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里の掟より天丼!

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「おお~でっかーい!」
 千春は頼子と侍女達を連れ、空飛ぶ箒でクジラの所まで移動する。

「こりゃデカいわ。」
 頼子はクジラと同じ目線まで飛ぶ、不意に視線を感じ見渡すとクジラと目が合う。

「フォーーーーン。」
「こんにちは、クジラさん。」
「いらっしゃい~♪」
 千春と頼子は笑みを浮かべクジラに答える。

「チハル、言葉分かるの?」
「あ、多分翻訳魔道具だわ。」
 千春が言うとサフィーナ達はポシェットから翻訳魔道具のブレスレットを付ける。

『こんにちわお嬢さん達。』
「ようこそジブラロール王国へ。」
 サフィーナは丁寧に返事を返す、下ではゴンドラからマリーナとガゥアン、そしてお付きの者が降りて来ていた。

「あ、マリーナさんだ。」
 千春は箒を操作しながら下へ降りると、マルグリットが城から出て来る所だった。

「マリーナ、いらっしゃい。」
「来ちゃったわ。」
「来ちゃったわじゃないわよ、先触れくらい出来たでしょうに。」
 文句を言うマルグリット、しかし顔は笑顔だ。

「母上!」
「エンハルト、この方がフリエンツ王国女王、マリーナ・フリエンツ王女よ、マリーナ、この子は私の長男のエンハルトよ。」
「あら、会った事あるわよ、ガゥアンを見つけた時に。」
「お久しぶりです。」
 エンハルトはお辞儀をし挨拶をする。

「それで?インパイ族を引っ張り出して何しに来たのよ。」
 マルグリットは大きなクジラを見上げながら言う。

「母上はこの空飛ぶクジラを知っているのですか?」
 エンハルトは一緒に見上げながら問いかける。

「昔話した事があったでしょう?クジラに乗って大陸を移動した事があるって。」
「・・・はい、作り話だと思っていました。」
 クジラから目を離さず答えるエンハルト。

「で?どうなの?」
「えっと、貿易をね?インパイ族に手伝ってもらおうかなって、ダメ?」
「は?この人達は海を守る掟が有るでしょうに。」
「あ、それは問題無いわ、ティスケリー!」
 マリーナが叫ぶと、クジラは一声鳴き人の姿になる、ティスケリーの姿はモデルもビックリするほどの美しい体つきに、胸と腰に布を一枚巻いているだけの姿だ。

「なに?」
「この方がジブラロール王国王妃、マルグリットよ。」
「こんにちは、よろしくねマルグリットさん。」
「こちらこそ、それで、里の掟は大丈夫なの?」
「掟?そんなものテンドンの魅力を知ったらゴミみたいな物よ。」
 ティスケリーはフン!と鼻を鳴らし答える。

「テンドン?」
 マルグリットはそう言うと千春を見る。

「え?私知りませんよ?」
 千春が答えると頼子が話す。

「私達だわ、千春が居ない時フリエンツ行って、海鮮丼とか天ぷら作った時についでに作った。」
「そう、それをティスケリーに出したら気に入っちゃって・・・。」
「ヨリ達が作ったテンドンはもっと美味しいって聞いたの!だからジブラロールまで来たの!」
「って言う事なのよ。」
 呆れた様にマリーナが言うと、マルグリットは笑みを浮かべてはいるが溜息を吐く。

「チハル、お願い出来る?」
「勿論です、何の天ぷらで作ります?」
「エビ!!!!」
「王道ですにゃぁ、って言うかティスケリーさん服無いんですか?」
「服着たら面倒だもの。」
 ティスケリーは物凄くめんどくさそうに呟く。

「チハルさん、私達海に生きる者はそう言う所あんまり気にしないのよ、私は一応女王だから着てるけどね?」
「そうなんですね、それじゃ天丼作りに行くかぁ、エビあったかなぁ。」
「それは大丈夫よ、沢山海鮮も持って来たわ。」
 マリーナが言うと、お付きの者がゴンドラから大量の箱を運び出す。

