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高級レストランだ!

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「それでは料理をお持ちしますので少々お待ちください。」
 店員はそう言うと奥に戻る、そして入れ替わりで他の給仕が飲み物を持ってくる。

「食前酒でございます。」
「あ、ありがとうございます。」
 グラスに食前酒を入れ、すぐに立ち去る給仕。

「場違いだ。」
「サフィー高級すぎでしょ、どこぞのホテルのレストランじゃん。」
「そうですか?でもチハルはこの世界の食事覚えてますよね。」
「・・・あ。」
「この店は、某王国のレシピを使って料理をしてるそうですよ。」
「某って・・・ジブラロール?」
 サフィーナは微笑み頷く。

「千春、この世界の食事って。」
「薄い塩味と素材のうまみを生かした料理。」
「あー、アレかぁ・・・うん。」
 頼子が聞くと、千春は苦笑いしながら答える、暫くすると料理が並べられていく。

「おー美味しそう!」
「ハンバーグじゃん!」
「それじゃ、いただきます!」
「「「いただきます!」」」
 千春達が言うと、サフィーナ達も食事を始める。

「うん、美味しい、凄いね教えてないスパイス入ってるよ。」
「美味しいー、日本じゃ食べない味だね。」
「うんうん、海外のハンバーグって感じ!」
「え、ミオって海外行ったことあんの?」
「ない!」
「「「あははははは!」」」
 食事は賑やかに進み、幾つかの料理が来る、そして食べ終わる頃店の奥で声が聞こえた。

「・・・なんだろ、喧嘩?」
「こういう店では余り宜しくありませんねぇ。」
 千春とサフィーナが話しをしていると、奥に有るのだろう小部屋から数人の男が出てくる。

「支配人に言っておけよ!」
「はい、申し訳ございません。」
「帰るぞ!」
 貴族風の男が連れ2人に声を掛け、千春が居るエリアに入る。

「んぁ?なんだ?獣人が居るじゃないか、一緒に居るのは貧乏くせえ冒険者か、この店も格が落ちたな!はっはっは!!!」
 貴族の様な男は笑いながら連れに言うと、連れの2人も笑う。

「獣人で言われるのは構わんが・・・チハル様の侮辱は聞き捨てなりませんな。」
「確かにな、俺も獣人扱いだろうが、そのせいで千春達が言われる筋合いは無い。」
 エーデルとルプは貴族に聞こえない様に呟く。

「お、連れの女は良いのが揃ってるな、おい!お前、俺様が今夜は相手してやる付いて来い。」
 サフィーナを見ながらニヤつく貴族風の男。

「・・・・・・。」
「おい!聞いてんのか!お前だよ!」
 男はサフィーナに近づき、指を差す、サフィーナは無表情に立ち上がり貴族の男を見る。

「・・・・・・。」
「な・・・生意気だなお前!おい!そっちのちっこいの!お前!」
 返事をせず無表情で見つめるサフィーナから目を逸らし千春にターゲットを変える男。

「ん?私?」
「あぁ!お前だよ!お前!付いて来い!」
「お断りです。」
「はぁ?お前俺を誰だと思ってるんだ。」
「この方はザルグル男爵の嫡子!ボルダリ様だぞ!」
「・・・・で?」
「お、お前!俺は領主の息子だぞ!」
「・・・・だから?」
「だ・・だから、だまって・・・ついて・・・え?」
「チハル様に手を出すのなら黙ってられませんね。」
 サリナが動く。

「本当です!やっちゃっていいですよね?」
 モリアンも動いていた。

「他国とは言え、王族に無礼を働く事は許されませんね。」
 気付けば男爵息子はサフィーナにナイフを首筋に当てられ、取り巻き2人はサリナとモリアンに同じく後ろを取られ、ナイフを突きつけられていた、ラルカとホーキンは頼子達の前に、エーデルは千春の前に立つ。

「いやいやいやいや、それはマズいでしょ!?」
「いえ、他国とは言え、ジブラロール王国第一王女、チハル王女殿下を侮辱したのです、切り捨てた所でジャシール国は文句を言う事は出来ません。」
「えぇ、見た目冒険者だしわかんないでしょ・・・でも、そういう物なの?」
 エーデルを見ると、エーデルも頷いている。

「いや、まぁ、この世界のルール良く知らないけど、切り捨ては無し!」
「では半殺しで。」
「まーーーーーってまってまって!ヨリ!ミオ!レナ!」
「えーこっち振らないで!私もわかんない!」
「ウチも分かんない!」
「むりむりむりむり!」
 千春はパニック気味に頼子達へ聞くが、バッサリと言われる。

「ロイロー!!!」
「ん?なんじゃ?焼き払うか?」
「うあぁぁ!使えないぃ!!!!ルプ!」
「はぁ、しょうがねえなぁ。」
 ルプは立ち上がり、狼の姿に戻る。

「う・・うわぁぁあ!!!!」
 目の前に大きな狼が現れ、貴族の息子は腰を抜かす。

「おいお前、ごめんなさいって言えるか?」
「は!はい!ごめんなさい!ごめんなさい!」
「俺じゃねえだろ。」
「はいぃ!ごめんなさい!」
 貴族男は千春に向き直り謝り倒す。

「えっと、街の人もそうですけど、冒険者とかにもあんな事しないでくださいね?」
「はぃぃ!!!」
「約束できます?」
「はぃぃぃぃ!!!!」
「・・・ほんとに?」
「はぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」
「それじゃ今回の事は不問で!サリナ、モリアン。」
「もうー!チハルさん優しすぎです!」
「本当です、この手の者は明日には忘れて同じ事をするんですよ。」
 サリナとモリアンは取り巻き2人から離れ千春に言う。

「守れなかったら儂が領主邸を焼き払ってやるわ。」
「え?そこまでする?」
「チハルとの約束を破ると言う事は、儂との約束を破る事と同じじゃ、ケジメは付けんとなぁ。」
 ロイロはそう言うと貴族男を見下ろす。

「では、こ奴らは自分が家までお送りしましょう。」
 エーデルは貴族男の腕を掴むと立たせる、そしてホーキンに目配せするとホーキンは頼子達から離れ、取り巻き2人を立たせる。

「サフィーナ、チハル様達を頼むぞ。」
「えぇ、しっかり伝えてくださいな。」
 エーデルが言うと、サフィーナはさも当然と言う様に答える。

「エーデルさん。」
「ミオさん、大丈夫です、すぐ戻りますので。」
 ミオが心配そうに言うと、優しくエーデルは答える、そしてエーデルとホーキンは貴族男と取り巻きを連れ店を出て行った。












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