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モート連邦国到着!

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「お待たせ、チハルこっちの準備は終わったわ。」
 マルグリットは千春の部屋に来ると、千春に言う。

「こっちも終わってまーす。」
「あら、美味しそうな物食べてるわね。」
 マルグリットは千春とアルデアの横に来ると、ビスケットを1つ摘み口に入れる。

「王妃殿下がそんな事して良いの?」
 クスクスと笑いながらアルデアはマルグリットに言う。

「ココにいる者で行儀が悪いとか言う人居ないでしょ?」
 千春は同じ事をしたらサフィーナに怒られるだろうなーと思いながら、マルグリットの付き人エリーナを見る、エリーナは千春と目が合うとニッコリ微笑む。

「チハル、教国で新しい食材見つけたのよね?」
「はい、バニラビーンズと鰻を見つけましたよ。」
「ウナギ?あの長ヒョロイ魚よね。」
「はい、美味しい食べ方があるんです、バニラは色々お菓子が作れますから。」
 千春はそう言うと、サフィーナを見る、サフィーナはアイテムボックスからバニラアイスを取り出し、お皿に少し盛り付けマルグリットに出す。

「あら、美味しそう。」
 スプーンで少し取り口に入れる。

「美味しいわね。」
「ですよねー、お菓子の幅も広がります♪」
「・・・この香り覚えがあるわ。」
「え?ジブラロールでですか?」
「えぇ、お香で嗅いだ事があるわ、メイソンに聞けば手に入るかも知れないわね。」
「それは有難い情報です!帰って来たら確認します!」
 興奮気味に答える千春、マルグリットはフフッと笑みをこぼす。

「チハル王女殿下、竜騎士団の準備が整いました。」
「はーい、それじゃ行きますかぁ、アイトネー。」
『はぁーい、あ!アイスクリーム食べてる!』
「はいはい、向こうであげるから。」
 アイスクリームを食べ損ねたアイトネは、ほっぺを膨らませるが、千春がそう言うとすぐに笑顔になる。

「ユラー、レンちゃーん、イーナ、行くよー。」
「はーい!」
 トランプで遊んでいたユラの手を引き、庭に出る。

「アイトネ、人数多いけど大丈夫?」
『問題無いわよ、メグちゃん移動先の指定はある?』
「そうね、領地では無いから少し離れた所から正規に入りましょう、チハル、ゴンドラは?」
「私のいつものゴンドラは私が、予備をサフィーが入れてますよ。」
「全員乗れそう?」
「それは大丈夫です。」
 千春は見回すと、教国に行ったメンバー、竜騎士団、マルグリットにアルデア、そしてマルグリットの付き人が4人、その後ろにはマルグリットの影の部隊が居た。

『それじゃ行くわよー。』
 アイトネは皆を見回し、手を振ると景色が変わった、遠くに道があるのか、小さく馬車が通っているのが見える。

「アイトネありがとう。」
『モートも見てるから、何かあれば呼びなさいね。』
「はーい、落ち着いたら呼ぶね。」
 アイトネは手を振り姿を消す、マルグリットは竜騎士団と部下に指示を出していた。

「エーデル、城門兵へ先行して連絡してもらえるかしら?」
「はっ、流石に街を竜騎士団で通るのは憚られます、直接王宮に向かう様話をしておきますので。」
「分かったわ、話が付いたら連絡を頂戴。」
 エーデルは頭を下げると、ホーキンもドラゴンに跨り、元帝国の城門へ飛んで行った。

「サフィー、お茶でもしましょうか。」
 何もない平原にサフィーナはテーブルとイスを出すと、ドラゴンが羽を広げ影を作る。

「良いのかな、こんな所でお茶して。」
 千春は道の方を見ると、人がこちらを見ながら走っていくのが見える。

「おー?逃げてない?」
「そりゃこんだけドラゴンいたら逃げるっしょ、商人さんとかかなぁ。」
「でもこんなに綺麗に整列してたら逆に何だろうって思わない?」
「どうだろねぇ。」
「直ぐに連絡が来るわよ、のんびり待ちましょう。」
 程なく通信魔導具から連絡があり、王宮への移動許可が出た。

「さて、行きましょうか。」
 マルグリットは立ち上がり皆に言うと、ママドラとロイロはゴンドラの上にスタンバイし、皆は乗り込む、そしてあっという間に飛び立ち、元帝都の上空を10数頭のドラゴンが飛ぶ。

「ママドラさんあの庭に降りて。」
 マルグリットが言う場所にはすでにドラゴンが2頭降りており、そこには数人立っていた、そこへゆっくりゴンドラを下ろすと、マルグリットが直ぐに降りる。

「マルグリット!」
「ルイーズ!」
 元皇妃のルイーズはマルグリットを見つけると、元皇妃の身分も忘れ、走って抱き着いた。

「マルグリット・・・マルグリット・・・。」
 ルイーズはマルグリットの胸で名前を何度も呼びながら泣いていた。

「ルイーズ、久しぶりね。」
「はい、お久しぶりです、マルグリット様の援軍のお陰で帝国を押さえる事が出来ましたわ。」
 ルイーズは涙の溜まった目を笑みに変え、マルグリットに答える。

「今日はどうされたのですか?このドラゴン達は?」
「詳しくは中で話しましょうか、入っても宜しくて?」
「もちろんです、マルグリット様を阻む扉などこの国には有りません。」
「昔みたいにメグと呼んで頂戴。」
 微笑みながらルイーズに言うと、ルイーズは涙を拭い答える。

「はい、メグ、私の事もルーと呼んで下さるかしら。」
「フフフッ、学園時代に戻ったみたいね、ルー。」
「後ろの少女達はどちら様?」
「この子はチハル、私の娘よ、ルーには『聖女』と言った方が分かりやすいかしら?」
 マルグリットが言うと、ルイーズは目を見開き片足を突き首を下げる。

「お初にお目に掛かります聖女様。」
「あ!え!やめてください、頭を上げてください!!えっと!お母様!?」
 急に膝を突くルイーズ、そしてルイーズの側近達もそろって膝を突き首を下げていた。

「あらあら、ルー、チハルはそう言うのが苦手なのよ、やめてあげてね。」
 マルグリットの言葉を聞き、立ち上がるルイーズと側近達。

「それではメグ、聖女チハル様ご案内致します、皆さまも御出で下さいませ。」
 千春と並んで立っていた頼子達にも声を掛けるルイーズ。

「さ、行きましょうか。」
 オロオロする千春達とは裏腹に、マルグリットはクスクスと笑いながらルイーズと一緒に王宮へ入って行った。

「・・・いこか。」
「そだね。」
「あーびっくりした。」
「聖女パワーすげぇ。」
「チハルおねえちゃんえらい人みたい。」
「聖女さまですもの、えらいのよ?ユラちゃん。」
 千春達は他人事の様に呟きながらマルグリットの後ろを付いて行った。






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