上 下
394 / 744

ドラゴン印の温泉饅頭!

しおりを挟む
「千春何してんの?」
「お父さん、もう時間?」
「うん、次は年末かぁ、長いなぁ。」
「すぐだよ、それで?今回は何仕込んだの?」
「失礼な、でも年末迄には結構成果出てると思うなぁ。」
「色々やらかしてんだろなぁー。」
「千春程じゃないよ。」
「失礼な!」
「「・・・あははは。」」
 大樹は鞄とバッグを手に取る。

「はいコレ。」
「なに?」
「今作ったやつ。」
 大樹は紙袋を開けると饅頭が入っていた。

「饅頭?」
「うん、旅館のお土産を試作中なの。」
「温泉饅頭的な?」
「そ、重曹ないから酵母で作ってるんだけど、時間かかるんだよねぇ。」
「まぁ重曹を作るとなるとそれなりの規模の施設がいるからね。」
 大樹は一口サイズの饅頭を口に入れる。

「うん、美味しい、これで良いんじゃない?」
「そだね。」
「あと焼印入れたら?」
「焼印?」
「ほら、この上に絵を焼くんだよ。」
「うーん、絵ねぇ。」
「ドラゴンの焼印とか良いんじゃないかな。」
「いいね!作ってみよ!」
 千春と大樹は門を通り日本に戻る、そして玄関でタクシーを待つ、しばらくすると車がやってきた。

「千春それじゃ。」
「はーい、体気を付けてね。」
「うん、千春もね。」
 大樹は手を振りタクシーに乗り込む、窓から手を振る大樹、千春は笑顔で手を振り返すと、車は遠ざかっていった。

「次は年末かぁ。」
 ポツリと呟くと千春は異世界へ戻る、そして門の有る部屋から応接間に入ると、アイトネとマルグリットがソファーで寛いでいた。

「見送り終わったの?」
「はい、今行きました、どうされました?アイトネも呼んでないのに。」
『美味しそうなお菓子作ってたから来ちゃった♪』
「私もお茶を飲みに来ただけよ?」
 2人は千春に微笑む。

「えーっと・・・、はい!持ってきますね♪サフィー緑茶お願い♪」
「はーい♪」
 嬉しそうに言う千春にサフィーナも笑みをこぼし返事をする。

「どうぞ、温泉饅頭です。試作中なんですけど。」
 温泉饅頭をお皿に数個乗せてテーブルに並べる。

「温泉饅頭?」
「はい、温泉の水を使って作った饅頭です、アイトネの好きな餡子入りです。」
『美味しそう♪食べて良い?』
「どぞー♪」
 マルグリットとアイトネは温泉饅頭を口に入れると目を開く。

「美味しいわ♪」
『本当、餡子とよく合うわ♪』
「良かった、コレを旅館で売る予定なんです。」
「お金が必要なの?」
「いえ、ルノアーさんが何か名物になる物無いかって考えてたんで、あとこの饅頭の上にドラゴンの焼印を付けようかってさっきお父さんと話してた所です。」
 あはははと笑いながら千春が言うと、アイトネが少し考え手を掲げる。

『んー、こんな感じかしら?』
「ふぇっ?!」
 アイトネの手には持ち手から伸びた金属の先にドラゴンの印が付いた物が握られていた。

「へ?今作ったの?」
『美味しい饅頭のお礼にあげるわ♪』
「そう言うのってダメじゃなかった?』
『神授は別に構わないわよ?』
「ありがとう、このドラゴンの所を焼くの?」
 ドラゴンの型がついた所を見ながら言う千春。

『魔力を通せば焼ける様にしてるわよ。』
「マ?便利すぎる。」
 千春は魔力を通し、饅頭の1つにペタンと付けると、ジュッと軽い音がする。

「おぉぉーーーー!」
「良いわねぇ。」
 マルグリットは焼印のついた饅頭を手に取り焼印確認しパクリと食べる。

「もっと持ってきますねー。」
 千春は今蒸している残りを取りに行く。

「アイさん何か付けた? (ボソッ)」
『よく気付いたわね。 (ボソッ)』
「最初に食べた饅頭には無かった魔力を感じたもの。 (ボソッ)」
「持ってきましたー!アイトネまだ食べる?」
『頂くわ♪』
「チハルさん!私も手伝います!」
 モリアンが手を挙げ焼印に魔力を込めると、並べられた饅頭にポンポンポンと焼きを入れていく。

