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飛空艇を作ろう!②

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「飛空挺とは何でしょう。」
 厩舎で黙って見ていたフランシスが千春に問いかけて来た。

「んーっと、簡単に言うと、空飛ぶ船。」
「船が飛ぶのですか?!」
「そ、宰相さんと、うちのお父さんが開発中らしいんだよね、コレ使ったら便利じゃね?って事みたい。」
 魔道具を箒に付け、跨ると歩く速度で地面から離れる。

「・・・何ですか?コレは。」
「空飛べる魔道具、レナが作ったんだよ。」
「レナ様すごいですわ!」
 レナを見ながらフランシスは賞賛する。

「えー、そんなぁ・・・もっと褒めて♪」
 麗奈がクネクネと体を揺らし喜ぶ、そしてルーカスも麗奈を褒める。

「これは凄い物ですよレナ様、王国、いえ、この大陸の歴史に名を残す程の発明です。」
「ルーカスさん様付けないで下さい!王国じゃ私とミオの義父ですよね。」
「そうでしたな、それではレナさんこちらです。」
 王宮の外れにある大きな建物の中に入ると、大型バスと船を混ぜた様な乗り物が有り、上には魔獣の革で作られた飛行船の様な気嚢が乗っていた。

「おぉー!飛行船じゃん?」
「ルーカスさん、これ動力は何ですか?」
「火の魔石で温めた空気で浮き、風魔法と火魔法を使った原動機で進むとの事です、原動機は別の所で試作しています。」
「ほぇー、おっきいなぁ。」
「これ、この魔道具使ったら上いらなくね?」
「浮けばね、でも魔道具に不具合あったら真っ逆様に墜落するじゃん、安全マージンは取るべきでしょ。」
「そっか、本体軽く出来れば熱量も減らせるね。」
「問題はコレ浮かすのにどれくらいの魔石が必要なのかだねぇ。」
 千春達は飛空挺を見ながら話しだす。

「千春今魔石どれくらいあんの?」
「めっちゃあるよ、妖精の村でロイロ達が乱獲したやつ全部貰ったもん。」
 千春はアイテムボックスから魔石を出す、大きな物はバスケットボール程のサイズもある。

「これでかっ!」
「あー、それはシーサーペントの奴だよ、ハース伯爵がくれたんだ、もっとデカいのも有るよ。」
「これ5個もあんのか、一個試しに使って良い?」
「いいよ、無理そうだったらロイロに頼もう。」
 麗奈は大きな魔石をテーブルに置き、魔力を注ぐ。

「浮く魔道具が出来れば小型化出来そうだよね。」
「そうですな、落下しなければ良いサイズまで小さく出来ますから。」
「でも今付いてるのが勿体無いですね。」
 千春とルーカスが話していると、フランシスが呟く。

「大丈夫です、もし成功すれば、搭乗部を大きくし、大型の飛空挺が作れますので。」
「あ、そっか、もっと大きなの作ればいいのか。」
 魔力を込めていた麗奈が、声を上げる。

「よっしゃぁ!」
「お?出来た?!」
「うん、ギリギリ、これ以上の大きさは無理!」
「すげー、MP大丈夫?」
「うん、でももう一個作るのは無理だね。」
 麗奈はルーカスに魔石を見せる。

「凄いですなぁ、この魔石は王国で買い取らせて頂きますが、宜しいですか?」
「チハル、良いの?」
「良いよー、ちなみに幾らくらいなんですか?」
「そうですなぁ、魔石だけの価値で最低でも金貨2千枚、魔道具としての価値を入れればその倍でしょうか。」
 魔石の価値を聞き、皆は呆ける。

「チハルさんや、日本円で幾らですかいの?」
 麗奈が千春に聞く。

「・・・4億円。」
「はぁぁ?!」
「後4つあるよ、このサイズ。」
「5個作ったら20億円?!」
「マジか、めっちゃ金持ちじゃん!セレブだ!」
 興奮する美桜と麗奈。

「石はロイロとルプが取ってきたからねぇ。」
「儂はいらんぞ、不自由しとらんからの。」
「俺もいらねぇなぁ。」
「私もパンの利権でお金あるから要らないなぁ。」
「千春いま幾ら持ってるの?」
「この前6000枚近くあったよねサフィー。」
「はい、今は倍以上あると思いますよ。」
「え?増えてんの?」
「増えますよ、王国のパンほぼ全てチハルのレシピになってますからね。」
「・・・その魔石、レナ達で山分けして良いよ。」
「えぇぇぇ!もう遊んで暮らせるじゃん。」
 麗奈達は魔石を見ながら呆れた顔をしている。

「とりあえずこの魔石でどれくらいの効果あるか試したいね。」
「そうですな、しばしお待ちを。」
 ルーカスは魔石を担ぎ、作業をしている人に渡すと、飛空挺の中に入って行った、そして程なく声が掛かる。

「設置して魔力を通しました、効果が出ていると思いますが。」
 作業員がそう言うと、ルプが人狼の姿のまま、船首の底をがっしり掴むと、ゆっくり持ち上げる。

「おぉ、軽くなってるぞ千春。」
「すご!超力持ちじゃん!」
「ルプ君どれくらいの重さなの?」
 効果が気になる麗奈はルプに問いかけると、ルプは飛空挺を降ろし答える。

「そうだな、さっきの荷馬車と同じくらいになってるな。」
「成功ですかね?」
「大成功でしょう、これは開発に力が入りますな、大型飛空挺も視野に入れなければいけませんね、残りの魔石にも魔法付与して頂きまして、王国に売って頂いてよろしいですか?」
「「勿論です!!」」
 麗奈と美桜は超笑顔で答える。

「千春もっと大きな魔石もあるって言ってたよね。」
「うん、アイトネが持ってきてくれた闇タコの魔石ね。」
 千春はテーブルに闇タコの魔石を置く。

「なっ!?」
「デカいっしょ。」
「でっけぇ!バランスボールかよ!」
「それくらいあるねー、コレ幾らくらいかな。」
 千春はルーカスを見ながら聞いてみる。

「申し訳ありません、これほどの魔石は見た事も聞いた事も有りませんので、値段は付けれません。」
「値段付かないかー、まぁ魔王とか魔神とか言われるレベルの魔石だもんねぇ、ロイロこれに魔法付与できる?」
「出来ん事は無いが、最大性能は引き出せんな、儂がやっても3割が良い所じゃろ。」
「それは勿体ないけど、使い道無いんだよなぁ、ルーカスさん大型船作る時使って良いですよ。」
「なんですと!?」
「使い道無いですから、でも飛空艇が出来たら一番に乗りたいです!」
「それは全然構いませんが、私の一存で決めれませんので、国王陛下へ報告させて頂いてからお受け取りさせて頂きます。」
 千春達はその後飛空艇の中を見学し、次は動力開発の方へ足を運んだ。




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