上 下
354 / 744

明太ぱーてぃー!

しおりを挟む
「アイトネ、聖女が居たら魔物減るとか無いの?」
『無いわよ?』
 厨房から戻り、千春はのんびりお茶をしながらアイトネに問いかける。

「だよねー。」
『言ってた魔物の件?』
「うん、大丈夫かなーって思ってさ。」
『大丈夫よ、ドラゴン達が向かってるもの。』
「ドラゴン達なら大丈夫かな。」
『ロイロが指揮取ってるわね。』
 アイトネが言うと、千春は石を取り出しロイロの見ている物を見る。

「うわぁ、何こいつ。」
『オーガね。』
「鬼にゃー。」
「こっちにも居るんだな。」
「でっかいだけで人でも倒せるっちゃ。」
「脳筋ですからね、でも力は有りますよ。」
 千春がプロジェクターのように映し出すとペット組が呟く。

「これ日本にも居るの?」
「今は居ないな、昔ほど霊力が貯まる場所も無くなったからなぁ。」
「湧きやすい所は陰陽師が封印しとーけんね。」
「あ、倒しましたね。」
 人が乗ったドラゴンがオーガを蹂躙し、怪我人もなく討伐が終了していた。

「千春、冒険したい。」
 不意に頼子が言う。

「何?ダンジョンアタックする?」
「ダンジョンはなぁ、虫居るじゃん?」
「居るねぇ、でっかいGが。」
「でも今寒いよー。」
 日葵は外の雪景色を見ながら言う。

「チハル、あまり危険な事はしちゃダメよ?」
「でもお母様も冒険者でしたよね?」
「・・・そうね。」
「メグ、千春が動く時は俺達も一緒に行くから心配するな。」
「そうね、ルプさん達が付いてるのはわかるのだけれど、心配はするわよ。」
 マルグリットは千春に微笑みながら言う。

『ダンジョンじゃ無いけど、遺跡なら近くにあるわよ?』
「へぇ、でも遺跡って粗方探索されてたりしないの?」
『2000年くらい前の遺跡で誰も入ってないわね。』
「2000年?!」
「日本だと縄文時代とか?」
「弥生時代じゃん?」
「そんな古い遺跡何があるんだろ。」
『その時代の財宝は有るわよ?』
 それを聞いていたマルグリットがストップをかける。

「待ってちょうだい、遺跡は罠やここら辺に出ない魔物も巣食っているわよ。」
「お母様、遺跡に行った事あるんですか?」
「有るわよ、元帝国との境目あたりにある遺跡は面倒だったわ、罠だらけで。」
「アイトネ、どこらへんなの?」
『そうねぇ、ココからだと馬車で1日ちょっとかしら?』
 アイトネの言葉にまたもや反応するマルグリット。

「何ですって?!アイさん本当なの?」
『えぇ、南の森の中枢に隠れて有るわよ。』
「お母様どうしたんですか?」
「遺跡は危険もあるけれど、その時代文献や財宝、それこそ遺産が沢山有るの、冒険者がそれを見逃すわけないのよ、そんな近くに遺跡が有るなんて信じられないわ。」
 興奮気味に捲し立てるマルグリットに皆は少し引き気味だ。

「冒険者ギルドに教えます?」
「いえ、その前に魔道師団と騎士団に調査をさせるべきね。」
『チハル達の暇つぶしはどうするの?』
 せっかく千春に教えたのにーと、少し不満げにアイトネが呟く。

「チハル行きたいの?」
「行きたいです!」
「それじゃ捜査第一陣としてお願いするわね、誰が行くの?」
「ソラとダイアは明日来るよね。」
「うん、その予定だね。」
「ミオとレナは?」
「親の実家行くって、お盆は来ないよ。」
「ありゃ、置いて行ったら怒るかな。」
「絶対文句言うね。」
「言うね!カシオミニ賭けてもイイ!」
「LIMEしてみっかぁ。」
 千春はLIMEの異世界グループLIMEにコメントを入れる。

(ちは~)アイトネに遺跡教えてもらったんだけど行く人~♪
(SORA)いく!
(だいや)行くに決まっとる!
(MIO~N)行きたい!いつ行くの!?
(れ~な~)えー!いつ行くの!盆動けない!

