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年越し蕎麦!

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「ではお母様向こうに戻りますのでユラの事お願いしますね。」
「えぇ分かってるわ、明日は来れるの?」
「夕方あたりなら来れると思うので、その時また声掛けさせていただきますね。」
 マルグリットは微笑みながらいってらっしゃいと言い千春も手を振りながら部屋を出る。

「それじゃお父さん迎えに行って戻ろう。」
「そうですね、客間でしょうか。」
 千春とサフィーナ、モリアン、ロイロと4人で大樹が居るであろう客間へ向かう。

「お父さん居ますか?」
 客間の前に居た執事に声を掛ける。

「はい、中にいらっしゃいます。」
 そう言って執事はドアを開け中へ促す。

「お父さ~ん、日本もどるよー?」
「あー、ちょっとまってくれー。」
「あれ?なんでお父様も居るの?」
「あぁチハル、タイキ殿が持ってきたこのリバーシと言う物が面白くての!」
 2人はリバーシをしながら話をしていたようだ。

「あー、もう勝負付きそうですね。」
 白一色とまでは言わないが明らかに黒が負けている。

「お父さん容赦無いね。」
「手を抜いて遊ぶのは失礼だからね。」
「そうじゃぞ、遊びでも本気でやらなくては面白くないからの!」
 ガハガハと笑いながら負けるエイダン陛下は負けても楽しそうだ。

「その感じだとユラといい勝負出来そうですね。」
「なんじゃと?ユラもリバーシが出来るのか!」
「えぇ、教えましたから、因みに今の所一番強いのはサフィーですよ。」
 サフィーナはすまし顔で頭を下げる。

「最弱はモリーですけどね~。」
 モリアンは頭を下げると言うよりガックリと首を下げる。

「うん、あとはここで終わりですね。」
 最後に白を置きパタパタとひっくり返り勝負がついた。

「チハル、このリバーシとやら貸して貰えぬか?」
「いいですよ、いくらでも使って下さい、そんな高い物でも無いですし、そのうちダーサンに言ってこっちでも作ってもらおうと思ってますから。」
「なんじゃと?その話は進めているのか?」
「いえ、今はトランプをお願いしてますから、特許の方はユラにしてます、リバーシもユラの方にしますので。」
「わかった、これは儂が話を付けて作らせておく、もちろんユラに売り上げが入る様にしておくから良いか?」
「はい、大丈夫ですよ、それじゃそれは見本と言う事でお渡ししますね、また買ってきますから。」
「ありがとう、それじゃ今日はおしまいじゃの、タイキ殿良い年末を迎えてくれ。」
「はい、有難う御座います、明日にはまたお伺いすると思いますので。」
「それじゃ明日の夜は・・・」
「そうですね・・・」
 2人はニヤリとしながら席を立つ。

「ではお父様また明日。」
「うむ、気を付けて帰るんじゃぞ。」
「王宮内で気を付けようがないと思いますけどねぇ。」
 苦笑しながら千春はエイダンと別れる。

「お父さんそれじゃ向こうで年越しそば食べてのんびりしようか。」
「そうだね、他にも何か有るのかい?」
「刺身あるよー。」
「おー!いいね!」
「連日飲んでるんだから程々にしてよね。」
「わかってるよー。」
 そして門の部屋に戻りサフィーナとモリアンに声を掛ける。

「サフィー、モリー、お疲れ様でした、今日の業務は終了ですー。」
「まだ早いですけどお手伝いとか要りませんか?」
「んー・・・あとは晩御飯ちょっと食べて年越しそば食べて寝るだけだもんなー、寝るのも12時過ぎだし。」
「分かりました、それでは今日はごゆっくりされて下さい。」
「チハルさんまた明日です!」
「・・・チハル儂は?」
「年越しそば食べる?」
「うむ!食べるぞ!何か知らんが!」
「ははは、それじゃロイロはこっちに連れて行こう。」
 ロイロを連れ日本に戻り夕食の準備をする、と言っても刺身を切り冷蔵庫に入れておくだけだ。

「ロイロちゃんのお蕎麦はあるのかい?」
「うん、乾麺の束で買って来てるから三人でお代わりしても大丈夫だよ。」
「そっか、まだ時間あるし天ぷらでも買って来るかい?」
「いいねー、それじゃお総菜屋さんの海老天でも買ってこようか。」
「儂も行っていいかの?」
「うん、良いよ、それじゃこの翻訳指輪つけてね。」
 千春は指輪の付いたネックレスをロイロに付ける。

