上 下
348 / 744

墓参り!

しおりを挟む
「よし!綺麗!」
「お花はここに挿していいの?チハル。」
「うん。」
 藤井家の墓を綺麗に掃除する千春とサフィーナ、大樹達はお寺の方で話中だ。

「こちらのお墓はこんな感じなんですね。」
「向こうはどんな感じなの?」
「石の板を地面に埋めますね。」
「日本はこんな感じ、国が変われば多種多様だね。」
 千春とサフィーナは掃除道具を片付けながら話をしていると、大樹達が来る。

「お待たせ、綺麗になったね。」
「ふっふっふー、でっしょ。」
 大樹は線香に火をつけ墓の前に置く、皆は手を合わせる、エンハルトとサフィーナは左手を握り首の下に当て目を閉じ頭を下げる。

「・・・。」
 拝み終わり、ふと千春は横を見ると、小さな犬が墓の前に座っている。

「・・・犬?」
 千春が呟くと、エンハルトも千春の視線の先を見る。

「何も居ないぞ?」
「・・・ルプ、あのワンコ。」
「あぁ、主人が死んだ事も自分が死んでいる事も分かっていない者だな。」
「成仏出来ないの?」
「アレはしないな、あのまま墓守になる。」
「・・・ルプにも無理なの?」
「出来るが今更だろう、100年と言わないくらいあそこに居るみたいだからな。」
「えぇぇ、可哀想。」
「気にしていたらキリが無いぞ?輪廻に戻れない魂なんぞ沢山居るからな。」
 ルプはそう言うと千春は不満げに言う。

「でも、手の届く所には差し出したいじゃん?」
 千春が呟くとコンが答える。

「僕が話して来ますね。」
 コンはテコテコと歩き、犬の霊に話しかける。

「千春、どうしたんだい?」
「んー、ちょっと可哀想なワンコの霊が居てね。」
「千春霊感あるの?」
「あれ?何で霊見えんの?私。」
「聖女だからじゃねえか?」
「はぁ?!そんなオプション付いてるとか聞いてないんですけどぉ?!」
 文句を言っていると、コンが戻ってきた。

「ダメでした、分かっているけれど離れたく無いそうです。」
「そっか、知ってて居るならしょうがないね。」
 もう一度チラリと犬の霊を見る千春、犬の霊は主人の眠る墓石を見続けていた。


-----------------


「ただいまおばぁちゃん!」
「おかえり、報告出来たかい?」
「うん、めっちゃした。」
「チーちゃんとハルト君、サフィーちゃんに大樹さん、一度に報告されて大変だろうねえ。」
 娘が困った顔を想像し、文恵は少し悲しげに微笑む。

「おばぁちゃん籠持ってどこ行くの?」
「畑に野菜採りにね。」
「手伝う!」
「疲れてないかい?」
「大丈夫だよん。」
「わっちも手伝うけん!」
「僕も!」
「・・・!!」
 ビェリーとコン、人形も手を挙げる。

「俺も手伝うか。」
「私も手伝います。」
 エンハルトとサフィーナも千春の後ろから言うと、文恵は畑に案内する。

「晩御飯のおかずだからそんなに採らなくても良いんだけどね。」
「収穫しないと腐るんじゃない?すっごいあるよ?」
 燦々と夏の日差しを浴びた野菜は沢山実っている。

「腐って落ちた物は肥料になるから無駄にはならないよ、ご近所さんにも配るからね。」
「私もらって良い?」
「あー、ビェリーちゃんが持てたわねぇ、いくらでも持っていきな。」
「よっしゃー!ビェリー頼んだよ!」
「まかせり!」
「僕も頑張ります!」
「・・・!!」
 2人と1体は畑に入り、真っ赤なトマトやとうもろこし、胡瓜、ピーマンを収穫して行く。

「色々植えてるね、おばぁちゃん。」
「他にやる事無いからねぇ。」
 ナスを採りながら話をしていると、ルプが狼の姿で林から現れる。

「千春、猪が居るぞ。」
「えぇー、おばぁちゃん猪居るって。」
「ルプちゃん狩っといで。」
「おう、行ってくる。」
 ルプはそう言うと林に駆け込む。

「良いの?猪狩りして。」
「構わないよ、そこの林は爺さんの土地だし狩猟許可も有るからね。」
「へぇ・・・。」
「分かってないでしょ、チーちゃん。」
「うん。」
 話をしているとルプはすぐに戻って来た。

「婆さん狩って来たぞ。」
「爺さんに渡しておいで、直ぐに血抜きしないと臭くなるからね。」
「分かった。」
 ルプは狼男の姿で自分よりも重そうな猪を担ぎ家の裏に持って行く。

「土地神様なのに言う事聞いてくれるねぇ、チーちゃんのペットって言ってたけど冗談じゃなかったのかね。」
「まぁ普段から言ってるからね。」
 千春は畑を見ると、エンハルトとサフィーナも楽しそうに野菜を収獲していた、千春も続けて収獲を手伝う、そして大量の野菜はビェリーが影に収納し食べる分を家に持って帰った。


-------------


「おぉ・・・グロっ。」
 千春が庭を通ると、源治とルプは一緒に猪を捌いていた。

「おー、チー今日はボタン鍋にするか?」
「このクッソ暑いのに?」
「暑い時に熱い物食うのも良いだろ?」
「えぇぇ。」
「チハル、ボタンナベって?」
「えっと、猪の肉を使った鍋、すき焼き良くするじゃん?アレの味と肉が違う食べ方。」
「美味しいんですか?」
「ん~、あんまり好きくない。」
 サフィーナに説明をしながら縁側を見ると自然薯が置いてあった。