「ん~、行くなら盆明けか。」
「だろうねぇ、黙って行ったら怒られるね。」
「うん、盆明けだねぇ。」
「私もそうしてもらえると助かるわ、誰を連れて行くか考えないといけないわ。」
 千春達が言うと、マルグリットも答える。

「それじゃ盆は適当に暇つぶしするかぁ。」
「チハルおねえちゃんおなかすいた。」
「お、良い時間かな?」
「そだね、ご飯にしようか、ルペタちゃんは帰らなくても大丈夫?」
「大丈夫だよ、私が面倒見るって連れて来たから一泊しても大丈夫。」
 日葵はルペタの頭をポンポンとしながら2人で微笑む。

「それじゃ食べますかぁ。」
 千春とサフィーナが料理を出すと、サリナ達がテーブルに並べて行く。

「めっちゃあるからモリー、侍女さん用のテーブルヨロ。」
「了解でっす!」
「エリーナさんとアルベルさんも食べてくださいね。」
「宜しいのですか?」
「見てよこの量。」
 次々と並べられる料理を指差す千春。

「アイトネ、モートさん呼んでくれる?」
『モート。』
「呼ばれないかと思ったよ。」
『フフッ、良かったわね。』
 モートはアイトネと一緒にソファーへ座る、マルグリットとアルデアも同じく座りこの4人の定位置となってきている。

「それじゃ・・・。」
「「「「「「いただきまーす!」」」」」」
「ん~おにぎりって美味しいわね。」
「おかあさまそれユラがにぎったの!」
「美味しいわよユラ。」
 ユラは嬉しそうに自分もおにぎりを食べる。

「梅干しうみゃぁ。」
「明太じゃないんかい!」
「いや、まずは梅干しかなって。」
「まぁ分かる。」
「ピザうめぇ!」
 千春達が食事をしているとロイロが戻って来た。

「あ、ロイロおかえりー。」
「チハルも無事戻って来たんじゃな。」
「うん、お土産もあるよ、討伐お疲れ様。」
「あぁ、散歩中に見つけてのぅ、訓練がてら竜騎士団にさせたんじゃ。」
「だよね、ロイロ1人でも倒せそうだったもん。」
「訓練はしておるが、実践もさせんとな。」
「ロイロは散歩と言いながらよく巡回してるよな。」
「散歩じゃ、ルプも回っとるじゃろ。」
「たまにな~。」
「ルプもロイロもありがとうね、今日はお土産のお酒あるよ~ん。」
 千春は祖父から貰った地酒と焼酎を取り出す。

「ほう!呑んでもイイのか?」
「もち、焼き明太もあるから肴にして良いよ。」
 千春がそう言うと、ビェリーとコンもロイロの所に集まり呑みだす。

「「「「かんぱーい!」」」」
「アハハハ、ご飯より酒かい。」
「いつもの光景だねぇ。」
「そだね、お母様も呑みます?」
「戻って色々とやる事有るから今日はやめておくわ。」
「それじゃこれ持って行ってください。」
「なに?コレ。」
「地ビールって言う、こちらで言うエールなんですけど美味しいらしいです。」
「へぇ、頂くわね。」
 千春はお酒をふるまうと席に座り改めておにぎりを食べる。

「やっぱ明太おにぎりは正義だなぁ。」
「え、鮭じゃん?」
「いやいや、エビマヨでしょ。」
「どれもおいしいよ?」
「・・・うん、美味しいね。」
「でも・・・ウメはすっぱい!」
 ユラが手にしたおにぎりを見ると梅干しが入っていた、ユラは顔をすぼめながら言うのを3人はケラケラ笑いながら食事を続けた。