「量産するなら同じ焼印ダーサンに作ってもらおうかな。」
「チハル、それなら私も用事があるから伝えておくわ、サンプルで一個貰うわね。」
「一個と言わずいっぱいどうぞ!」
 ルノアーから渡された箱に10個並べると、上から薄い紙をかけ蓋を閉める。

「ダーサンに作ってもらった箱です、コレも丁度良い感じで見せたかったのでこのまま見せて下さい。」
「分かったわ、チハル今日は一緒に寝ましょうね♪」
「あー、えーっと、はい。」
「フフッ、それじゃまた後でね。」
 マルグリットは付き人のエリーナを連れ部屋を出て行く。

『今日はヨリ達は来ないの?』
「うん、みんな今日は来ないね。」
『あら、そうなのね、寂しくない?』
「大丈夫だよ、サフィーやモリーも居るし、ラルカやマクリも居るもんね♪」
「俺も居るぞ?」
「儂もおるぞ?」
「吾輩もいるにゃ?」
「私もいるわよ~?」
 ルプやロイロ、三珠と彩葉までが声を上げる。

「ね?寂しがる暇ないんだよ。」
『ほんとね。』
 千春とアイトネはクスクスと笑っているとお客が入って来る。

「チハルおねえちゃんただいま!」
「おかえりーユラ、おやつあるよー。」
「やったぁ!」
 キツネ耳をピコピコ動かしピョンっとジャンプして喜ぶユラは、千春の座るソファーに飛び乗る。

「お姫様がそんな事したらダメだよー。」
「チハルおねえちゃんもしてたよ?」
「くっ・・・見られてたか。」
「おやつってこれ?」
「そ、ドラゴン温泉饅頭だよ。」
「うわぁ強そう!」
「お食べー。」
「いただきまーす!」
 ユラはニッコニコで饅頭を頬張る、ユラは流石に一口では食べれないのか、半分齧るとモグモグと咀嚼する。

「んー!」
「美味しい?」
 コクコクと頭を上下しながら笑顔で答える。

「ルプ達もたべr・・・食べてるじゃん!」
 テーブルでペタペタとモリアンが焼き印を押すと、人狼姿のルプと人型のロイロ、そして三珠がパクパクと食べていた。

「・・・どう?」
「んっまいぞ、流石チハルじゃなぁ。」
「あぁ、甘さも押さえてある、日本酒に合うんじゃねぇか?」
「うみゃ!これはうみゃ!」
「ミタマもっと食べて♪」
「そりゃよかったね、モリー達も食べて良いからね。」
「はい!いただきます!」
 ワイワイと騒ぎながら饅頭を食べる一同。

「そう言えばモートさん最近見ないね。」
『モート国近辺を見る様に言ったもの、結構人気有るのよねぇ。』
「おぉー神様してんだー。」
『まんざらでもないみたいよ?お供えなんて私より多いんだから。』
「ありゃ~、それはアイトネ的にどうなのさ。」
『私はチハルの料理が直接食べれるもの♪幸せよ~♪』
「そっか、今日の晩御飯食べて行く?」
『やった♪頂くわ♪』
 嬉しそうにアイトネが答えると、ロイロが饅頭を口に入れながら千春に言う。

「チハル!酒呑んで良いか!?」
「え!早くない!?」
「良いじゃねえか、今日はのんびりするんだろ?」
「はいはい、ついでに注文もしておくよ、御要望はありますかーーーー。」
「ウイスキーじゃ!12年のアレ頼む!」
「俺は日本酒で、この前の大吟醸を頼む。」
「チハル!チハル!この前ソラが持ってきたアレが欲しいにゃ!!!!」
「チハル様!私もほしいですニャ!」
「はいはい、ミタマとマクリはチュゥ~ルね・・・って酒屋に売ってないな、コンビニ行ってくるかぁ。」
「コンビニ行くなら付き合いますよ。」
 ワイワイと騒ぐ中サフィーナが千春に言う。

「さんきゅ、それじゃ皆適当にまっててねー、コンビニいってくるぁ~。」
「「「「「「「いってらっしゃーい。」」」」」」」
 千春とサフィーナは普段着に着替えると日本に戻り玄関を出る。

「はぁ、ほんっとやかましいなぁ。」
 千春は笑みを浮かべながら玄関を出る。

「皆心配してるのよ。」
「わかってるよー、寂しがる暇くれないもんねぇ。」
 2人はクスクスと笑い、夏の夕暮れ時を楽しみながらコンビニへ向かった。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幸子ばあさんの異世界ご飯

