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エンハルトの決断!

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「ヨリ!こっちこっち!」
「ちょっと待ってー!アリンさん早く!」
「ちょっ!はい!」
 千春はエンハルトを引っ張りながら頼子を呼ぶと、頼子はアリンハンドを引きずる様に声をかける、大型犬の散歩で引きずられる飼い主の様だ。

「ほらコレ!海苔じゃん!」
「あ、ほんとだ、でも海苔って何に使う?巻き寿司?」
「そういやそうだね、こっちで初めて見たから興奮したけど。」
 2人は冷静になり、んーと悩む。

「嬢ちゃんたち、そっちで魚の練り物が有るからそれに巻いて食べるんだよ、磯の香がして美味しいぞ?」
「おぉー!」
 2人は練り物を見に行くと串のついたままのチクワの様なものが売っていた。

「竹輪?」
「ちくわだねぇ。」
「嬢ちゃん一本どうだい?」
 お店のおばさんが勧めてくる。

「二本下さい!」
「私も!」
「あいよ!」
 回しながら焼いていた竹輪を2人に渡す。

「いくら?」
「4本で大銅貨4枚だよ。」
「やっす!はいお金。」
 千春はお金を渡し竹輪を受け取る。

「はいハルト。」
「はいアリンさん。」
「ありがとう。」
「あ、ありがとうございます。」
 千春と頼子は2人に渡す、そしてひとくち齧り付く、そして千春が一言。

「あったかい竹輪だね。」
「うん、海苔巻く?」
「そだね。」
 2人は戻り海苔を買い巻いてたべる。

「うっま。」
「磯部焼きだ。」
「あ!それだ!はいハルト。」
「アリンさんもどうぞ。」
 海苔を巻いて食べているとサフィーナ達も追いつき同じように買い、食べている。

「お腹いっぱいになって来た、晩御飯入るかな。」
 頼子がお腹をさすりながら千春に言う。

「ちょっと食べすぎたかな、でもオヤツ用のストックも欲しいし、お父さんにお土産も買っときたいなー。」
「良いなー千春のアイテムボックス、時間停止でしょ?」
「いやいや、日本でもビェリーが使える影収納の方が便利じゃん?」
「俺からすればどっちも規格外に便利すぎるけどな。」
 2人の話を聞いて呆れるようにエンハルトが言う。

「隣の芝生は青いってね、ハルトこの街のオススメは他に有るの?」
「そうだなー、もう少し先に店が有るんだが、交易品なんかが色々あるぞ、海を渡った国の品物が売ってたはずだ。」
「へぇー、そっち行ってみよ。」
「私にはココも異国だけどね。」
 頼子は笑いながら千春に言う、少し歩くと食べ物メインだった店が、アクセサリーの店や衣類、小物の店が増えてくる。

「千春こっちの衣服可愛い!」
「ちょ!ヨリ待ってー!」
 エンハルトもアリンハンドも手を離し千春の後をサフィーナとモリアンが付いて行く、ユラはお腹いっぱいになったせいかルプの上でお昼寝中だ。

「ロイロは見に行かないのか?」
「儂か?衣服より酒が良いのう。」
「酒か、港町って事もあるがココはラム酒が豊富だぞ。」
「ほう?それは飲み比べしたいのう、何処にあるんじゃ?」
「そこら辺にあるぞ、居酒屋に入ればいくらでもある。」
「王子が居酒屋を知っとるとはの。」
「気分転換にたまにな。」
「ハルトはたまにと言う頻度じゃ無いでしょう。」
「アリンだって一緒に行くじゃ無いか。」
「まぁ行きますけどね。」
 千春達を店の外から見つつ酒の話をする3人。

「お、あそこは飲み屋か?」
 キョロキョロと周りを見ていたロイロは居酒屋らしい店をロックオンする。

「多分そうだな。」
「ちょっと一杯飲んでくるか。」
「やめとけ、今飲んだらチハルにドヤされるぞ?」
「一杯くらいバレんじゃろ。」
「別にロイロが怒られても構わんが、今日の夜酒禁止とか言われても知らないからな?」
「うっ、それは嫌じゃな?」
「だろ?買って帰ってから飲んだ方がいいと思うぞ。」
「ふむ、そうしよう。」
 ロイロとエンハルトが話をしていると千春達が店から出て来る。

「どう?これ!」
 千春はこの街の服に着替えてクルクルとエンハルトの前で回る。

「可愛いぞ。」
「でしょー!良い色だよねー!」
 そう言って頼子達とまた移動する。

「ハルト、可愛いのは服か?チハルか?」
 ニヤニヤと笑いながらロイロはエンハルトに聞く。

「チハルだよ。」
「ほう、躊躇いなく言うのう。」
「まぁな。」
「チハルと繋がっとるからある程度感情もわかるんじゃが、チハルもお主の事は好いとるぞ。」
「そうなのか?!」
「あぁ、間違いなくな、のぅルプよ。」
「間違い無いな、ハルトと話をしている時の千春は安心してるのに感情が昂るからな。」
 ロイロとルプに言われ、エンハルトは少し顔が赤くなる。

「ありがとうロイロ、ルプ、お礼にラム酒を奢ってやるよ。」
 そう言って執事2人に金貨を数枚渡し買いに行かせる。

「今日の夜はいっぱい飲んでくれ。」
 ニコニコしながらロイロとルプに言うエンハルト。

「そうさせて貰おうかの。」
「楽しみだな。」
 ロイロとルプは笑いながら千春達の後をついて行く。
 その後日が暮れるまで買い物を続けた千春達はホクホク顔で領主邸に戻った、エンハルトとアリンハンドはヘロヘロだ。

