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桜!

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 朝、千春とルプ、サフィーナは庭に立っていた。

「ここらへん?」
「どれくらいの木に成るか分かりませんものね。」
「適当でいいじゃないか、こんだけ広いんだ。」
 庭を見渡しながら3人は話す。

「チハル何してるんですのー?」
 リリがフヨフヨと飛びながら千春の所へ来る。

「世界樹の種を植えようかと思ってさ。」
「そう、どんな木にするかイメージあるのかしら。」
「それは問題無いわ。」
「そう、それなら大丈夫ですわ、私が芽吹かせるから植えてみて下さいな。」
「そんな事できんの?」
「妖精なら誰でも出来ますわよ。」
 千春はリリに促され種を地面に埋める、

「それじゃぁチハル植えた所に手をかざして下さいな。」
「こう?」
 千春が手をかざすとリリはその手に乗り魔力を込める。

ポンっ

「あ、芽が出た!」
「後は育つまでのんびり待ってたらよろしいですわ。」
「気の長い話だねぇ。」
「そう言う物ですわー。」
 千春とリリが話をしていると美桜達も起きて庭に出て来た。

「おはよーチハル、何してんのー?」
「種植えてた、リリが芽出してくれたよ。」
「おー、かわいい、何の木にしたの?」
「桜だよ。」
「桜かー、花見出来るかな。」
「さぁ、花が咲くまで何年かかるだろうねぇ。」
 皆で小さな桜の芽を見ていると不意に声が聞こえた。

『チハルーちょっと扉使っていいかしら~♪』
「アイトネ!?どうしたの?」
『ちょっとチハルの世界にお出かけする事になったのよ、そのまま行ってもいいんだけど扉使ったら早いじゃ無い?』
「別にいいけど、何しにいくの。」
『ウカノちゃんとお茶しに行くの~。』
「・・・あ、そう、良いけど。」
 千春がそう答えるとアイトネは桜の芽を見る。

『これ世界樹の種?』
「うん。」
『ちゃんと芽吹いたのね。』
「リリが手伝ってくれたの。」
 ニコニコと話をしているとコンがアイトネに声をかける。

「アイトネ様、僕のお願いが決まりました。」
『あら、良かったわ、何かしら。』
「この桜に花を咲かせたいのです、大きく出来ますか?」
「アイトネ様、俺からもお願いしたい、桜の下で呑む酒は美味いからな。」
「わっちからもお願い出来んかいな。」
「ほう、酒が美味くなるのか、儂からもお願いするかの。」
 コンのお願いに皆が便乗する。

『皆んなのお礼ってそれで良いのかしら?』
「僕は構いません、神にお願いと言う時点で既に過分な事でございます。」
「そうだな、俺も聞く側だったからよく分かる、それにお願いする様な事なんぞ無いからなぁ。」
『そう、分かったわぁそれじゃちょっと離れててね。』
 皆が桜から離れるとアイトネは腕を広げ目を瞑る、すると芽吹いた芽が揺れる。

「おおおお!」
「うわぁ!」
 あっという間に千春の背丈を超え、さらに大きくなる桜の木、そしてどんどんと大きくなり城と変わらぬ高さまで大きくなる。

「アイトネ!ストップ!ストップ!」
 思わぬサイズになった木を見て千春が叫ぶ。

『あら?これくらいで良いの?』
「いやいやいや大きすぎでしょ!」
『えー、もうちょっと大きくても良く無いかしら?』
 木を見ながらアイトネは千春に答える。

「これ樹齢何千年ってレベルじゃね?」
「この木の栄養は何処から来たんだろ。」
「魔法なの?コレ、何でも有りだな。」
 頼子達が木の幹を見ながら呟く。

『それじゃ最後の仕上げねー。』
 アイトネがそう言うと次々に蕾が開く。

「凄い・・・」
 サフィーナが思わず呟く。

「綺麗・・・」
「うん、綺麗だね・・・」
 千春が呟くと頼子もそれに答える。

「チハル!」
「あ!お母様!」
 マルグリットが城から出てくると千春に声をかける。

「これは?!」
「私の国の木、桜です。」
「・・・綺麗ね。」
「はい、お母様どうしてここへ?」
「昨日の事でチハルに小言を言いに来たのよ。」
「えぇぇ、小言って。」
「でも・・・」
 マルグリットは桜を見上げ言葉が止まる。

「この木は世界樹では無いのよね?」
「はい。」
「もしかしてアイトネ様が何かされたのかしら。」
 桜を見上げるアイトネを目にしたマルグリットはおおよその見当をつける。

「はい、世界樹の種は植えた者の思っている木になるそうなんです、皆んなが花を見たいからってアイトネにお願いしたらこうなっちゃいました。」
 千春は苦笑いしながらマルグリットに説明する、すると成長させた本人のアイトネが千春に問いかけて来た。

『チハル!何?この木!』
「桜だよ、春に咲き乱れる木、綺麗でしょ。」
『ええ!とっても綺麗だわ!』
 アイトネは自分が成長させたのに満開の桜を見て興奮していた。

「儂も初めて見たぞ、こんな綺麗な花が咲く木はな、コレだけな物だ、何かしらの謂れは有るんじゃ無いのか?」
 ロイロが頼子達に問いかける。

「桜の木の下で告白すると叶うとか?」
「恋が実るとか言うね。」
「それゲームの話じゃん?死体が埋まってると綺麗に咲くとかじゃね?」
「やめてよー!」
 ワイワイと桜の木の下で騒ぐ面々。

「アイトネ様が関わっているのなら何も言えないわねぇ、チハル、お出かけする時は声を掛けてから!良いわね?」
「はーいお母様、ごめんなさい。」
 千春が謝るとマルグリットは千春を抱きしめる。

「ロイロやルプ達がいても心配なの、絶対よ。」
「はーい。」
 マルグリットは微笑みながら千春に言うと千春も笑みを返す。

『それじゃチハル、あっちに行ってくるわね!呼ぶ時は日本に行って呼んで頂戴。』
「アイトネ送らなくて良いの?」
『大丈夫よー、あれくらいの権限なら問題なく通れるわ。』
「えー、神様ズルいな、ところで何処に行くの?」
『ウカノちゃんがお茶屋さんで美味しいふらぺちーのとか言う飲み物が有るって教えてくれたから、一緒に飲みに行くの~♪』
「スタビャか!」
 それを言うとアイトネはそそくさと門の部屋を通り日本に行ってしまった。

「チハル今日はお茶会よね。」
「はい、フランちゃんとお茶会ですね。」
「ここでお茶会すれば良いんじゃ無いかしら。」
「ココでですか?!」
「えぇ、どのみち王宮でやるんですもの。」
 マルグリットはそうしなさいなと言って侍女と執事へ指示する。

「サフィー、そう言う事らしいよー。」
「はい、それではこちらも準備しておきます。」
 桜に目を奪われずっと見ていたサフィーナは直ぐにいつもの様に動き出す。

「モリー、モリーちゃーん。」
「ふぇ?!」
「いつまで見てんの。」
「凄すぎです!何ですかコレ!」
「いや、何度も言ってんじゃん、桜だよ。」
「はぁぁぁ。」
 また桜を見上げ口を開けたまま固まるモリアン。

「ダメだモリー使えないわ。」
「チハル!チハル!酒じゃ!」
「やっぱ桜なら日本酒だろ。」
「わっちはビールを飲んでみたい!花見してる連中は、それは美味そうに飲んどった!」
「僕はルプさんと一緒で日本酒がいいですね。」
 酒!酒!と言うペット達に呆れながら千春はため息をつく。

「ダメだコイツら。」












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