「それじゃ行ってきまーす。」
「気を付けてねー。」
 2人で外に出るとパラパラと雪が降っていた。

「さっむー!!!!」
「ふむ、こっちも雪が降るんじゃのう、季節が逆じゃったか。」
「そうなの、こっちが夏なら向こうは冬になるみたいだね。」
「まぁ儂は寒かろうが暑かろうが気にならんがのー。」
「流石ドラゴン、人型でも寒く無いのか。」
「いや、寒い。」
「寒いんかい!」
「人型だとやっぱり冷えるの、チハルの上着は暖かいのう。」
 てくてくと歩きながら話をしていると御惣菜屋さんに到着する。

「うぁー人多いな。」
「ほー、良い匂いがするのー。」
「ココで出来たお惣菜が売ってるのよ。」
「ほぅー。」
「食べたいの有ったら買うから言ってね。」
「全部食べたいのう。」
「それはやめてw」
 そして2人はお惣菜売り場に入り天ぷらが並んでいるコーナーに行く。

「これこれ、これが海老天。」
「んーーーーいい匂いじゃー。」
「よし、このでっかい大海老天を1人2本買おう!」
「チハル、この肉の天ぷらも美味しそうじゃ。」
「ん?鶏天だね、それも買っとこう。」
 天ぷらを取り、他のコーナーも見て回る。

「チハルチハル!この肉美味そうじゃ!」
「おおう、角煮じゃん、食べたいの?」
「食べたい!」
「いいよー、あとこの横のスジ肉の煮込みも美味しいから買って上げよう、お父さんが日本酒に合うって言ってたし、どうせお父さんと飲むでしょ?」
「飲んでいいのか?」
「いいよ、どうせお父さん呑みだしたら呑むでしょ。」
「呑むのう。」
 ケラケラ笑いながらレジに行きお会計を済ます。

「よし、お惣菜はおっけー、あとはそばの出汁作って刺身切るだけだね。」
「しかし不思議じゃのー、この世界は魔力も無いのに不便が無さそうじゃ。」
 買い物帰りの家族や女性、家路につく子供たちを見ながらロイロは言う。

「うん、この世界でも比較的平和で安全な国だからね、それにこれが当たり前の世界だから。」
「そうじゃの、知らない事が幸せと言う事も有る、知ってしまうと求めてしまうからの。」
 2人はしみじみと語りながら家に帰り着く。

「ただいまー!寒い!」
「かえったぞー。」
「おかえりー、寒かったろう、温まりなー。」
「はーいありがとう、それじゃちゃちゃっと準備しとくね。」
「お風呂は沸かしてるから、準備終わったらお風呂入りな。」
「はーい、ってお風呂温泉行っても良かったかな?」
「最近こっちのお風呂使ってなかったろ?たまにはこっちでも入ればいいじゃないか。」
「そうだね、温泉三昧だったからね。」
 話をしながら千春は大きめの鍋に水を張り年越しそばの出汁を作る。

「醤油と白だしとみりん、酒っと。」
「ほう、測って入れんのか。」
「別にルノアーさんに教えるわけじゃないし、感覚で覚えてるからねぇ。」
 ボトルのまま醤油やみりんをドボドボと入れる。

「あとは隠し味!万能調味料の麺つゆ!」
「ほー、万能なのじゃな。」
「そ、カツオ出汁とか面倒物が既に色々入ってる濃縮麺つゆ、便利なんだよ。」
 ドボドボっと入れ掻き混ぜる、お玉で掬い味見をする。

「ん!うまい!」
「ほう?どれどれ?」
「飲んでみる?」
「うむ。」
 お玉にちょっと入れロイロに飲ませる。

「ほぉぉぉぉ、なんと言うか、初めての味なんじゃがホッとする味じゃの。」
「でしょー。」
 一度沸騰させると蓋を閉め火を止める。

「よーしそれじゃ刺身切ろう。」
 まな板に買って来た刺身ブロックを並べお皿を置く、手際よくスライスし綺麗に並べていく。

「はい、ロイロ、あーん。」
 刺身ブロックの切れ端にちょっと醤油を付けロイロに食べさせる。

「ん!んまいのぉ!くちのなかで溶けるぞー!」
「でしょー高っかいマグロだもん。」
 そしてブリとサーモンも切り綺麗に並べ切れ端はロイロに行く。

「はい終わり!それじゃお風呂はいってこかな。」
「儂もじゃー。」
「狭いよ?」
「2人は無理か?」
「まぁ2人入れるけど、まぁいっか、行こう。」
 2人は浴室に向かいお風呂に入る、向かい合わせで入れば千春とロイロなら入れた。

