリルを取り出すと頼子に渡す。

「チハル、ミスリルはやめた方が良いわよ?」
「大丈夫、いっぱいあるから。」
 頼子は粘土の様にミスリルをグニグニと丸めるとグリルパンの型取りを始める、そして型取りが終わるとグリルパンの型に合わせもう一つ作り上げる。

「どやぁ!」
「魔法凄いな。」
 頼子は早速蓋と重ね合わせ火にかける。

「・・・あれ?」
「ヨリどしたん?」
「いや・・・あれぇ?あったかくならない。」
 グリルパンに手をかざし首を傾げる頼子。

「それはそうですよ、ミスリルは火の耐性も高いですから、鉄が溶けるくらいの温度で炙らないと焼けないわよ?」
「もっと早く言ってくださぁい!」
「やめた方が良いって言ったわよ?」
「「・・・言ってたね。」」
 気を取り直し、ミスリルグリルパンの型取りを使い、頼子は鉄で作り直す。

「コレ売れるんじゃね?」
「売れるかもねー。」
「取り敢えず食堂用とシャリーちゃんにプレゼント用も作るかな。」
「ヨリさん私も欲しいでっす!」
「モリーちゃん料理しないじゃん。」
「コレなら作れそうです!」
 千春がパカっとグリルパンを開けると綺麗に焼けたワッフルが出来上がっていた。

「売る話は後でしよう、モリーこれチョコにつけてくれる?」
「はーい、全部つけます?」
「半分つけて皿に乗せて、その上にホイップとアイスクリーム、そんでフルーツ飾ってくれる?」
「はーい!」
「私も焼くわ。」
 頼子も新しく作ったワッフルグリルパンをコンロに乗せる。

「あーくっつきそうだなこれ。」
「バターあるよ。」
 バターを溶かし塗り込むと生地を流し込み蓋を閉める、しばらくしてひっくり返し焼く。


「うん、良い匂い。」
「はーいこっち焼けたー。」
 千春が皿に乗せ、サフィーナももう一つのグリルパンでワッフルを焼く。

「オッケー、どう?千春。」
「ばっちしじゃん。」
 頼子の作ったグリルパンも綺麗に焼け、3人でワッフルを量産していく。

「千春こんなに作ってどうすんの?」
 何枚目かわからない程焼いた頼子は問いかける。

「試し焼きのつもりだったんだけど・・・簡単だな!ワッフル!」
「確かに、ホットケーキより簡単だね。」
 生地を入れ蓋を閉めグリルパンごと返すだけで焼けるワッフルに2人は黙々と焼き続ける。

「千春~。」
「なに~?」
「アイトネ様呼ぶ?」
『呼んで!』
「いらっしゃーい、もう出来てる分食べても良いよ。」
『やった♪さっき言ってた魔道具作る?』
「いや、規格外の商品作りそうだから遠慮しとく。」
「さっきのってワッフルメーカー?」
『そう!それ♪』
「ヤバいの出来そうだなぁ。」
 最後の生地を入れながら呟く頼子。

「魔道具にするなら魔石いるよね。」
「持ってる?」
「腐るほどあるよ。」
「でも火魔法使えないとダメだよね。」
「もうすぐミオとレナ来るから作れるんじゃん?」
 ちょうどその時LIME通知が来る。

「な~いすタイミング、迎え行って来る、こっちヨロ。」
「まかせい。」
 千春はパタパタと走り2人を迎え入れる。

「らっしゃーい。」
「うぃーっす、お、チハル甘い匂いする。」
「またお菓子作ってた?」
「びんごー、ワッフル作ってたんだよ。」
「おー!ワッフル好き!」
「イイねー、手伝う事ある?」
「いや、ちょうど出来上がった所だから一緒に食べよ。」
 3人はワイワイ言いながら応接室に入ると、テーブルには色とりどりのフルーツが盛られたワッフルが並んでいた。

「すっご!こんなに作ったの!?」
「うん、モリーが生地いっぱい持ってきたから全部焼いた。」
「どうすんのコレ。」
「アイテムボックス入れてたら保存出来るから・・・でも多分無くなるよ?」
 既にアイトネ、ルプ、ビェリーも食べだし、コンは美桜から飛び降りると人型に変化しテーブルに座る。

「僕も頂きます!」
「たくさん食べなー、ミオとレナも食べてね。」
「いっただきまー♪」
 モグモグと皆で食べながら頼子が美桜に話しかける。

「コレ作ったんだけどさ、火の魔石作れない?」
「ふくれるぉ?」
「飲み込んでから答えい。」
「モグモグモグモグ・・・・つくれるよ。」
「後でコレ魔道具にしてワッフルメーカー魔道具版作ってみたいんだわ。」
 4人はワッフルを食べ終わるとワッフルベイクパンを囲み色々と考える。

「え~っとココをカチッと止めれる様にした方が良いよね。」
「これ火にかけないなら取って要らなくね?」
「いやいや、開ける時熱いでしょ。」
「どうせなら沢山焼けた方がよくね?」
「いやいや、直ぐ焼けるし少しで良い人もいるっしょ。」
「ほら、ネットで売ってるのはこんなんだよ?」
 千春はスマホでワッフルメーカーの画像を見せる。