「お前達元気過ぎだろ。」
「そんな事無いよ、疲れたよー。」
 ニコニコ顔で答える千春。

「お帰りなさいませ、お食事までまだ時間が有りますのでお部屋でお寛ぎ下さい。」
 執事がそう言って部屋に促す。

「夕食どうするの?」
「俺とチハルとユラはハース伯爵と一緒だな、他の皆は部屋になる。」
「そっかー。」
「チハル、ユラ、着替えますよ。」
「え?何で?」
「伯爵との夕食に普段着はダメですよ。」
 そう言うとアイテムボックスからアタッシュケースの様な箱を取り出して服を掛けていく。

「ユラちゃんはこれー、チハルさんはこっちですかねー。」
 モリアンは服とアクセサリーを並べ準備をする。

「貴族の食事めんどくさーい。」
「まぁそう言うな、ドレスの様に窮屈な服じゃ無いから良いだろ。」
 千春とユラが着替え終わり皆の前に戻る。

「うっは!千春綺麗!」
「ユラ、可愛いぞ。」
 頼子とルプが2人を褒める。

「まだ時間があるから座って待ってたら良い。」
 そう言うエンハルトも着替えていた。

「ハルトさんめっちゃカッコいいな。」
「うん、カッコいいね。」
「惚れ直した?」
「なっ!?」
「仕返しーw」
「何でよ!先にニマニマしてたのヨリじゃん!」
 くつろぎつつキャッキャと騒いでいると執事が迎えに来る。

「お食事の準備が出来ました。」
「あぁ、チハル、ユラ、行こうか。」
「「はーい。」」
 3人は伯爵の食卓へ向かい部屋に入る。

「ようこそエンハルト殿下、チハル王女、ユラ王女。」
 ハース伯爵と伯爵夫人は優雅に礼をする、そして自己紹介が終わると席に着く。

「おぉ生魚だ、カルパッチョ?」
「はい、新鮮な魚が取れますので、執事の方から王女殿下は生の魚も召し上がれるとお聞きしまして。」
「はい、大好きです!」
 もちろんユラも寿司を食べた事があり、忌避感もなく食べている。

「ユラって食べ方綺麗だよね。」
「ユラはマナーの勉強をしてるからな。」
「そうなの?」
「あぁ、基本サフィーナが教えてるがな、そう言うチハルも大丈夫じゃないか。」
「私は学校でマナー講習とか有るからね、こっちのマナーとは違うかもだけど。」
「いや、全然問題ない、これなら何処に連れて行っても大丈夫だ。」
「何処に連れて行くのさ。」
「あー、まぁ、色々だ。」
 一通り料理を食べ終わり挨拶をすると3人はお暇する。

「美味しかったー、こっちまで王都の料理が広まってるなんてビックリ。」
「王都の料理というよりチハルの料理だけどな、塩の件でハース伯爵が王都に来て感動したそうだ。」
「それは良かった。」
 部屋に戻ると皆も同じ様なコース料理を食べたらしく絶賛していた。

「チハル!飲んで良いんじゃろ?」
「先にお風呂でしょ、潮風当たって髪バサバサするー。」
「私もー、千春お風呂ってどんな感じなの?」
「王都は温泉、こっちは知らなーい。」
 しばらくすると執事が湯浴みにとお伺いに来る、女性6人ゾロゾロとお風呂に入りサッパリした所で部屋に戻るとエンハルトとアリンハンドがお茶をしていた。

「おかえりチハル。」
「ただいまー、何してんの?」
「お茶だが?」
「てっきりお酒呑んでるかと思ったよ。」
「お酒はチハルのアイテムボックスの中だろ。」
「あ、そういやそうだったわ。」
 千春はアイテムボックスから日本酒やウイスキーを取り出す、執事から預かっていたラム酒も出す。

「はいどうぞ!」
「おー!ラム酒じゃー!ハルト頂くぞ!」
 ロイロは早速ラム酒をグラスに注ぎグイッと飲み干す。

「プハー!美味いのー!」
「中々こっちの酒もイケるな。」
「わっちは日本酒がいいな。」
 ロイロとルプ、ビェリーがグビグビと呑んでいる。

「サフィーとモリーも今日は業務終了だから飲んで良いよ。」
「はーい!」
「それでは頂きますね。」
 ソファーの前にあるテーブルに酒瓶が並ぶ。

「ヨリどうしたの?」
「私たちも飲んでいいんだよね?」
「うん、飲酒可能な年齢の国に居るから良いみたいだねぇ、呑む?」
「ひとくち呑んでみよかなー。」
「それじゃ、はいこれ。」
 チハルはアルコール度数の少ない酎ハイを渡す。

「いきなりラム酒とかウイスキー飲まないでよ?」
「ヤバい?」
「ヤバい。」
 頼子はソファーに座り呑兵衛達に混ざる。

「はぁ、美味しくないのによく飲むなぁ。」
 千春は昔大樹の呑む酒を舐めトラウマになっていた、バルコニーに出て街を見るとポツポツと灯りが見える、上を見れば満天の星空があった。

「うはぁー、綺麗。」
 星を眺めていると声が掛かる。

「チハルどうした?」
「んー星が綺麗だなーって、あっちじゃこんなに星見えないからね。」
 そう言うと2人は空を見上げる。

「チハル、こっちの世界に来ないか?」
「来てるじゃん。」
「いや、そう言う意味じゃなくてだな?」
「ははっ、それじゃどう言う意味かな?」
 エンハルトに向き直り悪戯っぽい仕草で聞き直す。

「あー・・・俺と結婚してくれないか?」


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