「はぁー温泉には負けるけどこのお風呂も落ち着くわー。」
「水の匂いが変な臭いするのう。」
「んーカルキかな?消毒してある水なんだよ。」
「ほぅ、毒消しか、こっちの水は毒があるのか?」
「毒じゃないんだけどね、いつでもそのまま飲めるようにしてあるだけ、体に害は無いよ。」
「それは便利じゃな、料理に使った水もか?」
「そだよ、一応あっちは浄水器通してるから匂いは少ないはず・・・多分。」
 日本の水や生活の話をしながらダラダラとお風呂に浸かる。

「千春ーあんまり長いとのぼせるよー。」
「はーい!ロイロあがろうか。」
「そうじゃの。」
 2人は脱衣所で体を拭いてパジャマに着替える、ロイロのパジャマは千春の予備の着ぐるみパジャマだ。

「ロイロちゃん可愛いね。」
「モコモコしとるのー、なんじゃこれは。」
「それはキリンさんです。」
「しらん動物じゃの。」
「それじゃお父さんも入って来るね。」
「はいってらー。」
「千春この四角いのがてれびか?」
「そそ、さっき言ってたやつ。」
 ぽちっと電源を入れる、音楽番組が映っていた。

「ふむ、こちらの音楽か、どの世界でも音楽は良いのう。」
 ニコニコとしながら音楽番組を見るロイロを眺めながら千春は年越しそばの準備をする。

「あがったよー。」
「はーい、そば食べる?」
「うん、もう食べようか。」
 乾麺の蕎麦を茹で、一度水で締める、そして茹で汁に入れ茹でる。
 器に入れ大海老天を二本入れテーブルに置く。

「はい年越し蕎麦だよー、ロイロ買って来た鶏天はこっちね。」
「おー!美味そうじゃー!」
「それじゃいただきます。」
「「いただきます。 (じゃー)」」
「なんか蕎麦久しぶりだわー。」
「お父さんも久しぶりだなー、半年ぶりくらいかなぁ。」
「美味いのー。」
「ロイロ麺吸えるんだね。」
「うむ、昔こういう料理がある国で食べた事があるからの、サフィーやモリーは食べれんかもしれんのぅ。」
「まぁあっちで麺は作らないと思うし、まぁいっか。」
「なんで作らないんだい?」
「作るのめんどくさいから。」
「そりゃめんどくさいだろうけどねぇ。」
 大樹はそれを聞いて笑う。

「ご馳走様でした。」
「ごちそうさまじゃー。」
「はい、お粗末様でした。」
 器を片付け、刺身や角煮、スジ肉を温めなおし出す。

「はい、熱燗にするなら自分でやってよ、分かんないから。」
「大丈夫そのまま冷で飲むから。」
「熱燗?温めて吞むのか?」
「お?ロイロちゃん飲んでみるかい?」
「タイキが作れるなら飲んでみたいのう。」
「よし!熱燗はお父さんが作ってあげよう!」
「はいはい、お好きなようにしてくださーい。」
 千春はコーラをグラスに入れソファーで寛ぐ、丁度音楽番組が終わりの方だ。

「今年は白が勝ちかー。」
「んまいのー!熱燗は!」
「マグロうまいなー!」
「あ!サーモン食べてない!」
 千春もテーブルに座り刺身を食べる。

「刺身にコーラって合うの?千春。」
「うん!合わない!」
「合わないのに飲むんじゃな。」
「コーラしか無いもん。」
 大樹とロイロは熱燗、千春はコーラを飲みながら刺身やお惣菜を食べていると除夜の鐘が鳴る。

ゴーン・・・・・ゴーン・・・・・

「ほう、鐘か。」
「除夜の鐘、煩悩の数だけ鳴らすんだよ108回だっけ。」
「うん、107回年内に鳴らして最後の一回は年を越えてから鳴らすんだよ。」
「へー、それは知らなかった。」
「ふむ・・・年越しなんぞ気にもしてなかったが、中々良い物じゃのぅ。」
「私が死ぬまで何回も年越し出来るよ。」
「そうじゃな、2~300回くらい聞きたいのぅ。」
「無茶言う無し。」
 三人はハハハハハと笑いながらノンビリと除夜の鐘を聞きながら年を越える。




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