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女神と聖女!

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『うむ、馳走になったな、娘よ。』
「千春だよ、ドラゴン君名前は?」
『人間に発音出来ぬからの、教えようがない。』
「ふーん。」
 ライリーが釣って来た魚のホイル焼きを食べながらドラゴンと話をする千春。

「綺麗な黒だねぇ、艶が有ってテカテカしてる。」
『そうか?そう言う風に言われたのは初めてだな。』
「呂色。」
『なんだそれは。』
「漆で塗った深く綺麗な黒色って意味、ロイロって呼ぼう。」
『勝手に名前を・・・』
 千春がそう言うとドラゴンがうっすらと光り千春と繋がる。

『チッ・・・』
「どうしたの?何今の。」
『・・・・契約した、勝手な事をしてからに。』
「何の契約なの?」
『忘れてたわ、この世界の精霊や聖獣に名前を付けると魂が繋がる事が在る。』
「へー、それで?」
『精霊と契約され魂が共有される。』
「名前付けただけで?」
『いや、条件が色々あるのだが・・・まぁ偶々揃ったわけだ。』
「どんな条件なのよ。」
『精霊の願いを叶える、飯を貰たわけだが。』
「うん、あげたね。」
『両者が敵対心を持たず心から話す事が出来る。』
「はなから敵対心無いね。」
『名前を精霊に与え、精霊がその名前を気に入る。』
「ロイロって気に入ってくれたのね。」
『あぁ、良い名だなと思ってしまったからな。』
 千春とロイロは虚ろな目で湖畔を眺めながら話をする。

『まぁ良かろう、人間に付き合った所で100年足らずだ儂からすればあっという間だからな。」
「ロイロって何歳なの?」
『この体になってからはまだ100歳ちょっとじゃ。』
「転生前の最初からだと?」
『1万は超えてると思うが覚えておらんな。』
「1万!?」
『そもそも死の概念が無いからのぅ、このドラゴンの肉体が消えてもまた転生するだけだ。』
「神様みたいなもの?」
『チハルが言う神と言う存在は儂らからすると星の管理者の意味合いになるのだが、まぁ似た物だな、この星の管理者は別の種族の管理者じゃが。』
「神様知ってんのかー凄いなロイロ。」
『一応この世界に来た時に挨拶はしておいたからな、この世界の管理者はのんびりしておるからなぁ。』
「神様の知り合いか、すげー、どんな神なの?」
『んー・・・・ちょっと待ってろ。』
 ロイロは目を瞑り考え事をしている。

「そんなに考えないと説明出来ない神なのか、めんどくさい神様なのかな?」
『誰がめんどくさい神様ですってー?』
 ロイロの前に綺麗な女性が浮いていた。

「な・・・カミサマデスカ?」
『説明が面倒だから呼んだ。』
 ロイロは平然と千春に言う。

『はぁ?そんな理由で呼んだわけ?』
『どうせ暇じゃろ。』
『そんな事は無いわよ?他の管理者達とお茶したり遊んだりしてるし?』
「遊んでるんだ・・神様。」
『神様って言われても星を管理してるだけですもの、大きな災いが有れば手も貸すけどそれ以外は放置よ、管理者ルールって結構厳しいのよ?』
「へぇ管理者ルールとかあるんだ、例えば?」
『教えても良いけど人の会話する速度で説明すると10年くらいかかるわよ?』
「あ、いいです、有難う御座います。」
 千春は速攻でお断りを入れる。

『それで~?まさか本当に暇そうだから呼んだわけ?天罰下すわよ?』
「女神様!よかったらこちらに座ってお茶でも!」
 テーブルに指差す、そして後でみんなで食べようと思っていた日本の大手お菓子メーカーのケーキをアイテムボックスから出す、そしてお茶を入れて貰おうとサフィーナを見ると。

「あれ?みんなどうしたの?」
 全員が膝を突き首を下げていた、ユラはちょこんと座って見ていたが。

『あらあら、そんなに畏まらなくていいわよ、それじゃ頂こうかしら?』
「サフィー!この前買った一番良いの出して!」
「は・・はい!」
 すぐにサフィーナは動き出しお茶を入れる。

『ふむ、この姿ではお茶も飲めんな。』
『昔の姿に戻れないの?』
『無理だな、まだこの体が若すぎる。』
『しょうがないわねぇ。』
 女神がそっと手を振るとロイロが千春と同年代くらいの女の子になる。