(ユラの梅干しおにぎりはルプが美味しく頂きました。)



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幸子ばあさんの異世界ご飯

雨夜りょう
ファンタジー
「幸子さん、異世界に行ってはくれませんか」 伏見幸子、享年88歳。家族に見守られ天寿を全うしたはずだったのに、目の前の男は突然異世界に行けというではないか。 食文化を発展させてほしいと懇願され、幸子は異世界に行くことを決意する。

転生王女は現代知識で無双する

紫苑
ファンタジー
普通に働き、生活していた28歳。 突然異世界に転生してしまった。 定番になった異世界転生のお話。 仲良し家族に愛されながら転生を隠しもせず前世で培ったアニメチート魔法や知識で色んな事に首を突っ込んでいく王女レイチェル。 見た目は子供、頭脳は大人。 現代日本ってあらゆる事が自由で、教育水準は高いし平和だったんだと実感しながら頑張って生きていくそんなお話です。 魔法、亜人、奴隷、農業、畜産業など色んな話が出てきます。 伏線回収は後の方になるので最初はわからない事が多いと思いますが、ぜひ最後まで読んでくださると嬉しいです。 読んでくれる皆さまに心から感謝です。

転生少女の異世界のんびり生活 ~飯屋の娘は、おいしいごはんを食べてほしい~

明里 和樹
ファンタジー
日本人として生きた記憶を持つ、とあるご飯屋さんの娘デリシャ。この中世ヨーロッパ風ファンタジーな異世界で、なんとかおいしいごはんを作ろうとがんばる、そんな彼女のほのぼのとした日常のお話。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?

水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが… 私が平民だとどこで知ったのですか?

ドアマットヒロインはごめん被るので、元凶を蹴落とすことにした

月白ヤトヒコ
ファンタジー
お母様が亡くなった。 それから程なくして―――― お父様が屋敷に見知らぬ母子を連れて来た。 「はじめまして! あなたが、あたしのおねえちゃんになるの?」 にっこりとわたくしを見やるその瞳と髪は、お父様とそっくりな色をしている。 「わ~、おねえちゃんキレイなブローチしてるのね! いいなぁ」 そう、新しい妹? が、言った瞬間・・・ 頭の中を、凄まじい情報が巡った。 これ、なんでも奪って行く異母妹と家族に虐げられるドアマット主人公の話じゃね? ドアマットヒロイン……物語の主人公としての、奪われる人生の、最初の一手。 だから、わたしは・・・よし、とりあえず馬鹿なことを言い出したこのアホをぶん殴っておこう。 ドアマットヒロインはごめん被るので、これからビシバシ躾けてやるか。 ついでに、「政略に使うための駒として娘を必要とし、そのついでに母親を、娘の世話係としてただで扱き使える女として連れて来たものかと」 そう言って、ヒロインのクズ親父と異母妹の母親との間に亀裂を入れることにする。 フハハハハハハハ! これで、異母妹の母親とこの男が仲良くわたしを虐げることはないだろう。ドアマットフラグを一つ折ってやったわっ! うん? ドアマットヒロインを拾って溺愛するヒーローはどうなったかって? そんなの知らん。 設定はふわっと。

大聖女の姉と大聖者の兄の元に生まれた良くも悪くも普通の姫君、二人の絞りカスだと影で嘲笑されていたが実は一番神に祝福された存在だと発覚する。

下菊みこと
ファンタジー
絞りカスと言われて傷付き続けた姫君、それでも姉と兄が好きらしい。 ティモールとマルタは父王に詰め寄られる。結界と祝福が弱まっていると。しかしそれは当然だった。本当に神から愛されているのは、大聖女のマルタでも大聖者のティモールでもなく、平凡な妹リリィなのだから。 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...