上 下
224 / 744

くも!

しおりを挟む
「キモっ!」
「デカ過ぎ!」
「無理!」
「イヤ!」
「一匹しか居ねーな、後一匹はどこだ?」
 嫌がる千春達をスルーし、ルプが気配を探る。

「ルプさん、あの壁あたりに気配がありますよ。」
 コンは大蜘蛛の右の壁を見ながら言う。

「ん?スライムか。」
「みたいですね、スライムは僕がやります。」
「分かった、任せる。」
 ルプは獣の姿のまま駆け出しあっという間に距離を詰めると至近距離から風魔法で切り刻む。

「結構硬いじゃねーか。」
 大蜘蛛は飛んでくる風の刃を鬱陶しそうに前足で払うと、尻を上げ糸を飛ばす。

「まぁ蜘蛛だから糸は出るわなぁ。」
 ルプは軽々と避けると、前足を振りさらに風を飛ばす、大蜘蛛は糸を飛ばすが、糸ごと風に切り刻まれ後退する。

「スライムの本体はここですか。」
 コンは九尾になりトコトコと歩き、壁の近くに来ると尻尾が燃える。

「えい!」
 掛け声と共に炎が壁に当たり燃え上がると、壁がうねり動き出す。

「擬態が上手いですねー。」
 コンがさらに火の玉を出すと、スライムは体を尖らせコンに向けて攻撃する、コンはひょいひょいっと避け、火の玉を飛ばす。

「よく燃えますねー。」
 スライムは燃えながらもがく様に震えると、体の数箇所が膨れ燃えたまま弾ける。

「あー!」
 コンは直ぐに下がるが、飛び散るスライムは千春達の所まで飛び散る。

「おー範囲攻撃かの?」
 ロイロは結界を広げると、燃えるスライムの欠片は結界に当たりべちょりと地面に落ち潰れて消えた。

「すみません!」
「大丈夫じゃ、気にせずやってしまえ。」
 コンが謝るとロイロは笑いながら答える。

「手伝った方がいいかいな?」
「ビェリーまで行く事は無いじゃろ。」
 ビェリーも心配はしていないが、ロイロに問いかける。

「もう手加減はしませんからね!」
 コンは9本の尻尾全てに火を纏わせると、一言呟く。

「夜炎花。」
 九尾の炎は壁に飛び突き刺さると壁一面を炎で覆う、そして花が咲く様に飛び散るスライムの欠片も空中で燃やし尽くす。

「おー、コンも派手にやってんな。」
 ルプはニヤリと笑うと呟く。

「風雷陣。」
 赤い大蜘蛛の周りに風が吹き荒れ砂が舞い、結界で球体の様になっていた、そして荒れ狂う球体の中に雷が発生する。

ドォォン!

「うへぇ。」
「オーバーキルって奴じゃ無い?これ。」
 千春と頼子は足が千切れ飛び、黒焦げになった蜘蛛を見ながら呟く。

「ミオー!」
 コンは子供の姿になり、手には青い石を待って駆け寄る。

「コン、これ何?」
「スライムから出ました!」
「エーデルさん、これ魔石?」
「はい、かなり良質な魔石ですね。」
 ソフトボールほどの魔石を美桜は受け取り千春に渡す。

「はいチハル。」
「何で渡すのよ。」
「え?何となく、私使わないし。」
「それなら麗奈が良く無い?魔石加工すんの得意だし。」
 千春は麗奈に魔石を渡していると、ルプが戻ってくる。

「良い運動になったな。」
 ルプは人狼の姿で千春に言いながら魔石を渡す。

「でか!」
「蜘蛛の魔石だ。」
 蜘蛛の魔石は赤く、ボーリングの玉程有る。

「・・・はい、麗奈。」
「えー、どうすんのこれ。」
「飛空挺に使えるんじゃ無い?」
「あー、とりあえず預かるわ。」
 麗奈はアイテムバッグに入れながら言う。

「2人とも凄かったね。」
「全力じゃ無いぞ、まぁ手加減はしなかったが。」
「後ろに火が飛んで行ったのでビックリしました。」
「これも龍脈とやらの影響かのう。」
 ロイロが呟く。

「どう言う事?」
「こう言うのはエーデルの方が詳しいじゃろ。」
 ロイロはエーデルに話を振る。

「そうですな、アレが地上に現れれば軍を動かすレベルの魔物です、ダンジョンの中層で湧く魔物にしては強過ぎます。」
「ルプ達見てたらそこら辺麻痺してくるね。」
「はい、銀級の冒険者ではあの蜘蛛は倒せないでしょう、金級のパーティでしたら倒せるでしょうが、あのレベルですと最下層クラスです。」
「へぇー、え?最下層はあんなの居るの?」
「居るでしょうね、行って見なければ分かりませんが。」
「ロイロ、進んでも大丈夫?」
 心配になり千春はロイロを見る。