「え?ロイロ女の子なの?」
「あぁそうじゃが?」
「喋り方がお爺さんじゃん。」
「別に良いじゃろ、それじゃ儂も頂くぞ?」
「はいはい、いっぱいあるからねー。」
 そしてケーキを出すと女神とロイロはパクパクとケーキを食べる。

『んーー!美味しいわ!この世界の食べ物って味気ないのよね。』
「たしかに転生前は色々な国で飯を食ったが美味い物はあまりなかったな。」
「まぁこれ日本のケーキだし。」
『日本?あぁあなた違う星から来たのね、ちょっと見せてもらうわね。』
「え?女神様何をみるの?」
『私の事はアイトネって呼んでちょうだい、あなたの記憶を少し見せてもらうの。』
 そう言うとアイトネは一瞬だけ千春を見ると「へぇ」と言い納得した。

『珍しい星から来たのね。』
「珍しいんですか?」
『えぇ、一時期管理者の中で流行った魔力の無い世界ね、魔法文明が進むと文化の進みが遅いのよ、でも科学文明は急激に進みすぎて星の寿命を削る事が多いの。』
「儂の星は両方発達したからな、あっという間じゃった。」
「だから日本で魔法発動しないのかー。」
『あなたの星、地球は最初使えたけど、方向転換して魔法に制限掛けたパターンね、使おうと思えば使えるはずよ?実際使っている人も居るみたいだし。』
「使えるの!?」
『えぇその代わりこの世界の10倍くらいマナを使うし中々回復しないからあまりお勧めはしないわね。』
「なんで回復しないの?」
『大気中のマナが無いからよ、この世界はマナ増幅装置を作ってるから潤沢にあるけれど。』
「そんな装置があるのかー、なんであっち無いのかな。」
『さぁ?そっちの管理者に聞いてみないと分からないわね、メリットとデメリットがあるから。』
「メリットはわかるけどデメリットって?」
『そうね、簡単に言うと魔物が湧くのと動物が魔物になりやすいわね。』
「あぁーそう言う事ねー。」
 そしてこの星が安定しているから居座ったロイロの話や地球の食文化の話で盛り上がった。

『んー美味しかったわ、こう言う事ならまた呼んで頂戴。』
「ロイロに言わないと呼べませんけどね。」
『あぁ、そうね、それじゃ今日のお礼に呼べるようにしてあげるわ。』
「はぃ?」
 アイトネは千春の額に指をツンと当てる。

『これで私を呼べるから、美味しいお菓子持ってきたら呼んでね。』
 ニッコリと笑いながら手を振るアイトネはスーッと消えて行った。

「はぁ、ロイロ!ちょっと女神様呼ぶならそう言ってよ!心臓止まるわ!」
「まぁ呼んだくらいで怒る管理者なら、はなから呼ばぬ、ケーキも食えたしの!」
 ゲラゲラ笑うロイロはまだ少女のままだ。

「チハル、その、女神様は?」
 おそるおそるサフィーナは千春に問いかける。

「帰ったみたい、みんなもう大丈夫だよ。」
「「「「「はぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」」」
 壮大な溜息を皆が吐く。

「ドラゴンもビックリだがまさか女神まで降臨するとは、何事だったんだ?」
「簡単に言うとドラゴンちゃんは女神様と似たような存在で知り合いだったの。」
「ふむ、それで?」
「で、私がアイトネ・・・女神様ってどんな人って聞いたら、説明めんどいから呼んだ。」
「そんな理由でか!!!!」
「ほんとだよ!そんな理由で呼ばないでよロイロ!」
 思わずロイロに突っ込む千春、しかしロイロはケラケラと笑っていた。

「ドラゴンに名前付けたんだな。」
「うん、ついでに契約もされた。」
「はぁ?!ドラゴンと契約!?」
「なーんか条件が揃って契約したっぽい、ついでに魂の共有したって言ってた、ロイロ共有ってなに?」
「あーチハルが死ぬと儂も死ぬ、逆もしかりじゃ。」
「はぁ!?ドラゴンって長寿じゃないの?私が先に死ぬじゃん!」
「そうじゃな、この個体なら数千年は生きるじゃろ。」
「それじゃ私が死んだらロイロ死ぬの?」
「多分死ぬじゃろ、儂はまた転生するがな。」
「・・・ロイロが良いなら別に良いけど。」
「まぁ詳しい話は中でするか、女神様の話も聞きたいからな。」
「アイトネの話ってあんまり無いよ、この星の管理者で、まぁ神様だね、そんで友達になった。」
「友達ってなんだ?」
「そのままだよ、『お友達になりましょう』って言われたからはいって答えただけなんだけど、どう考えてもケーキ食べたいだけだよね。」
「・・・女神様と友達、サフィー、どう思う?」
「私は何も聞いてません、アイトネと言う女性がたまに来てチハルとお茶をする、それしか知りません。」
 サフィーナはテーブルを片付けながらエンハルトに答える、他の侍女もコンロ周りを片付けていた。