「山芋じゃん!」
「おー、さっき取って来た。」
「ナイスおじぃちゃん!」
「コレは嬉しいんですね。」
「うん、トロロご飯超美味しいからね!おばぁちゃん!!!山芋のトロロご飯してー!」
「はいよー、爺さん角煮作るから良い部位ちょうだいな。」
「おう、そこの肉もってけ。」
 源治は切り分けた肉を指差すと文恵はカゴに入れそのまま台所へ向かった。


-------------


「それじゃ下ごしらえするかね。」
「どっちから?」
「チーちゃんは自然薯の方いいかい?」
「ほーい、皮は?」
「ん~今日は剥こうかね。」
「りょ。」
 文恵は肉を切り分けていく、千春は自然薯を皮を剥くと、すり鉢でゴリゴリと擦って行く。

「ドロドロですね。」
「うん、おばぁちゃんのトロロご飯美味しいよー。」
 横では文恵が壺から味噌を取り出し、だし汁と合わせている。

「チーちゃん擦り終わったらコレ入れてね。」
「はーい。」
 3人は猪と自然薯、そして沢山の夏野菜を使い料理を作った。


-------------


「こんなもんだな。」
「上手いもんだな。」
「ルプが手伝ってくれたからな。」
 満足そうに言う源治はルプにお礼を言うと、ビェリーを見る。

「コレ全部持って行くだろ?」
「いいん?爺ちゃん食べんの?」
「冷凍庫に沢山あるからな、ストックする程じゃねぇんだ。」
「んじゃ持って帰るばい。」
 ビェリーは切り分けた肉と骨、皮まで全部影に収納する。

「すげぇもんだなぁ流石土地神ってところか。」
「俺は使えねぇけどな。」
「僕も使えませんね。」
 ルプとコンはビェリーを見ながら呟く。

「さて、ちょいと酒買いに行くか!」
「お?呑むのか?」
「あぁ、婆さんの角煮はうめぇぞぉ、日本酒が良く合うんだコレが、車出すから付いて来い!」
「おう!」
「よっしゃ!」
「やったぁ!」
 源治はルプ達を連れ、近所と言うには少し遠い酒屋まで車を走らせた。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幸子ばあさんの異世界ご飯

雨夜りょう
ファンタジー
「幸子さん、異世界に行ってはくれませんか」 伏見幸子、享年88歳。家族に見守られ天寿を全うしたはずだったのに、目の前の男は突然異世界に行けというではないか。 食文化を発展させてほしいと懇願され、幸子は異世界に行くことを決意する。

転生王女は現代知識で無双する

紫苑
ファンタジー
普通に働き、生活していた28歳。 突然異世界に転生してしまった。 定番になった異世界転生のお話。 仲良し家族に愛されながら転生を隠しもせず前世で培ったアニメチート魔法や知識で色んな事に首を突っ込んでいく王女レイチェル。 見た目は子供、頭脳は大人。 現代日本ってあらゆる事が自由で、教育水準は高いし平和だったんだと実感しながら頑張って生きていくそんなお話です。 魔法、亜人、奴隷、農業、畜産業など色んな話が出てきます。 伏線回収は後の方になるので最初はわからない事が多いと思いますが、ぜひ最後まで読んでくださると嬉しいです。 読んでくれる皆さまに心から感謝です。

転生少女の異世界のんびり生活 ~飯屋の娘は、おいしいごはんを食べてほしい~

明里 和樹
ファンタジー
日本人として生きた記憶を持つ、とあるご飯屋さんの娘デリシャ。この中世ヨーロッパ風ファンタジーな異世界で、なんとかおいしいごはんを作ろうとがんばる、そんな彼女のほのぼのとした日常のお話。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?

水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが… 私が平民だとどこで知ったのですか?

ドアマットヒロインはごめん被るので、元凶を蹴落とすことにした

月白ヤトヒコ
ファンタジー
お母様が亡くなった。 それから程なくして―――― お父様が屋敷に見知らぬ母子を連れて来た。 「はじめまして! あなたが、あたしのおねえちゃんになるの?」 にっこりとわたくしを見やるその瞳と髪は、お父様とそっくりな色をしている。 「わ~、おねえちゃんキレイなブローチしてるのね! いいなぁ」 そう、新しい妹? が、言った瞬間・・・ 頭の中を、凄まじい情報が巡った。 これ、なんでも奪って行く異母妹と家族に虐げられるドアマット主人公の話じゃね? ドアマットヒロイン……物語の主人公としての、奪われる人生の、最初の一手。 だから、わたしは・・・よし、とりあえず馬鹿なことを言い出したこのアホをぶん殴っておこう。 ドアマットヒロインはごめん被るので、これからビシバシ躾けてやるか。 ついでに、「政略に使うための駒として娘を必要とし、そのついでに母親を、娘の世話係としてただで扱き使える女として連れて来たものかと」 そう言って、ヒロインのクズ親父と異母妹の母親との間に亀裂を入れることにする。 フハハハハハハハ! これで、異母妹の母親とこの男が仲良くわたしを虐げることはないだろう。ドアマットフラグを一つ折ってやったわっ! うん? ドアマットヒロインを拾って溺愛するヒーローはどうなったかって? そんなの知らん。 設定はふわっと。

大聖女の姉と大聖者の兄の元に生まれた良くも悪くも普通の姫君、二人の絞りカスだと影で嘲笑されていたが実は一番神に祝福された存在だと発覚する。

下菊みこと
ファンタジー
絞りカスと言われて傷付き続けた姫君、それでも姉と兄が好きらしい。 ティモールとマルタは父王に詰め寄られる。結界と祝福が弱まっていると。しかしそれは当然だった。本当に神から愛されているのは、大聖女のマルタでも大聖者のティモールでもなく、平凡な妹リリィなのだから。 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...