上 下
296 / 748

モート国でお買い物!

しおりを挟む
「うん!素材の味だね!」
「まぁジブラロールから遠いからねぇ。」
「でもパンは柔らかいよ。」
「パンは商業ギルドが広めてるからじゃん?」
「その分チハルが儲かってると、今幾らくらいなんだろうね。」
 千春達は元帝都の街を見学しながら食べ歩きをしていた。

「ここの酒は何じゃろうなぁ。」
「酒屋が有れば見たいな。」
「わっちも気になるっちゃけど。」
 ロイロ、ルプ、ビェリーもキョロキョロとあたりを見回しながら楽しんでいる。

「・・・サフィーナ様。」
「何かして来る感じでは無いようですが、警戒し続けるのも疲れますね。」
 サリナが王宮から出てから、尾行してくる者に目だけを向けサフィーナは溜息を吐きながら言うと、モリアンとラルカが手を上げる。

「サフィーさん、私行ってきましょうか?」
「私も行きまーす♪」
「いえ、大丈夫みたい、2人はそのままユラとイーレン様を護衛してなさい。」
 サフィーナは2人にそう言うと、千春の横をまた歩き出す。

「サフィー何かあった?」
「いえ、何も問題は無いです、思ったよりものんびりお買い物が出来そうですね。」
 サフィーナは千春に微笑み返す、尾行していた者達は、マルグリットが千春の警護に分けた部隊が対応し連れ去って行った。

「チハル、こっち海産物あるよー?」
「モート国って海近いの?」
「この国の隣接している他の国が海沿いに有るんです、連邦国の一つなので交易が盛んなんでしょうね。」
 麗奈が見つけた海産物を見ながら千春が言うと、サフィーナが答える。

「へぇ、乾燥してる物も多いね、昆布とかあるかな。」
「チハルこれ何?」
「なんだろ、鑑定・・・乾燥した海藻だね、翻訳されてないからこの世界の物っぽい。」
「食べ方わかんないねぇ。」
「ぱっと見はヒジキっぽいから和食の味付けでイケるかも。」
「千春、これ鑑定してみてよ。」
「ほいほい、鑑定・・・おぉぉぉぉぉぉぉ!」
「何!?」
「天草キター!」
「天草って何作れるの?」
「ところてん!」
「そんな喜ぶ物か?」
「いやいや、これ寒天にも出来るから!ゼリー作れるんだよ!?」
「マジか、それは買わないとね。」
 乾燥した海藻が沢山置いてある店で、他にも大量の海藻を買いまくる。

「うん!モート国来て良かったわ。」
「ハース領には無かったの?」
「無かったんだよねぇ、これ持って行って探してもらおうか。」
「そうだね、人魚さん達なら水中で収獲しまくれるし?」
「うんうん、ちょっとお給金弾んでもイイね見つけれるなら。」
 ウキウキの千春と頼子、美桜は気付けばエーデルと、麗奈もホーキンと一緒に店を見て回っていた。

「チハル、ミオとレナの世界が甘いんだけど。」
「そう?私達は見慣れてるからなぁ。」
「レナもなんかかんか言いながらホーキンさんと仲良いよね。」
「チハルはハルトさん連れてこなかったの?」
「ハルトって何気に忙しいんだよねぇ、まぁ第一王子でお父様の仕事手伝ってるから。」
「アリンさんは?」
 日葵は頼子にも問いかける。

「アリンさんも魔導士団長で色々仕事してるんだよー、騎士団と違って分団してないっぽくてさー、仕事多いって泣いてたもん。」
「ありゃー、そりゃ残念だぁね。」
 違う世界を作り上げる2人を横目に見つつ、商店を見て回っていると、ゴロゴロとした芋ばかり売っている店が有った。

「おー芋じゃん。」
「お、お嬢ちゃん・・・お嬢様何か探してるの・・・お探しで?」
 店主の男は千春の身なりを見てたどたどしい敬語で話しかける。

「あ、普通に話してもらって大丈夫ですよ、これって全部芋ですか?」
「あぁすまねぇ、慣れてないもんでな、この周りの国で採れる芋だ。」
「おすすめは?」
「そうだなぁ、この芋は焼くと甘くて美味い、こっちはかなり粘り気があるが、精がつきやすぜ。」
「へぇ・・・鑑定(ボソッ)・・・おぉ!サツマイモっぽい!」
「赤くないよ?」
「でも、サツマイモの親戚っぽい事書いてるし甘いならそうなんじゃない?」
「こっちは山芋っぽいよね。」
 色も形も山芋のような芋は、鑑定すると山芋だった。

「山芋も料理色々出来るなぁ、おじさんコレとコレ沢山ください!」
「おおぅ、クマラ芋とヤム芋だな、クマラ芋は大量にあるが、どれくらい必要だい?」
 木箱に入ったサツマイモを指さす店主に、千春はその箱全部!と言い、お金を払う。

「ありがとよ、お嬢さん、これはサービスだ持って行ってくれ。」
 店主はそう言うと、瓶を1つ手渡す。

「なんです?これ。」
「このクマラ芋で作った酒だ、芋を作ってる農家で作ってるんだが仕入れる時に毎回貰うんだよ。」
「へぇ、ありがとうございます、酒飲みがいっぱいいるんで有難いです。」
 千春はお酒を受け取ると店を出る、そして店の外にいるルプに見せる。

「お酒もらったよー。」
「楽しみだな、芋の酒か。」
「チハルちょっと嗅いでもいいかいな?」
 ビェリーが嬉しそうにルプの頭の上で話しかけて来る。

「いいよー、はい。」
 千春は蓋をポンッと開けるとビェリーに嗅がせる。

「くはぁ!こりゃ原酒やん!」
「お?焼酎の原酒か?」
「へぇ、蒸留技術もあったんやねぇ、これ他んところでも売ってないかいな?」
 香りを嗅ぐと、ルプとビェリーは興奮気味に言う。