「それじゃ夕食もここで肉とか焼くしある程度片づけたら中で休憩しよー。」
「儂は何か手伝う事あるか?」
「ロイロって何が出来るの?」
「・・・・狩り?」
「狩りか、そうだ!その池に居る美味しそうなの捕まえて来てよ、自分が死なない程度で。」
「死ぬわけ無かろう、子供とは言えこの世界の最強種じゃぞ、待ってろ美味そうなのを捕って来てやる。」
 ロイロはそう言うとドラゴンの姿に戻る、羽を広げると4m程のドラゴンが颯爽と飛び立って行った。

「よし、晩御飯はロイロが取って来る予定の食材と、あとはまだ出してないアイテムボックスの食材とー、サフィー食材何入れたっけ?」
「私はルノアーさんから数種類のケーキ預かってますよ。」
「んじゃぁ私の肉と野菜がメインか、味付けちょっと変えるかなー。」
「いや、美味しかったからその味付けで肉を変えるだけで良いだろう。」
 エンハルトはそう言ってエーデルを見る、エーデルもウンウンと頷いている。

「みんながそれで良いなら良いけどね~。」
 そして話しているとロイロが獲物を取って帰って来た、しかし。

「ちょ!ロイロでっかい!」
 そう、飛んでいく時は4mほどだったロイロは帰って来た時は片方の羽だけで6mは有った。

『捕って来たぞ。』
 そういって足で掴んだ獲物を見ると頭はドラゴンのようだが体が蛇の様な生き物だった。

「なんでそんなにおっきいのよ!」
『あの大きさではコイツを持てなかったんでなぁ。』
 そう言うと最初の大きさに縮んだ。

「それで・・・これなんっすか?」
『名前は知らんが美味そうだろう?』
「ハルト兄様?コレは何かしら?」
 千春は引きつった顔でエンハルトに聞く、エンハルトは固まっている。

「チハル様、これはレイクサーペントです、たまに目撃情報は有りますが浅瀬に来る事は無く、湖の中央あたりで巣を作っている魔物ですな。」
 エーデルが魔物の正体を説明する。

「で、美味しいの?」
「・・・さぁ?」
「・・・・『鑑定』よし食べれる!」
 鑑定をして食べれる事を確認した千春はすぐに兵士に指示する。

「はーい!兵士のみなさーん、夕食までにこれ捌いてくださーい!」
「よし、王女殿下の勅令だ解体するぞ!」
「はっ!」
 兵士は魔物の解体に慣れているのか直ぐに解体が始まりどんどん切られていく。

「チハル流石にこれは数日掛けても消費出来んぞ、アイテムボックスに入れて帰るのか?」
「ん-どうせなら町の人にあげたらいんじゃない?」
「ふむ、それも良いな。」
 エンハルトは執事を1人呼び、町長に連絡を取らせる、そして自分達が食べる分以外は持って行かせた。

「それじゃ夕食まで水遊びするべかのぅ。」
「なんじゃその喋り方は。」
 気付くと人型に戻っていた。

「なんでアイトネ居ないのに人になれるのよ。」
「スキルを貰ったからの。」
「なんて便利な!あとなんで服着てんの?どっから出てきたの?ご都合主義なの?」
「この服か?幻術じゃぞ?、消すと裸じゃ。」
「サフィー!私の服出して!」
「ドラゴンになったら破れるじゃろが」
「その時は脱いでからドラゴンになって!」
 サフィーに出して貰った日本の夏服予備をロイロに着させる

「しっかし便利なスキルよねぇ。」
「チハルも貰ったではないか。」
「え?なに?ドラゴンになれるの?」
「いや、アイトネを呼べるようにスキルを貰ったじゃろ?称号も付いておる。」
「なに?ロイロ鑑定できんの?」
「うむ、チハルは出来ないのか?」
「出来るよ・・・・『鑑定』・・・」
 千春は自分に鑑定を掛ける。

「・・・・・マジか。」
「チハル?どうしました?」
 サフィーナは千春を覗き込む。

「あっの女神ぃぃぃ!アイトネぇぇ!!!!何よ!『聖女』って!!!!!」
 女神が付けた『女神に連絡が出来るスキル:神託レベル10』にもれなく付いてくる『聖女』を見て空に叫ぶ千春であった。



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