「準備良いなぁ。」
「ホントだね。」
「ヨリも手伝ってよー、原因はヨリ達なんだから。」
「くっそ、なんで今日私だけなんだよ。」
 今日は異世界に遊びに来ているのは頼子の1人だけだ、頼子はブツブツと文句を言う。

「チハルさん。」
「はい?何ですか?」
「そのー、デザート的な甘い物とかも作れます?」
「どんな物が良いです?」
「どんな物でも良いわ!」
 マリーナは申し訳なさそうに言うが、千春が問いかけると被り気味に答える。

「それじゃ厨房に行きまっしょい!」
「私天ぷらだけで食べたいな。」
「そういやお昼ご飯まだだもんねー、私達の分も作っちゃおう。」
 歩きながら千春と頼子は話す、後ろからマリーナとティスケリー、そしてマルグリットが話しながら付いて来る。

「それで、貿易するって言ってたけれど、本気でインパイ族でするつもり?」
「そのつもりよ、ねぇティスケリー。」
「ジブラロールに来たらテンドンが食べれるなら毎日でも来るわ。」
 真面目な顔をして言うティスケリー。

「毎日って、インパイ族でも片道2日は掛かるじゃない、往復で4日よ?」
「来るたびに沢山食べて帰るわ。」
「別にジブラロールとしては問題無いわよ、商人達はどうするの?交易も始まってるわよ?」
「そっちは商業ギルドと話をしているわ、こちらが運ぶ方はコストが高くなるって話してるから、ティスケリーの食べる海鮮以外は高級品しか無いわ、そして戻る便にはマルグリットの商会の品をお願いしたいの。」
「シャンプーとか?」
「そ!なんならそれだけでも良いわ。」
 マリーナは手を合わせながらお願いをする。

「生産量は増やしているけれど、満杯にして返す程は出せないわ、他も考えて頂戴。」
「わかったわ、今回は数日お邪魔したいのだけれど。」
「こっちは良いわよ、でもフリエンツ王国は大丈夫?ガゥアンも来てるじゃない。」
「問題無いわよ、女王やって長いけれど、仕事が無い日くらい幾らでもあるわよ。」
「・・・そうね、私も何も無い日くらいあるわね。」
「エイダンは?」
「あの人は今手が離せないわよ、過去一番って言うくらい忙しいから。」
「へぇ、戦争するわけでも無いでしょう?」
「するわけ無いわ、する相手も居ないわよ、いたとしても見たでしょ?ドラゴン達を。」
「えぇビックリしたわ。」
 話をしていると厨房に着く、マルグリット達3人は席で商談の話を始めた。

「さ~て、ハルトも食べるっしょ?」
「あぁ頂くよ。」
「忙しいって聞いたけど大丈夫なの?」
「・・・アリンが手伝ってくれる。」
「え!?」
 アリンハンドは思いっきり首をエンハルトに向ける。

「いやぁ良い部下を持ったもんだ。」
「ちょっと、ハルト殿下?」
「ほら、未来の嫁に良い所見せとけよ。」
 厨房に立ちエプロンを付ける千春と頼子、頼子はチラッとアリンハンドを見る。

「はい、手伝います。」
「アリンさんがんばれ~♪」
「頑張ります!」
 頼子の応援に元気に答えるアリンハンド。

「さ、それじゃ作るからハルト達は席で待っててね。」
 男達を追い出し、千春達は料理の下ごしらえを始める。

「ロイロ、ルプー、ビェリー、酒のツマミいるー?」
 酒盛りを始めるつもりなのか、ガゥアンも一緒に座ったテーブルには酒瓶が並べられている。

「たのむぞ!」
「あったらありがてぇなぁ。」
「天ぷらのあまりでいいばい!」
 三人は満面の笑みで返事をする、そして千春と頼子はルノアーや他の料理人と一緒に大量の天ぷらを作り出した。




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