「なーに言っとるんじゃ、あの蜘蛛なんぞ余裕じゃ、その証拠にルプとコンはソロで倒したじゃろ。」
「そう言う事だ、数匹纏めて来ても大丈夫だぞ千春。」
「あの蜘蛛が数匹・・・キモっ!」
「この騒動の原因を確認するのに、戻るのも有りじゃが、一度殲滅はしといた方が良いじゃろうな、冒険者にはキツかろう。」
「オッケー、ロイロ任せた!」
「了解、任された、母よここから先はダンジョンが壊れない程度にガンガン行くぞ。」
「あら、それは嬉しいわね、このダンジョン結構丈夫そうだし?手加減すると疲れるのよね。」
 嬉しそうにママドラは言うと、レフト、ライトに目配せし下層へ足を進める、

「ロイロー、ルプー、ダンジョン壊さないでよー、国際問題とか嫌だからね!」
「分かっとるわい。」
「大丈夫だろ、食後の運動だ、次行くぞ千春。」
 ドラゴン達、ペット枠達は意気揚々と次の階層へ進んでいった。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幸子ばあさんの異世界ご飯

雨夜りょう
ファンタジー
「幸子さん、異世界に行ってはくれませんか」 伏見幸子、享年88歳。家族に見守られ天寿を全うしたはずだったのに、目の前の男は突然異世界に行けというではないか。 食文化を発展させてほしいと懇願され、幸子は異世界に行くことを決意する。

転生王女は現代知識で無双する

紫苑
ファンタジー
普通に働き、生活していた28歳。 突然異世界に転生してしまった。 定番になった異世界転生のお話。 仲良し家族に愛されながら転生を隠しもせず前世で培ったアニメチート魔法や知識で色んな事に首を突っ込んでいく王女レイチェル。 見た目は子供、頭脳は大人。 現代日本ってあらゆる事が自由で、教育水準は高いし平和だったんだと実感しながら頑張って生きていくそんなお話です。 魔法、亜人、奴隷、農業、畜産業など色んな話が出てきます。 伏線回収は後の方になるので最初はわからない事が多いと思いますが、ぜひ最後まで読んでくださると嬉しいです。 読んでくれる皆さまに心から感謝です。

転生少女の異世界のんびり生活 ~飯屋の娘は、おいしいごはんを食べてほしい~

明里 和樹
ファンタジー
日本人として生きた記憶を持つ、とあるご飯屋さんの娘デリシャ。この中世ヨーロッパ風ファンタジーな異世界で、なんとかおいしいごはんを作ろうとがんばる、そんな彼女のほのぼのとした日常のお話。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?

水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが… 私が平民だとどこで知ったのですか?

ドアマットヒロインはごめん被るので、元凶を蹴落とすことにした

月白ヤトヒコ
ファンタジー
お母様が亡くなった。 それから程なくして―――― お父様が屋敷に見知らぬ母子を連れて来た。 「はじめまして! あなたが、あたしのおねえちゃんになるの?」 にっこりとわたくしを見やるその瞳と髪は、お父様とそっくりな色をしている。 「わ~、おねえちゃんキレイなブローチしてるのね! いいなぁ」 そう、新しい妹? が、言った瞬間・・・ 頭の中を、凄まじい情報が巡った。 これ、なんでも奪って行く異母妹と家族に虐げられるドアマット主人公の話じゃね? ドアマットヒロイン……物語の主人公としての、奪われる人生の、最初の一手。 だから、わたしは・・・よし、とりあえず馬鹿なことを言い出したこのアホをぶん殴っておこう。 ドアマットヒロインはごめん被るので、これからビシバシ躾けてやるか。 ついでに、「政略に使うための駒として娘を必要とし、そのついでに母親を、娘の世話係としてただで扱き使える女として連れて来たものかと」 そう言って、ヒロインのクズ親父と異母妹の母親との間に亀裂を入れることにする。 フハハハハハハハ! これで、異母妹の母親とこの男が仲良くわたしを虐げることはないだろう。ドアマットフラグを一つ折ってやったわっ! うん? ドアマットヒロインを拾って溺愛するヒーローはどうなったかって? そんなの知らん。 設定はふわっと。

大聖女の姉と大聖者の兄の元に生まれた良くも悪くも普通の姫君、二人の絞りカスだと影で嘲笑されていたが実は一番神に祝福された存在だと発覚する。

下菊みこと
ファンタジー
絞りカスと言われて傷付き続けた姫君、それでも姉と兄が好きらしい。 ティモールとマルタは父王に詰め寄られる。結界と祝福が弱まっていると。しかしそれは当然だった。本当に神から愛されているのは、大聖女のマルタでも大聖者のティモールでもなく、平凡な妹リリィなのだから。 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...