「焼酎の原酒って何?」
「さぁ?お酒良く知らないもん。」
 千春と頼子は頭を傾げながら問いかける。

「まぁ味付け香り付けのブレンドする前の物だ、とにかくアルコール度数が高い。」
「へぇぇ、それじゃお酒屋さん探す?」
「「探す!」」
 ルプとビェリーは食い気味に答えると、匂いをクンクンと嗅ぎながら周りを見て回る。

「ちょっと聞いてきますね!」
 話を聞いていたモリアンは、テテテーと小走りに走り、近くのお店に入り、直ぐに出て来る。

「チハルさん、あっちにお酒が色々売ってるらしいですよ!」
「ナイス!モリー!それじゃお酒買いに行こう!」
「「「おう!」」」
 そう言って皆は通りを進み、酒屋へ向かった。



-------------------


「王妃殿下、チハル様に付けた者より5人の尾行者を拘束、ペドラ子爵の名前が出てきました。」
 部隊の者から報告があり、マルグリットは頷く。

「まぁその下っ端じゃぁ居所は知らないでしょうねぇ、チハルの正体も把握してないでしょうから、取りあえず尾行しただけかしら。」
「そうねぇ、もし知って尾行してたのなら、王宮に間諜が居るって事よね。」
「その可能性も有るわねぇ。」
「でもそれっぽい人物は今の所居ないわ、怪しい動きをしている者も、王宮には今の所見当たらないわねぇ。」
 蝙蝠を色々な所に待機させ、情報を見ているアルデアは呟く、そしてアルデアとマルグリットはのんびりとお茶を飲んでいた。








しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幸子ばあさんの異世界ご飯

雨夜りょう
ファンタジー
「幸子さん、異世界に行ってはくれませんか」 伏見幸子、享年88歳。家族に見守られ天寿を全うしたはずだったのに、目の前の男は突然異世界に行けというではないか。 食文化を発展させてほしいと懇願され、幸子は異世界に行くことを決意する。

聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!

伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。 いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。 衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!! パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。  *表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*  ー(*)のマークはRシーンがあります。ー  少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。  ホットランキング 1位(2021.10.17)  ファンタジーランキング1位(2021.10.17)  小説ランキング 1位(2021.10.17)  ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。

転生王女は現代知識で無双する

紫苑
ファンタジー
普通に働き、生活していた28歳。 突然異世界に転生してしまった。 定番になった異世界転生のお話。 仲良し家族に愛されながら転生を隠しもせず前世で培ったアニメチート魔法や知識で色んな事に首を突っ込んでいく王女レイチェル。 見た目は子供、頭脳は大人。 現代日本ってあらゆる事が自由で、教育水準は高いし平和だったんだと実感しながら頑張って生きていくそんなお話です。 魔法、亜人、奴隷、農業、畜産業など色んな話が出てきます。 伏線回収は後の方になるので最初はわからない事が多いと思いますが、ぜひ最後まで読んでくださると嬉しいです。 読んでくれる皆さまに心から感謝です。

ぬいぐるみばかり作っていたら実家を追い出された件〜だけど作ったぬいぐるみが意志を持ったので何も不自由してません〜

望月かれん
ファンタジー
 中流貴族シーラ・カロンは、ある日勘当された。理由はぬいぐるみ作りしかしないから。 戸惑いながらも少量の荷物と作りかけのぬいぐるみ1つを持って家を出たシーラは1番近い町を目指すが、その日のうちに辿り着けず野宿をすることに。 暇だったので、ぬいぐるみを完成させようと意気込み、ついに夜更けに完成させる。  疲れから眠りこけていると聞き慣れない低い声。 なんと、ぬいぐるみが喋っていた。 しかもぬいぐるみには帰りたい場所があるようで……。     天真爛漫娘✕ワケアリぬいぐるみのドタバタ冒険ファンタジー。  ※この作品は小説家になろう・ノベルアップ+にも掲載しています。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

大聖女の姉と大聖者の兄の元に生まれた良くも悪くも普通の姫君、二人の絞りカスだと影で嘲笑されていたが実は一番神に祝福された存在だと発覚する。

下菊みこと
ファンタジー
絞りカスと言われて傷付き続けた姫君、それでも姉と兄が好きらしい。 ティモールとマルタは父王に詰め寄られる。結界と祝福が弱まっていると。しかしそれは当然だった。本当に神から愛されているのは、大聖女のマルタでも大聖者のティモールでもなく、平凡な妹リリィなのだから。 小説家になろう様でも投稿しています。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から「破壊神」と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

せっかく転生したのに得たスキルは「料理」と「空間厨房」。どちらも外れだそうですが、私は今も生きています。

リーゼロッタ
ファンタジー
享年、30歳。どこにでもいるしがないOLのミライは、学校の成績も平凡、社内成績も平凡。 そんな彼女は、予告なしに突っ込んできた車によって死亡。 そして予告なしに転生。 ついた先は、料理レベルが低すぎるルネイモンド大陸にある「光の森」。 そしてやって来た謎の獣人によってわけの分からん事を言われ、、、 赤い鳥を仲間にし、、、 冒険系ゲームの世界につきもののスキルは外れだった!? スキルが何でも料理に没頭します! 超・謎の世界観とイタリア語由来の名前・品名が特徴です。 合成語多いかも 話の単位は「食」 3月18日 投稿(一食目、二食目) 3月19日 え?なんかこっちのほうが24h.ポイントが多い、、、まあ嬉しいです!

処理中です...