「それじゃ2個焼ける感じで作るか、魔石はどこ付ける?」
「真上で良いじゃん、魔力流さないとダメだし。」
「それなら取っ手に付けた方がよくね?」
「あー、握れるもんね。」
 頼子は皆が言う形に金属魔法で形を作り、美桜は魔石に火魔法を組み込む。

「火力はどうすんの?グリル温めるんだよね?」
「うん、それじゃ出来ない?」
「グリルが温まる様に作ったけど試さないとわかんないね。」
「火吹いたらヤバいよね。」
「試す?」
「・・・アイトネー!」
『それだと取っ手から火が噴き出るわよ?』
「あっぶねえぇ!」
「聞いて良かった、アイトネどんな感じで作ったら良い?」
『確かフライパンを温める魔道具も有ったと思うわ、魔力効率が悪くてあまり普及してないと思うけれど。』
「あ、効率悪いんだ。」
『えっとねー、このグリルパンの淵に溝を作って魔導インクを流し込むの、それと鉄で作ると魔力が散るからミスリルで作った方が良いわよ?』
「え?火耐性あるから温まらなかったよ?」
『直接火にかけたら無理よ、魔力を通して火属性付けるなら逆にミスリルが良いわよ。』
 千春と頼子は最初に作ったミスリルのグリルパンを見る。

「魔導インクって何?」
「アリンさんが魔道具作る時にたまに使ってるね。」
「手に入るのかな?」
「さぁ?なんかすっごい高いって言ってたよ。」
「・・・本体がミスリルで、高価なインク使って、魔力効率が悪いと。」
 千春が呟くと頼子がポツリと呟く。

「もうグリルパンで良くね?」
「だね。」
「んだ。」
「・・・だよねぇ。」
 そして4人はワッフルグリルパンの1つ焼き、2つ焼きバージョンを作り生産ギルドに渡す見本を作った。

「この売上誰のにする?」
「皆お金もってっからねぇ。」
「ウチも立体五目並べ売れてるから大丈夫。」
「私も飛空艇の使用料が入るらしいからいらね。」
「え?マ?」
「マ。」
「ソラ達は?」
「アウトドア商品売れてるらしいからお金持ってるよ。」
「こっちのお金使い道ないんだよなー。」
「「「それなー。」」」
 最終的に皆が千春に押し付け、千春の資産が増える事になった。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幸子ばあさんの異世界ご飯

雨夜りょう
ファンタジー
「幸子さん、異世界に行ってはくれませんか」 伏見幸子、享年88歳。家族に見守られ天寿を全うしたはずだったのに、目の前の男は突然異世界に行けというではないか。 食文化を発展させてほしいと懇願され、幸子は異世界に行くことを決意する。

転生王女は現代知識で無双する

紫苑
ファンタジー
普通に働き、生活していた28歳。 突然異世界に転生してしまった。 定番になった異世界転生のお話。 仲良し家族に愛されながら転生を隠しもせず前世で培ったアニメチート魔法や知識で色んな事に首を突っ込んでいく王女レイチェル。 見た目は子供、頭脳は大人。 現代日本ってあらゆる事が自由で、教育水準は高いし平和だったんだと実感しながら頑張って生きていくそんなお話です。 魔法、亜人、奴隷、農業、畜産業など色んな話が出てきます。 伏線回収は後の方になるので最初はわからない事が多いと思いますが、ぜひ最後まで読んでくださると嬉しいです。 読んでくれる皆さまに心から感謝です。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

転生少女の異世界のんびり生活 ~飯屋の娘は、おいしいごはんを食べてほしい~

明里 和樹
ファンタジー
日本人として生きた記憶を持つ、とあるご飯屋さんの娘デリシャ。この中世ヨーロッパ風ファンタジーな異世界で、なんとかおいしいごはんを作ろうとがんばる、そんな彼女のほのぼのとした日常のお話。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?

水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが… 私が平民だとどこで知ったのですか?

大聖女の姉と大聖者の兄の元に生まれた良くも悪くも普通の姫君、二人の絞りカスだと影で嘲笑されていたが実は一番神に祝福された存在だと発覚する。

下菊みこと
ファンタジー
絞りカスと言われて傷付き続けた姫君、それでも姉と兄が好きらしい。 ティモールとマルタは父王に詰め寄られる。結界と祝福が弱まっていると。しかしそれは当然だった。本当に神から愛されているのは、大聖女のマルタでも大聖者のティモールでもなく、平凡な妹リリィなのだから。 小説家になろう様でも投稿しています。

聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!

伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。 いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。 衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!! パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。  *表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*  ー(*)のマークはRシーンがあります。ー  少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。  ホットランキング 1位(2021.10.17)  ファンタジーランキング1位(2021.10.17)  小説ランキング 1位(2021.10.17)  ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。

処理中です...