雨夜りょう
ファンタジー
「幸子さん、異世界に行ってはくれませんか」 伏見幸子、享年88歳。家族に見守られ天寿を全うしたはずだったのに、目の前の男は突然異世界に行けというではないか。 食文化を発展させてほしいと懇願され、幸子は異世界に行くことを決意する。

転生王女は現代知識で無双する

紫苑
ファンタジー
普通に働き、生活していた28歳。 突然異世界に転生してしまった。 定番になった異世界転生のお話。 仲良し家族に愛されながら転生を隠しもせず前世で培ったアニメチート魔法や知識で色んな事に首を突っ込んでいく王女レイチェル。 見た目は子供、頭脳は大人。 現代日本ってあらゆる事が自由で、教育水準は高いし平和だったんだと実感しながら頑張って生きていくそんなお話です。 魔法、亜人、奴隷、農業、畜産業など色んな話が出てきます。 伏線回収は後の方になるので最初はわからない事が多いと思いますが、ぜひ最後まで読んでくださると嬉しいです。 読んでくれる皆さまに心から感謝です。

転生少女の異世界のんびり生活 ~飯屋の娘は、おいしいごはんを食べてほしい~

明里 和樹
ファンタジー
日本人として生きた記憶を持つ、とあるご飯屋さんの娘デリシャ。この中世ヨーロッパ風ファンタジーな異世界で、なんとかおいしいごはんを作ろうとがんばる、そんな彼女のほのぼのとした日常のお話。

ドアマットヒロインはごめん被るので、元凶を蹴落とすことにした

月白ヤトヒコ
ファンタジー
お母様が亡くなった。 それから程なくして―――― お父様が屋敷に見知らぬ母子を連れて来た。 「はじめまして! あなたが、あたしのおねえちゃんになるの?」 にっこりとわたくしを見やるその瞳と髪は、お父様とそっくりな色をしている。 「わ~、おねえちゃんキレイなブローチしてるのね! いいなぁ」 そう、新しい妹? が、言った瞬間・・・ 頭の中を、凄まじい情報が巡った。 これ、なんでも奪って行く異母妹と家族に虐げられるドアマット主人公の話じゃね? ドアマットヒロイン……物語の主人公としての、奪われる人生の、最初の一手。 だから、わたしは・・・よし、とりあえず馬鹿なことを言い出したこのアホをぶん殴っておこう。 ドアマットヒロインはごめん被るので、これからビシバシ躾けてやるか。 ついでに、「政略に使うための駒として娘を必要とし、そのついでに母親を、娘の世話係としてただで扱き使える女として連れて来たものかと」 そう言って、ヒロインのクズ親父と異母妹の母親との間に亀裂を入れることにする。 フハハハハハハハ! これで、異母妹の母親とこの男が仲良くわたしを虐げることはないだろう。ドアマットフラグを一つ折ってやったわっ! うん? ドアマットヒロインを拾って溺愛するヒーローはどうなったかって? そんなの知らん。 設定はふわっと。

どうぞ「ざまぁ」を続けてくださいな

こうやさい
ファンタジー
 わたくしは婚約者や義妹に断罪され、学園から追放を命じられました。  これが「ざまぁ」されるというものなんですのね。  義妹に冤罪着せられて殿下に皆の前で婚約破棄のうえ学園からの追放される令嬢とかいったら頑張ってる感じなんだけどなぁ。  とりあえずお兄さま頑張れ。  PCがエラーがどうこうほざいているので消えたら察してください、どのみち不定期だけど。  やっぱスマホでも更新できるようにしとかないとなぁ、と毎度の事を思うだけ思う。  ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。

女子力の高い僕は異世界でお菓子屋さんになりました

初昔 茶ノ介
ファンタジー
昔から低身長、童顔、お料理上手、家がお菓子屋さん、etc.と女子力満載の高校2年の冬樹 幸(ふゆき ゆき)は男子なのに周りからのヒロインのような扱いに日々悩んでいた。 ある日、学校の帰りに道に悩んでいるおばあさんを助けると、そのおばあさんはただのおばあさんではなく女神様だった。 冗談半分で言ったことを叶えると言い出し、目が覚めた先は見覚えのない森の中で…。 のんびり書いていきたいと思います。 よければ感想等お願いします。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

処理中です...